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2022年の振り返り

今年も、早くも残り数時間となりました。どうも今年は例年にも増して年末感が薄く……。25~26日まで撮影して、29日ごろまで画像処理やってたせいでしょうか(^^; まぁ、2023年の正月は幸い(?)月齢の巡りが悪いので、2022年よりはゆっくり過ごせそうです。


ともあれ、今年も色々ありました。軽く振り返ってみましょう。


ハードウェアの拡充に関しては今年も控えめ。というのも、現時点では下図のように焦点距離的にほとんど穴がないためで、あえて拡充する必要を感じないというのが大きいです。

まぁ、細かいことを言えば「ED103Sの錫箔がやっぱり邪魔」とか「ボーグのレデューサー0.85×DG【7885】のイメージサークルAPS-Cに対してギリギリすぎる」とか「EdgeHD800のミラークラッチの効きがビミョー」とか不満はあるのですけど、鏡筒を買い換えるまでには至らず。というか、この円安&物価高の状況だと大物には手を出しづらいですね。


とりあえずは、現有戦力を大事に大事に使っていきたいと思います。


……い、いや、そ、そ、そんなことないですよ?(;゚з゚) ~♪



そんな中、数少ない拡充がSIGHTRONの「StellaScan 2x40 Mono」。いわゆる「星座双眼鏡(単眼鏡)」などと言われている類の製品です。
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強度の遠視&乱視で眼鏡が手放せない上、東京都心という最悪の環境下でどの程度役に立つのか半信半疑の部分はあったのですが、実際に使ってみると星座を構成する星々が思った以上に見えて、なかなか楽しいです。


さらに、最近光害でめっきり見づらくなった北極星が見やすくなったのが地味に助かるところ。赤道儀の設置がスムーズになり、これだけでも元を取った気分です(^^;



一方、拡充というか交換したのがASI2600MC Proの保護ウィンドウです。
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CMOSカメラは一般にセンサーの手前に保護ウィンドウがありますが、ASI2600MC Proの場合、これがUV-IRカットフィルターになっています。何もしなくてもカラーバランスが取りやすいのは助かるのですが、これだと系外銀河などに威力を発揮する赤外線撮影が行えません。そこで、このウィンドウを反射防止ガラスに交換しました。


交換後、赤外線を生かすような撮影はまだできていませんが、できることの幅が色々と広がったのではないかと思います。



あとは、観測時のヘッドランプを交換したくらいでしょうか。
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押しにくいボタンにもそれなりに慣れて、だいぶ的確に操作できるようになってはきましたが、それでもやっぱり「すごく使いやすい!」というわけにはなかなか行きません。適度な暗さを含め、明かりの具合は気に入ってるんですが……まぁ、妥協のしどころですかね(^^;



次に、今年撮影したものの一覧。




全部で27点。2020年が23点、2021年が19点でしたから結構頑張った部類です。


これらの中で、一番反響が大きかったのは東京都心からデジカメで撮った天の川です。
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赤外線などの「飛び道具」を使わず、中古品を含めた格安機材で捉えたもの。機材については、中古デジカメ(改造は別途)、古いガイドカメラ、激安中古レンズ*1にAZ-GTiマウントと、かなり安上がりのはずです。根気さえあればなんとかなるのだなぁと再認識しました。


今年は、昨年から引き続き複数のフィルターの使い分け&ブレンドに力を入れました。馬頭星雲は「Hαナロー+光害カット」、IC443は「ワンショットナロー+光害カット」で撮影したものですし、ステファンの五つ子やArp273はIRパスフィルターで撮ったL画像に光害カットフィルターで撮ったカラー画像を合成したものです。
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こうしたフィルターワークを効果的に生かすには、対象天体がどのような成分で輝いているかといった知識が必要ですが、はまれば効果は絶大なので、今後もどんどん活用していきたいと思います。


もっとも、フィルターの枚数分だけ撮影時間がかかるのが泣き所で、やっぱり「連装砲」が……って、去年も書きましたね、これ(^^;


イベント物としては、やはり11月の皆既月食天王星食が最大のトピックです。きれいに晴れて、久しぶりに全過程を観察できる月食となりました。天王星食についても無事動画に収めることができ、満足度が高いです。
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「プチ観望会」と呼べないレベルでギャラリーが集まったのには嬉しい悲鳴が。こういうきっかけで、天文に興味を持ってくれる人が1人でも増えてくれたら嬉しい限りです。



その他、個人的に印象に残ったものとしては、自宅周辺で夜空の明るさ=SQM値を測ってみたことがあります。
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夏の一晩だけの結果ですが「16.1等」という笑劇的……もとい衝撃的な値をたたき出しました。さすがは大東京、酷い空だorz


とはいえ、こんな環境でも上のように天の川などを捉えることができるのですから、諦めないことが肝要ですね。



最後に、今年ページビューの多かった記事トップ10です。

  1. AM5赤道儀発表
  2. 「ターコイズフリンジ」が見える仕組み
  3. 国内で簡単に入手できる望遠鏡一覧(口径15cm以下~25cmクラス編)
  4. 光害カットフィルターのスペック一気比較
  5. 光害カットフィルターの比較
  6. Sky-Watcher MAK127SP簡易レビュー(外観編)
  7. SG-3500のバッテリー交換
  8. Image Composite Editorの入手先
  9. PoleMaster使用説明書
  10. PHD2マニュアル更新(v2.6.5対応)


意外と言えば意外なことに、1位になったのは昨年末に書いたZWOのAM5赤道儀についての記事でした。従来の中型赤道儀並みの搭載可能重量を誇る一方で、波動歯車装置採用で小型・軽量、加えて価格も安いとなれば、注目を集めることは必至だったかもしれません。


AM5赤道儀は購入した方のレポートが各所に挙がっていますが、性能的にはおおむね満足できるレベルにあるようです。一方で「バランスウェイトが不要」というのが裏目に出て、システム全体を転倒させてしまった例も見かけました。バランスウェイトが不要なのはあくまで「赤道儀の動作に」であって、システム全体の安定性まで保証するものではありません。そこは注意が必要です。


しかし、本機を筆頭に、比較的安価な波動歯車装置採用の赤道儀は、中華製を中心に近年どんどん増えてきています。このタイプの赤道儀には精度面などで特有の弱点もありますが、ソフトウェアによりある程度以上カバーが可能です。国内メーカーの大半が、旧態依然とした設計の赤道儀に留まっているのと比較すると、もはや色々と手遅れなのじゃないかという気がしてきます*2


2位には、月食時に見られるターコイズフリンジに関する記事が。月食のたびに爆発的なアクセスを記録する定番記事で、今回も11月の月食時に集中して参照されました。


4位、5位は光害カットフィルターに関する記事。LED照明がすっかり普及して、従来型の光害カットフィルターは役目を終えつつある感がありますが、実は東京都心でもまだそれなりに蛍光灯由来の輝線が残っているので、この手のフィルターはまだまだ存在意義があります。
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とはいえ、今後輝線による光害はますます減っていくでしょうし、LEDによる光害をフィルターでカットするのは困難なので、デュアルナローバンドフィルターやIRパスフィルターが幅を利かせていくことになるのでしょう。


8位は、10位以内に唯一入った今年の記事。モザイク合成に絶大な威力を発揮するマイクロソフトのImage Composite Editorですが、正式な公開が終了したということで注目を集めました。非常に便利なソフトなので、代替入手手段があって本当に良かったです。とはいえ、これも未来永劫安泰とは限らないので、ダウンロードしたファイルは手元に保存しておいた方が良さそうですね。

*1:オートガイド用のレンズは1000円、カメラレンズに至ってはわずか3000円です。

*2:「波動歯車装置採用の赤道儀」がいい!というわけではありませんが、全体的に製品開発、改良のペースが遅いので、どうしても守旧的に見えてしまいます。望遠鏡が数多の電子機器とつながるのが当たり前の昨今、IT企業並みのスピードが必要かもしれません。