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SG-3500のバッテリー交換

現在、赤道儀の動力用電源としては大自工業のSG-3500LEDを使用しています。DC12V, 20Ahと十分な容量がある上に安価なので、使っている方も多いかと思います。


ところが先日、充電完了後に容量チェックをしてみると……

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フル充電になっていません。表示の意味としては「使用可能ですが充電をお勧めします」というレベルで、明らかに充電容量が減っているようです


考えてみると、このSG-3500LED、2013年にSXP赤道儀を導入した直後に買ったもので、かれこれ5~6年たっています。鉛シールドバッテリーの寿命を考えれば、へたっていても全くおかしくありません。


そこで次のバッテリーをどうするかなのですが……AnkerのPowerHouseやsuaokiのG500、SmartTapPowerArQといった大容量リチウムイオンバッテリーも考えたものの、やはり価格面で尻込みせざるをえず、結局、単純にSG-3500LEDの内部バッテリーを交換することにしました。


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交換作業は簡単で、本体4カ所のタッピングビス(赤矢印)を外すだけで蓋が外れ、バッテリーがむき出しになります。


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内蔵されていたのはSEALAKEのFM12200でした。端子はケーブルとねじ止めされているので、これを外すとバッテリーが取り出せます。


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交換用に買ったのは、Kung LongのWP20-12IEで、秋月電子で5500円でした。スペックとしてはDC12V, 20Ahと、SG-3500LED内蔵のものと同等です。


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ネットに多数上がっているSG-3500LEDのバッテリー交換事例を見ると、長寿命タイプのWP20-12IEではなくWP20-12を用いている例が多いのですが、スペックシートを見る限り、うたい文句通りWP20-12IEの方が再生回数などで有利なこともあり、WP20-12IEを用いました。


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FM12200とWP20-12IEとの比較。端子の位置もほぼ同様です。WP20-12だと端子はもう少し外側にあり、ケーブル結線時にやや苦しむこともあるようですが、WP20-12IEならその心配はありません。


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ケーブルを接続して本体に収めなおせば作業完了です。


充電後、容量チェックをしてみると、

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インジケーターがきちんと全部点灯しました。これでまだ数年、戦えそうです。

ステラナビゲータ11 簡易レビュー

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以前、アップデートの案内が来ていたので注文していた「ステラナビゲータ11」(SN11)が本日、到着しました。


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中身はディスクの入ったパッケージと100ページほどのマニュアル。マニュアルはサイズ的にも厚さ的にもディスクケースの中には納まりません。こうなってくると、マニュアルも本格的に電子化すべきじゃないかという気もしますが、紙のマニュアルは一覧性に優れているので、このまま続けてほしい気もします。


インストール作業自体は特に問題なく。旧バージョンとの共存も可能です*1。なお、早々に11.0aへのアップデータが出ているので、更新しておきましょう。


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ちなみに、ソフトのアイコンは旧バージョンからデザインが大きく変化。これまでは何らかの形で天体がモチーフになっていたような気がしますが、SN11では昨今のフラットデザインの流行を受けてか、地球(天球)と地軸をモチーフにしたと思われる平面的なものに変わっています。


ただ、赤っぽい色合いに加えて、地軸を示すと思われる斜線が打ち消し線っぽく見えてしまい、どうにもゴーストバスターズ的なアレを連想してしまいます(^^; 実害はほとんどないと思いますが、慣れるまではステラナビゲータを連想しづらいかもしれません。


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起動すると、新機能である「ステラパネルモード」と従来からの「星図モード」の選択画面が現れます*2


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前者は、主な天体現象や見ごろの天体などをパネルで表示してくれるモードで、これらを選ぶとその現象等を星図で表示してくれます。同様の情報は従来も星図のサイドパネルで参照可能でしたが、こちらの方が直感的で分かりやすいです。


右上隅の「×」を押すことで、パネルを閉じて従来の星図モードに移行することができるので、起動時はとりあえず「ステラパネルモード」にしておくと、天文現象の見逃しを防ぐことができるかもしれません。


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今回のアップデートの目玉の1つが「表示の美しさ」ですが、天の川を表示させると一目瞭然。ステラナビゲータ10(SN10)と比べてSN11の方がずっと「それっぽく」見えます。ただし、天の川画像の解像度はそれほどでもないので、ちょっと拡大するとそれなりにアラが出るのが惜しいところ。


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一方で星雲の表示については、周囲との調和という意味で、SN10の方が違和感が少ない印象です。


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さらに言うと、デフォルトの状態で画像が表示される対象はSN10の方が多そうです。SN11ではM16やM17すら表示されません。


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もっともSN11の場合、星図の代わりに全天写真や写真の明暗を反転したものを表示することが可能で、これを使うと写真の構図確認などには圧倒的に有利です。


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SN11のもう1つの目玉は「マルチバンド星図」の表示で、紫外線宇宙望遠鏡GALEXや赤外線天文衛星IRAS、あるいはHα線での全天観測データを星図上にオーバーレイ表示できるようになっています。特にHα線や赤外線の観測データは、淡い散光星雲や超新星残骸の位置、大きさの確認に有用で、こうした天体を撮影する際の参考になります。


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ところが、惜しいのがこの「マルチバンド星図」の位置がどれも星図に対してひどくズレていること。ズレが特に大きいのは、はくちょう座~カシオペヤ座に至る秋の天の川周辺で、最大で7度ほどはズレているようです。


天の位置によってズレの方向、大きさが不均一なので、おそらくはデータをマッピングする際の不具合かと思いますが、今後、何らかの形でアップデートが入るのではないかと思います。


「マルチバンド星図」のヘルプには「全天上の大まかな分布を示しており、座標は厳密なものではありません。」とあるので、もしかするとメーカー的には「仕様」なのかもしれませんが……さすがにこのズレは大きすぎるので、修正されることを信じたいところです。


【追記 2019年3月27日】
上記不具合については修正予定との情報を頂きました。期待して待ちたいと思います。


【追記 2019年4月8日】
上記不具合については、4月5日公開の11.0bアップデータで修正されました。現在は特に問題なく利用できます。


この他はおおむねSN10の機能を踏襲していて、これまでステラナビゲータを使ってきた人にとっては、操作方法などで特に引っかかる点はないでしょう。アップデート価格もそれほど高くないですし、SN10などをお持ちの方は、アップデートして損はないと思います。

*1:旧バージョンがインストールされていると、旧バージョンの表示設定などを引き継ぐことが可能です。

*2:選択画面を出すかどうかは「設定」→「環境設定」で設定できます。

長焦点鏡の出番

春が近づいて雨の日も増えてきましたが、8日金曜は快晴の上に月明かりもなし。ということで、家族の晩御飯を大急ぎで作ったのち、いつもの公園に出撃してきました。


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この夜の気圧配置を見ると、大陸からの移動性高気圧が日本上空をすっぽりと覆っています。地上の風は穏やかで、さらにシーイングも良好だろうとにらんで、EdgeHD800を持ち出しました。先日購入したIDAS NebulaBooster NB1もさっそく使ってみたかったので、最初のターゲットはうみへび座の惑星状星雲「木星状星雲」ことNGC3242に。


撮影条件は、過去に撮った惑星状星雲同様、短時間露出のコマを多数枚撮ることにします。これらをコンポジットして、最後にRegistaxで処理する方向です。自宅で撮影すると近くを通る電車の振動のためにボツコマが大量生産されるのですが、この場所だとそうしたものと無縁なので実に快適です(^^)



日付が変わる頃、NGC3242の撮影が終了。そのあと何を撮るかノープランだったのですが、ちょうどM83が昇ってくるところだったので、フィルターを普段使いのLPS-P2に付け替えてM83に鏡筒を向けます。


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M83の南中時の高度は、東京で24度ほどしかありません。見るからに鏡筒が水平方向を向いています。都心だけに地平付近は光害が半端なくて、果たしてどこまで写るものやら……。


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さらに、日周運動でM83が西に傾いてくると、鏡筒の方向にちょうど公園のLED街灯が。2000mmの長焦点なので、視野が狭くてあまり影響は出ないとは思いますが、少々心配です。


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必要コマ数を確保して、なお時間が余ったので、夜明けまでのわずかな時間を使ってへび座球状星団M5を撮影。これで全撮影シークエンス完了です。




仮眠後、木星状星雲から画像処理を始めますが……ここでステライメージの思わぬ弱点が発覚しました。


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今回、320コマをコンポジットするつもりで撮影したのですが、これをコンポジットウィンドウで選択すると……


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259コマまでしか読み込まれません*1。これはステライメージ7でも8でも同様でした。


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ステライメージ8の「自動処理モード」では、多数枚の画像処理を念頭に置いているだけにこの枚数でも読み込めるようですが、一方で、このモードだと「位置合わせ」は「自動」しか選べません。ステライメージの自動位置合わせは、EdgeHDのような長焦点鏡での画像だと誤検出が多すぎて使い物にならないのが実情で、この時点で320枚を一気に処理するのは諦めました。


結局、旧来のインターフェイスで16枚ずつに区切って読み込み、「基準点」で位置合わせを行って処理することに。ステライメージ8の「自動処理モード」は、多数枚処理に重点を置こうという意図は理解できるものの、できることが少なすぎて実際には全く使い物になりません。もし「次」があるなら、ここはきっちり改善してほしいところです。


ともあれ、320枚分をコンポジットしたのちにRegistaxでウェーブレット処理を行い、出てきた結果がこちら。



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2019年3月8日 EdgeHD800(D203mm, f2032mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO800, 露出10秒×320コマ, IDAS NebulaBooster NB1使用
ノータッチガイド 中心部をトリミング
ステライメージVer.7.1e、Registax6ほかで画像処理

今回は、オートガイダーの視野内にちょうどいいガイド星が見当たらなかった*2こと、また1コマ当たりの露出がわずか10秒ということから、赤道儀任せで撮っています。赤道儀任せなのでどうしても時間とともにズレてくるのですが、赤経側のズレ方がピリオディックモーションを反映するかのように変動するのがちょっと面白かったです。


ひょっとしてもう少し細部が出るかと期待しましたが、まぁ、写りとしてはこんなものでしょう。中心星を取り巻くシェルの様子がよく分かります。「木星状」というよりは、まるで何かの目のようです。


ちなみに、「木星状星雲」という愛称は、イギリスの天文学者ウィリアム・ヘンリー・スミスが「大きさといい、色といい、見え方といい、木星そっくりだ」と感想を言ったところからきているそうですが、視直径*3はともかく、色は酸素原子由来の青緑色が強くて木星とは似ても似つきません。「土星状星雲」の方は形自体がいかにもそれっぽくて、まだ分かるのですが……(^^;



次いでM83を処理。こちらは15分露出のものが8枚だけなので、その意味では楽ですが……「撮って出し」はご覧のありさま。


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低空ゆえの光害の強烈さもあって、見事に真っ白です。センサーのゴミや周辺減光も目立ちますし、毎度のこととはいえ本当に嫌になります。


それでも、写っていることを信じて処理した結果……


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2019年3月9日 EdgeHD800(D203mm, f2032mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO400, 露出900秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
セレストロン オフアキシスガイダー+Lodestar+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

立派なフェイスオンの銀河の姿が出てきてくれました。渦がこちら側を向いた「フェイスオン」の銀河は一般に淡く、カタログの等級の数字以上に撮りづらいものが多いのですが、このM83についてはその心配はありませんでした。低空ゆえにシーイングの影響が大きく、星像が膨らみ気味なのが残念なところですが、外周部の淡い腕も存在が分かり、東京都心でここまで写ってくれればいいかなという気もします。


この淡い腕、M83本体を円形に取り巻くように存在しているため、最初はフラットの取り損ないかとも思ったのですが、他の写真などを見る限り、実際にこういうもののようです。


ところでこのM83、東京での南中高度が低いのは上でも書いたとおりですが、メシエが活躍していた頃のパリでの南中高度はさらに低く、せいぜい12度くらいしかありません。当時は光害がほとんどなかったとはいえ、こんなものを口径数cmの小望遠鏡で発見するのですから、恐るべき鋭眼と言わざるをえません。



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2019年3月9日 EdgeHD800(D203mm, f2032mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO800, 露出60秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
セレストロン オフアキシスガイダー+Lodestar+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

最後はへび座球状星団M5。北半球最大の球状星団であるヘルクレス座のM13にも匹敵する、明るく大きな球状星団です。ごく短時間の露出での撮影ですが、実に見事な姿です。空の暗いところで、大口径ドブソニアン&双眼で覗いたりしたら、さぞや素晴らしい眺めになることでしょう。

*1:256コマなら、まだなんか分かる気がしなくもないですが(笑)

*2:1/2型センサーを採用したStarlightXpressのLodestarをオフアキで使用しているので、35mm判換算だと8000mm以上の焦点距離に相当します。都心で空が明るい上、春の空のように星の数が根本的に少ないと、こういうことはまま起こりえます。

*3:木星状星雲のサイズは40秒×35秒。衝の時の木星が視直径約44秒なので、ほぼ同サイズです。