ニュースにもなっている通り、関東は相変わらずのカラカラ陽気。晴れの日が多いのは天文ファン的には嬉しいところですが、さすがに限度というものが……
で、2月の新月期が迫ってきたわけですが、WindyやSCWで予報を確認してみると、15日日曜の夜が天気が良さそう。明け方近くなると雲が出てきそうですが、翌日は平日ですし、むしろありがたいところです。おまけに、この季節にしては珍しく風も穏やかそうで、長焦点鏡を持ち出すにはもってこい。そこで我が家の「対系外銀河砲」、EdgeHD800を久々に引っ張り出すことにしました。目的としてはもちろん、春の銀河を狙いたいというのもあったのですが、システム面でも確認しておきたい課題が。
1つは「レデューサーとオフアキの併用」。以前取り上げたように、セレストロン純正のオフアキは消費光路長が長く、そのままではレデューサーと併用できません。そこで、分厚い「SCTアダプター」をアストロストリートの「SCT(50.8mm)メス ⇔ M48オス 変換リング」に置き換え、システムを組んだのでした。
事前のテストではどうやら大丈夫そうで、まずは一安心……というところだったのですが、その後、別件の検証で、使用している「M57→M36.4AD【7522】」の光路長の見積もりが誤っていることが発覚。

公称値通り光路長9mm*1のつもりで組んでいたものが、M42を使う場合、実際の光路長は5mmしかなかったというオチで、浮いた4mmをどこかで消費しなければなりません。ということで、上記システムで用いていた「M42延長筒(7.5mm)」を「M42延長筒(10mm)」に交換した上、厚さ0.8mmと1mmのシムリングを挟みました。これで光路長は105.3mmとなり、既定の105mm+フィルターによる光路長延長分をほぼ達成することになります*2。あとは、これで組んだシステムがうまく働くかどうか。プリズムの影などはおそらく出ないとは思いますが……。
そしてもう1つが、昨年導入した「結露防止ヒーターリング」の効果検証。
実は購入して以来、実地での検証をやっていなかったのです(^^; この日は日中が暖かかった一方で夜は冷え込み、その上風も穏やかと、結露する条件が揃いすぎています。この状況下で結露が起こらなければ、効果は十分と言えるでしょう。

というわけで、日没を待っていつもの公園に出撃。メイン鏡筒で狙うはしし座の「鼻先」にある明るく大きな系外銀河NGC2903です。この対象は、ずいぶん以前にデジカメで撮影していますが、冷却カメラ投入でどこまで化けるでしょうか……?
ところで、写真が妙に赤っぽくかぶっていますが、原因はこれ。

北側のマンションの庭に、電球色のLED街灯が増えていました。防犯のためとは重々承知ながら、せっかく公園の照明が減った*3ところでこれはガックリ来ます。なんらかの目隠しを立てることを考えた方がいいのだろうか……?

一方、サブ機の方はFRA300 pro+ASI533MC Proの組み合わせ。これでしし座のもう1つのトリプレット、M95, M96 & M105を狙います。が、鏡筒側が予想外に重くて1kgのウェイトでは足りず、延長シャフトでウェイトシャフトを伸ばしてバランスを取る羽目に。赤道儀化AZ-GTiの能力的にかなり厳しそう*4な感じですが、果たして大丈夫でしょうか……?
さて、夜が更けてくると、案の定というかなんというか、結露が始まって至るところがビチャビチャになってきます。

たまらず、PCにはポリ袋をかぶせて簡易的な結露対策。心配なのはEdgeHD800の補正板ですが……真っ先に異常を知らせるハズ*5のPHD2は、ガイド星を見失うようなことは一切なく。

念のため、子午線反転の際に補正板を確認しましたが、結露は一切見られませんでした*6。可変降圧コンバータを挟んで7Vで駆動していますが、ヒーターは無事機能しているようです。


空は毎度のことながらこんな感じ。冬型の気圧配置ではない分、空は霞みがちで、星の見え方はもうひとつスッキリしません。まぁ、いつものことですけどね ┐(´д`)┌

が、3時ごろになると事前の予報通り雲が湧いてきました。このあとは晴れてくる目はなさそうなので、ここで撤収となりました。
ちなみに、補正板は撤収時もご覧の通り。

消費電力も案外大したことなさそうですし、十分実用になりそうです。
リザルト
まずは撮った画像の確認です。NGC2903について、ASIFitsViewでオートストレッチした「撮って出し」はこんな感じ。

さすがは明るい銀河、軽くストレッチしただけで存在がハッキリ分かります*7。
しかし、とにかく目立つのが激しい周辺減光。一見すると、ケラレてるんじゃないかと疑うレベルです。このレデューサー、カタログ上はAPS-Cまで対応していることになっていますが、実際に光量を測ってみるとAPS-C最外周で60%を切っているようで、なかなか厳しめです。とはいえ、フラットを当てればカバーはできる*8ので、完全に匙を投げるほどではないかなという気はします。
また、星像が周辺に行くに従い崩れていきますが、これはレデューサーの性能に加え、光軸の狂いもあったかもしれません。まぁ、これもBXTでカバーできる範囲内ではあります。
幸い、オフアキのプリズムの影は出ていないようなので、トータルのシステムとしては十分使い物になりそうです。
ともあれ、これらをダーク引き&フラット補正し、スタッキング後にGradientCorrectionで念入りにカブリ取り&SPCCで色合わせ。BXTをかけ、ストレッチしたのちに微調整を加えて……はい、ドンッ!


2026年2月15日 EdgeHD800+0.7x レデューサー(D203mm, f1422mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -10℃, Gain100, 300秒×76
IDAS LPS-D1フィルター使用
オフアキシスガイダー+QHY5III585M+PHD2によるオートガイド
PixInsightほかで画像処理
明るさ8.8等、大きさ12.6秒×6秒という明るく大きな棒渦巻銀河で、メシエナンバーが付かなかったのが不思議なくらいの立派なものです。地球からの距離はおよそ3000万光年。
いわゆる「スターバースト銀河」に分類される系外銀河で、棒構造(バー)に沿って流入するガスによって若い星が爆発的な速度で活発に生まれ続けています*9。それを反映するように、星の原材料となる分子雲が複雑な暗黒星雲として見えており、また、腕には今まさに星が生まれている現場であるHα領域が複数見られます。
以前、デジカメで撮影した際には色彩まではなかなか捉えられず、銀河内の暗黒星雲についても構造は判然としなかったのですが、大口径鏡と冷却カメラ、画像処理の力で、東京都心からとは思えないかなり迫力のある姿になりました。今回はストレッチに、最近実装されたばかりの「MultiscaleAdaptiveStretch」を使ってみたのですが、直感的に操作できる上に破綻もしづらく、さらにどぎつくない程度に色鮮やかに仕上がるので、かなりの好感触です。系外銀河の処理はこれで決まりかもしれません。便利なツールがまた増えました。

なお、東側(左)には不規則銀河のUDC 5086が見えています。地球からの距離がNGC2903と同程度であることもあり、NGC2903の伴銀河であろうと推定されています。一方、NGC2903のすぐ南側にも銀河らしきものが見えますが、こちらはLEDA 1648681という銀河で、約4億7000万光年の彼方にある無関係の天体です。
一方、M95, M96 & M105の方ですが……ASIFitsViewでオートストレッチした「撮って出し」はこんな感じ。

銀河の存在は分かりますが、カブリがものすごいです。しかも今回は、EdgeHD800の方でLPS-D1を使ってしまった関係上、ただのUV-IRカットフィルターしか入れていません。わずかに残る蛍光灯成分含め、光害成分が100%もろに入ってきますし、バックグラウンドが上がってしまう関係上、1コマの露出も3分に制限されていますので、なかなか厳しいかもしれません。
一方で、強度的に心配していた星の追尾の方は特に問題なかったようです。風もほとんどなかったので、その意味では助かりました。
とはいえ、最終結果は処理をしないことには分かりませんので、上と同様の処理を施して……はい、ドンッ!

2026年2月15日 FRA300 pro(D60mm, f300mm) 赤道儀化AZ-GTiマウント
ZWO ASI533MC Pro, -10℃, Gain100, 300秒×109
ZWO IR-UVカットフィルター使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
PixInsightほかで画像処理
恐れていたほど酷いことにはなりませんでした……というか、かなり良く写っている方ではないかと思います。被写体として人気の「しし座のトリオ」ことM65, M66 & NGC3628と比べると個々の銀河が暗い上、銀河間の距離がやや離れていて正直あまり人気がないのですが、奇しくもこのくらいの画角だと構図が引き締まって見えます。どれも特徴的な形をしていますし、もっと人気が出ても良さそうなものです。

M95は、中心部の棒構造とそれを取り囲むリング状の星形成領域、その外側に伸びる淡い腕が特徴的な、棒渦巻銀河です。地球からの距離はおよそ3300万光年。渦がほぼ完全にこちらを向いている「フェイスオン」の銀河なので構造がよく分かり、写真だとまるで目玉のようです。

M96は渦巻銀河ですが、腕が非対称な上、中心核が銀河の中心からわずかにずれているなど、かなり崩れた形をしています。ちょうどアットマーク(@)のようですね。M95, M96, M105などは「しし座I銀河群(M96銀河群)」という小集団を形作っていますが、この歪んだ形は、同銀河群の他の銀河から重力的な影響を受けた影響と考えられています。

なお、解像度不足でこの写真ではもうひとつ形がハッキリしませんが、M96の腕の中に左下から右上に向かって伸びるエッジオンの銀河らしきものが見えています。これは2MFGC 8391という約7億5000万光年彼方の銀河が、手前のM96の腕を透かして見えているものです。

M105(写真右)は楕円銀河です。明るさは9.8等。楕円銀河らしく、目に見えるような目立った特徴はありませんが、中心付近には太陽質量の2億倍に達する超巨大ブラックホールが存在すると考えられています。
そのすぐ近くには、同じく「しし座I銀河群(M96銀河群)」に属するレンズ状銀河NGC3384(写真左上)が寄り添っています。明るさはM105よりわずかに暗いだけで、望遠鏡でも同じ視野に入るほど近接しているのですが、M105を発見したピエール・メシャンは見逃してしまったようです。
そのすぐ下には渦巻星雲のNGC3389が見えています(写真左下)が、こちらは11.8等とさらに暗く、メシエやメシャンの時代には発見が難しかったでしょう。地球からの距離は約7000万光年と「しし座I銀河群(M96銀河群)」のメンバーの倍ほども離れていて、たまたま同じ方向に見えているだけです。色が明らかに青っぽいので、おそらくは星形成が活発な銀河なのだろうと思われます。
いずれの銀河も形がユニークで、今回は口径6cmの小望遠鏡で撮ったためか詳細がハッキリしませんが、大口径の望遠鏡でクローズアップ撮影すると楽しそうです。
*1:これも、実際には5mm + 3mm = 8mmなんじゃないかという……。
*2:できればもうあとコンマ数mmあれば完璧ですが、レデューダ―を噛ませてもF7と暗いですし、大した影響はないでしょう。
*3:そういう方針なのかトラブルなのか分かりませんが、公園内の街灯は昨年秋以来消灯したままです。少なくとも年度内はおそらくこのままでしょう。
*4:あとで鏡筒側の重量を積算したら少なくとも4kg近くありました。AZ-GTiマウントは経緯台状態での積載可能重量が5kgなので、力学的に不安定な赤道儀状態ではおそらく積載量オーバーです。
*5:結露するとガイド星の写りが悪くなるので、S/N比不足でエラーが出ます。
*6:白く見えるのは補正板が汚れてるだけw
*7:ウチの環境では、これでもだいぶマシな方です。
*8:もっとも、よほど厳密にやらない限り誤差が出るのは避けられないので、カジュアルに使うならソフトウェア的な後処理は必要になりそうです。
*9:なので若く青い星が多く、それを反映して腕が全体的に青く見えています。























































