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超久々の"近征"

とにもかくにも、今年の夏はあまりにも空模様に恵まれませんでした。


前回記事を上げた7月こそ撮影機会に恵まれたものの、8月、9月は雨続き。特に8月末~9月にかけては、東京は「37日連続降水」とかいう嬉しくもなんともない記録まで打ち立ててくれました。もはや「晴れ」の日は来ないのか……!?


……が、10月に入るとようやく天気が好転。7日には土星も撮れそうでしたが……

しかもPoleMasterに異常が出て、まともに動作しないなど orz *1


それでも翌日は文句なしの晴れ!もはやいてもたってもいられず、いつもの公園に出撃してきました。翌日の予定?知らん知らん~(≧▽≦)~♪


撮影

さて、公園に到着するも、空には一面の白い雲。とはいえ、時間とともに雲はなくなるはずで、実際この日も8時ごろにはスッキリ晴れ渡りました。


この日のターゲットは、メイン鏡筒がアンドロメダ銀河*2ことM31。撮影対象にするのは実に6年ぶりです。前回もかなり良く写ったものの、ちょっと不自然な部分もないことはなかったので、そこが改善されるかどうかが注目です。


一方のサブ機の方は、「クエスチョンマーク星雲」の南にある淡い超新星残骸「CTB 1」を狙ってみます。CTB 1は「延髄星雲」(Medulla Nebula)や「ガーリック星雲」(Garlic Nebula)といった愛称で知られる、ごく淡い超新星残骸です。極めて淡いので、どこまで捉えられるか分かりませんが、試す分にはただなのでいいでしょう。


夜半には反転して撮影を継続します。


が、3時ごろになると雲が一面に広がってきました。天体は傾いてくるし、夜明けまでも1時間ほどしかないので、残念ながら撮影はここで終了としました。


ところでこの日は、晩に弁当を食べたものの、体調が合わなかったのか夜半過ぎに嘔吐。その数時間後にも嘔吐し、さらに夜明け時にも3度目の嘔吐……と散々な目に遭いました。おかげで翌日は「生ける屍」。翌々日になったらだいぶ回復しましたが……果たして体調はどこまで戻っているでしょうか……?


リザルト


というわけで、まずは写りの確認です。M31の方はこんな感じ。



まぁ、良くもなく悪くもなく……と言った感じですね、これが、枚数集まった時にどうなるかです。


一方、CTB 1の方はこう……!



う……う~む……?


たしかに中央に何かがありそうな気はしますが、いかんせん像が淡くてはっきりしません。各種強調処理を行う前なので「薄いけど写ってる」という可能性はありますが……なかなか大変そうな気はします(^^:


ともあれ、画像処理です。どちらもスタッキング後にMultiscaleAdaptiveStretchを行い、色を引き出していきます。そして結果がこちら。


はい、ドンッ!!




2026年10月7日 ミニボーグ60ED+マルチフラットナー 1.08×(D60mm, f378mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -10℃, Gain100, 300秒×85, IDAS LPS-D1フィルター使用
ペンシルボーグ25+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
PixInsightほかで画像処理

うむ、かなりそれっぽく仕上がってくれました。M31は立派な銀河ながら、目を引くような天体は意外と少ない印象ですが、じっくり目を凝らしてみると多くの散光星雲が見えてきます。




また、その他にも明らかに青い星が集まった領域などもあり、案外見飽きないものです。



一方のCTB 1ですが……こちらはどうにも淡くて困ります。無理して炙り出しても粗がじわじわと……。仕方がないので、ある程度の所で諦めつつ悪足掻きを続けて……はい、ドンッ!!




2026年10月7日 FRA300 pro(D60mm, f300mm) 赤道儀化AZ-GTi
ZWO ASI533MC Pro, -10℃, Gain400, 300秒×72, Optolong L-Ultimateフィルター使用
32mm F4ガイドスコープ+ASI290MM+PHD2によるオートガイド
PixInsightほかで画像処理

……とりあえず、姿だけは確認することができました ε-(´∀`*)ホッ


海外の作例などだと、もっとハッキリと「ニンニク」の姿を捉えることができている*3のですが、そこは花の都、東京。ナローバンドフィルターを用いても、さすがにそう簡単にはいきません。それでも姿を捉えることができている分、状況としてはまだマシなのかもしれません(^^;


メインである超新星残骸の周囲には、複数の散開星団が点在しています。




NGC 7788は地球から約8000光年離れていると推定され、その星々は3000万~4000万年前のものとみられています。Frolov 1ははるかに近く、年齢も2000万年から4000万年と若いもの。King 12もまた年齢が2000万~3000万年と非常に若いです。一方、Harvard 21は年齢が2億~4億年と最も古いですが、こちらも恒星の基準から考えるとまだまだ若いと言えます。


なお、この超新星残骸を形作る元となった天体「PSR J0002+6216」ですが、現在、猛烈なスピードでCTB 1から遠ざかっています。"The Cannonball Pulsar"という異名が付くほどの高速で移動していて、その速度は実に秒速1127km!いずれは私たちの銀河系を飛び出して、暗い宇宙の彼方へ遠く離れていくことになるでしょう。

*1:しかも翌日になったらまともに動くおまけつき。なんだったんだあれは……

*2:心情としては「アンドロメダ大星雲」と大手を振って言いたいのですが。

*3:実際、maverickさんなどは見事な星雲の姿をゲットされています。 

ナローバンド、翼を授ける

18~20日の連休中は、初日こそ悪天候だったものの、19日午後からは晴れ模様。とはいえ……

空には巻雲が一面に広がってて、いわゆる「『晴れ』だけど……晴れじゃなかった!」*1の典型みたいな天気。さすがにこれは厳しいかと思ってあきらめていたのですが、晩飯を終えて空を見ると雲ひとつありません。そこで、急遽荷物を台車に押し込んでいつもの公園に出撃です。


なにを撮るかですが、今回は以前から撮りたかった「亜鈴状星雲」M27の淡い外周部を狙ってみることにします。ただ、この日は天文薄明まで時間がないこともあり、通常の光害カットフィルターであるLPS-D1を用いて恒星の色を重視して撮影することにします。


この日の撮影ははなはだ順調で、夜明けまで雲に邪魔されることなく撮影することができました。ただ、いかんせん天文薄明開始が2時56分という早さ。撮影開始が1時近くなってからなので、本当に時間がありません。体力的に楽なのは助かりますが、天体写真勢としてはもう少し夜の時間が欲しいというのが本音です(^^;



翌20日は朝からすっきり快晴で、気象庁からは梅雨明けも発表。


そして ク ソ 暑 い です orz


梅雨明け10日は猛暑というのがお約束ですが、いきなり最高気温が35℃超というのは、夏さん、本気出しすぎです。これだと夜も気温は下がらなそうなので、事前に水冷服を用意。そして、月没を待って公園に再出撃です。


この日はフィルターをデュアルナローバンドフィルターであるL-Ultimateに変えて、本命の「M27の淡い外周部」を狙います。


ところが、どうやら北関東方面で積乱雲が発達していたらしく、その「おこぼれ」である巻雲などが時々こちらに広がってきます。この手の雲は、たいてい宵のうちを過ぎればなくなってくるものですが、夜半近くなってもご覧の有様。


あとから雲の写っていないフレームを抽出すれば済む話ですが、いささか面倒です。なんか最近こんなのばっかだ……orz


ともあれ、天文薄明開始ギリギリまで粘って撤収しました。うまく写っているといいのですが……。


リザルト


帰宅後、撮影画像を確認します。まずは19日夜にLPS-D1を用いて撮影したものから。



1コマをASIFitsViewでオートストレッチした段階でこの写り。さすがに明るい星雲だけに、非ナローでもしっかり写ってくれています。このくらいだと、都心でもノーストレスでいいですね(笑)


まずは、こちらはこちらで軽く仕上げてみます。MGCとGraXpertでカブリを除去したのち、同じくGraXpertでノイズ除去。SPCCで色を揃え、MASでストレッチを行って……はい、ドンッ!




2026年7月19日 ED103S(スペーサー改造済)+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, 0℃
Gain100, 300秒×20, IDAS LPS-D1フィルター使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
PixInsightほかで画像処理

うむ、これはこれで透明感があっていい感じです。天の川を背景に無数の微光星があふれんばかりですし、贅沢を言わなければこれで十分な気もします。


が、やはり周縁部を炙り出してみたい……というわけで、次にデュアルナローバンドフィルターを用いた方の処理に移ります。1コマをASIFitsViewでオートストレッチするとこんな感じ。



さすがはナローバンド、LPS-D1のものに比べると星雲の淡い部分がグッと出てきています。これをスタッキングして強調すれば……というところですが、案の定というかなんというか、周辺部を炙り出すと中心部が白飛びしてしまいます。


そこで仕方がないので、非ナローの画像から星雲部分のみを抽出し、これを元にマスクを作成。まずは中心部のみをいい感じに強調したのち、次にマスクを反転して周辺部を強めに強調します。マスクには十分にボカシをかけているので、境界はほとんど目立たないはずです。


最後に、星消ししたナローバンド画像と非ナローの恒星画像を合成して……はい、ドンッ!





2026年7月19日、20日 ED103S(スペーサー改造済)+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, 0℃

【カラー画像】
Gain100, 300秒×20, IDAS LPS-D1フィルター使用

【ナローバンド画像】
Gain400, 300秒×32, Optolong L-Ultimateフィルター使用

ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
PixInsightほかで画像処理


M27は、機材を変えつつ過去何度も撮っていますが、いずれも中心部のみ。

hpn.hatenablog.com
hpn.hatenablog.com
hpn.hatenablog.com
hpn.hatenablog.com

今回はまるで蝶のような、迫力あるM27の写真が出来上がりました。これこそナローバンドならではの表現といった感じです。あわせて、背景の恒星も比較的キレイに表現できたように思います。


このM27、星の最後の姿を真横から眺めている形になっていて、左右にガスを噴き出しているのがそれぞれ恒星の北極方向と南極方向にあたります。もし極方向から眺めていれば、「環状星雲」M57や「らせん星雲」NGC7293のように見えていたことでしょう。


ちなみに、今回表現したかった羽状の外殻が発見されたのは1974年のことで、高々50年ほどしかたっていません(Millikan, A. G. (1974) "Extended halos on planetary nebulae", Astron J, 79, 1259–1259. https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/1974AJ.....79.1259M/abstract)。案外歴史が浅くてビックリです。

*1:気象庁言うところの「晴れ」は雲量2~8まで。

きつねの赤いの

西日本は早々と7月8日に梅雨が明け、関東もいよいよ梅雨明け間近……といった雰囲気ですが、そんな中、先週末の10~11日は梅雨明け前にもかかわらず久々に晴天の予報。6月は丸々開店休業状態だったので、このチャンスを逃してはならじといつもの公園に出撃してきました。


この日の目標ですが、当初は「亜鈴状星雲」M27の淡い周辺部をデュアルナローバンドフィルターで……と思っていたのですが、直前にたまたまSky & TelescopeのサイトでSh2-86の記事を見かけ、面白そうだったのでそちらに狙いを変更しました。
skyandtelescope.org




Sh2-86はこぎつね座にある星形成領域で、有名な惑星状星雲M27の3度ほど西にあります。星座自体が地味な上、有名な天体がはくちょう座を中心に周囲に多いため、目を向けられることが少ない天体です。


相手が主にHα線で輝いている天体なので、メイン鏡筒であるED103SにはデュアルナローバンドフィルターであるL-Ultimateを装着。一方のサブ鏡筒には伝統的光害カットフィルターであるLPS-D1を装着して、恒星の色の捕捉を狙います。


が、この日は晴れてはいるものの、細かい雲が頻繁に流れてきます。一見撮れている風でも、事後に確認すると雲が写りこんでいるものが想像以上に多く、22時半より前に撮ったコマはほぼ全滅。夜半を越えて2時以降もほぼ全滅で、有効なコマはかなり減ってしまいました。




それでも、L-Ultimateの方はASIFitsViewでのオートストッレチの段階でこれだけ見えているので、写りとしては十分でしょう。




そしてLPS-D1の方も、まずまずの写り。




というか、例によってこんな空の下で、よくぞ星がこんなに写るものです(^^;


ただ、当たり前ですがサブ機の方はメイン機と比べると写っている範囲が広く、星像をメイン機側の写真と合わせようとすると、かなり拡大することになります。メイン側のASI2600MC Proとサブ側のASI533MC Proとはセンサー解像度が一緒ですし、結果的に星像がぼってりと大きくなってしまう可能性がありますが……とりあえずはやってみましょう。まずいようなら、星色のみをメイン画像に乗せる手もありますし。


WBPPの際、メイン鏡筒の画像は普通に処理しますが、サブ機の画像は、上記の通り拡大が必須になることもあり、解像度の多少の向上も期待してDrizzle 2xで処理します。


その後、カブリを除去し、BXTで星像をシャープにしたのちにStarAlignmentでメイン機相当の画角に合わせますが……




うむ。サブ機の画像はやっぱり根本的に解像度が足りない感じですね*1。星色だけを利用する方向に切り替えです。


一方のメイン機の画像は、同じくカブリを除去後にStarNet2で恒星を分離したのち、背景となる星雲にSilverEfexなどでの処理を加え、星を再合成。




やっぱりというか案の定というか、星の色が死んだ典型的なナローバンド画像になりました。これだとやはりちょっと物足りないので、メイン機の恒星画像を輝度情報として、サブ機の恒星画像の色情報を合成し……はい、ドンッ!




2026年7月10日
【カラー画像】
ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D60mm, f200mm) 赤道儀化AZ-GTiマウント
ZWO ASI533MC Pro, 0℃, Gain100, 180秒×43コマ, IDAS LPS-D1フィルター使用
32mm F4ガイドスコープ+ASI290MM+PHD2によるオートガイド
【ナローバンド画像】
ED103S(スペーサー改造済)+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, 0℃, Gain300, 300秒×33, Optolong L-Ultimateフィルター使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド

PixInsightほかで画像処理

星の色が乗って、グッと鮮やかになりました。ただしこの方法の場合、星像の大きさ=明るさはHαおよびOIII基準になるので、肉眼や一般的な写真の印象とは異なってきます。なので、あくまで疑似的な着色*2です。


本当なら、これをやるなら二組の同一機材でナロー画像と非ナロー画像をそれぞれ撮るべきなのでしょうけど、画角も何も全く違う画像を使ってそれっぽく仕上げられたのは僥倖です。なにしろ、先立つものがありませんので……( ̄w ̄;ゞ



始めの方で書いた通り、このSh2-86は典型的な星形成領域です。中心部には散開星団のNGC 6823があって、この若い星々からの強烈な紫外線などが水素原子を電離させて、星雲を輝かせています。大まかな構造としては、いっかくじゅう座の「ばら星雲」にそっくりです。


星雲中央には「わし星雲」M16の「創造の柱」を彷彿とさせる暗黒星雲の柱が見えています。この柱の中には高密度のガス塊が複数確認されていて、いずれ若い星団として輝き始めるのでしょう。こうした柱状の構造はNGC 6823を中心に放射状に広がっていて、同星団からの恒星風がいかに激しいかを物語っています。


なお、書物やウェブサイトによってはSh2-86のことを「NGC 6820」と紹介しているものがあります。NGC 6820はドイツの天文学者アルベルト・マルトによって、ウィリアム・ラッセル*3作製の口径48インチ(122cm)、F9.4のニュートン式反射望遠鏡を用いて1864年に発見されたものですが、その位置や当時の記録("faint, small, round, brighter in the centre")から、現在ではSh2-86の中に見える小さな反射星雲のことだと考えられています。



NGC 6820


このほか、Sh2-86周辺のHII領域や暗黒星雲にも、名前がついているものがいくつかあります。以下にそれを示しますが、「Du」はDubout-Crillon, R.の1976年の論文*4に掲載されているHII領域のカタログ、「DOBASHI」は東京学芸大の土橋一仁教授による暗黒星雲のカタログです。
darkclouds.u-gakugei.ac.jp




また、画像の左下には、2005年にオーストリアのアマチュア天文家マティアス・クロンベルガー*5によって発見された惑星状星雲「クロンベルガー 9」(Kronberger 9)の一部が写りこんでいます。最初は、フラットフレームにゴミでも乗っていて過補正になったのかと思ったのですが、調べてみるとこの天体があってビックリしました。


見つかったのが高々20年前とつい最近なのも驚きですが、考えてみればスカイサーベイ等のデータに簡単にアクセスできるようになったり、極狭帯域での撮影が一般化したのはそれほど昔ではありませんし、こういう天体は意外とあるのでしょう。とはいえ、さすがに今となっては、よほど淡いものを除いて未発見のものは少ないでしょうけど。

*1:ざっくり4倍近くに拡大されているので、当然と言えば当然。

*2:もっとも、そもそもナローバンド画像自体、肉眼のそれとはまったく異なるので、何をもって「疑似」と言うのかという問題はあるのですが。

*3:海王星の衛星トリトンを発見したイギリスの天文学者

*4:Dubout-Crillon, R. (1976) "H II regions of the northern Milky Way: medium-large-field photographic atlas and catalogue", Astron Astrophys Supple, 25, 25-54. https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/1976A&AS...25...25D/abstract

*5:未知の天体を探すプロ・アマ混成の国際的チーム「Deep Sky Hunters」の中心メンバー。同チームはDSS(Digitized Sky Survey)やSDSS(Sloan Digital Sky Survey)、WISE(Wide-field Infrared Survey Explorer)などの公開データから候補天体を探し、その後に撮像やスペクトル分析を行って特定する、といった方法により、これまで数多くの惑星状星雲を発見してきています。