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都心から「カラフルタウン」を撮ってみた……かった

東京都心から天の川を撮影した5月3日の夜、もうひとつの「無理・無茶・無謀」を実行していました。
hpn.hatenablog.com


アンタレス周辺の俗に言う「カラフルタウン」の撮影です。


アンタレス周辺は星間物質が豊富で、散光星雲や反射星雲、暗黒星雲が入り乱れて非常ににぎやかな領域になっています。とはいえ、いずれも非常に淡いため、フィルム時代にはあまり知られておらず、撮影がデジカメ中心になってから広く知られるようになった印象があります。


もっとも、デジカメや冷却CMOSを用いても淡いことに変わりはありません。おまけにアンタレスは本州だと南中しても30度以下の高度にしかならず、大気の透明度や光害の影響を非常に強く受けます。さらに、対象には光害に弱い反射星雲や暗黒星雲が多く含まれています。こんな対象を東京都心から撮ろうというのですから、我ながらおよそ正気の沙汰ではありません(^^;


それでも過去、チャレンジしてみたことはあるのですが……痕跡レベルで星雲の存在は確認できたものの、LED街灯からの迷光のせいで惨敗していました。
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そこで今回は、先のエントリーで書いたように撮影場所を移動するのに加え、迷光を減らすためミニボーグ55FLのフードを延長しました。


具体的には、クリアファイルを切り取って筒を作り、内側に植毛紙を貼りつけ。これだけだと裏から光が抜ける可能性があるので、百均で買ったファイルの表紙を使って外筒を作り重ねています。最初はファイルの表紙で作ったフードの内側に直接植毛紙を貼ったのですが、ファイルの表紙が想定以上に固く*1、形がきれいな円筒にならなかったので上記のような二重構造にしています。


ここまで対策を取った上で撮影です。先のエントリーでも書いたように、この夜は大気の透明度がもうひとつで、露出をロクに伸ばすことができません。撮って出しだとこんな感じ。




現場で軽く強調してみると……



なんとなくアンタレス周辺に反射星雲の成分があるような気もしなくもないような……。


まぁ、撮って出しで対象が見えないのは珍しくもなんともないですし、気にせず撮影を継続。帰宅後に「RGB分割フラット補正」を行って、カブリ補正までしたところで……異常に気づきました。

……なにこの丸い影?


おまけに左下には、なにやら明るい光の帯が写りこんでいます。


念のため、ダークフレームやフラットフレームを確認しましたが、こちらは異常なし。残念ながら、撮影した画像自体に問題があるとしか思えません。くそぅ、星雲の片鱗は写っていそうなのに……。


考えられる原因は、やはり地上からの光しかないでしょう。


撮影風景の写真を見ても分かる通り、鏡筒の向いている方角には高速道路の照明をはじめ、明るい光源がそれなりにあります。普段の撮影場所のように、数十m先にLED街灯があるような酷い条件ではありませんが、なにしろ格段に淡い相手ですから、このくらいでも致命的なのでしょう。


円形の影はフィルター~撮像素子(or 保護ガラス)間、もしくは補正レンズ内でのゴーストかなという気はしますが*2、いずれにせよ、回避するには少なくとも地上の明かりを、間接的なものも含め、ほぼ完全にシャットアウトする必要がありそうです。まずはケラレる限界ギリギリまでフードを伸ばす手が考えられますが、そもそもが想像以上の淡さ&悪条件ですし、果たしてどこまで効果があるか……。まぁ、今後のこともありますし、打てる手は打っておこうとは思いますが。


処理するだけはしてみる


と、まぁ、結果としては残念なことになったわけですが、せっかく撮った上に星雲の片鱗も見えているわけですし、このまま放っておくのももったいないです。どの程度のポテンシャルがあるのか、最低限は確認しておきたいところです。


そこで、FlatAideを用いるなどして大きな迷光を取り除いて……こう!



2022年5月4日 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -10℃, Gain=0, 300秒×30, IDAS LPS-D1フィルター使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.9.0fほかで画像処理

本当に最低限ですが「カラフルタウン」の「カ」の字くらいは出てきたでしょうか。とはいえ、FlatAideによる処理が入っていなければ、もっとガンガン強調できて淡い反射星雲や暗黒星雲も炙り出せたのかもしれませんが仕方ありません。


空の暗いところで撮られた写真と比べると、まさにその反射星雲や暗黒星雲の写りが際立って悪いです。反射星雲はそもそもが星の光を反射しているだけの天体ということで暗いですし、青く輝いているものが多く光害にかき消されがち。暗黒星雲は、背景の明るさで暗く浮かび上がるか、より暗い背景に対してガスが浮かび上がるかしないと見えませんが……都心の、特に低空では光害が著しく、淡い明暗を描き出すのは容易なことではありません。ましてや、今回はFlatAideによる「なんちゃってフラット補正」なので、そうした淡い部分を強調するほどの精度は期待できません。というか、そうした淡い階調は補正の段階で消え失せてしまった可能性もありますね。




まぁ、それでもアンタレスにまとわりつくIC4606やさそり座σ星アルニヤト周辺のSh2-9、同τ星パイカウハレを中心に広がるLDN1103といった散光星雲は見えていますし、IC4603、IC4604、IC4605といった反射星雲も中心部は見えているので、都心からでも全く無理な対象というわけでもなさそうです。


とはいえ、根本的には先に書いたように地上からの光をどうにかしないとならないので、撮影場所の選定含め、都心からの難易度は極めて高いと言えるでしょう。

*1:それでも厚みは約0.3mmで、普通に市販されている黒いプラスチックシートとしては最薄クラスです。

*2:例によってアホみたいに強調していますし、きれいに同心円状ののゴースト(?)が見えてくるあたり、フラット補正の精度が高いことを喜ぶべきかどうか……(苦笑)

GWは「がんばるウィーク」

5月3日の夜は一晩中快晴の予報。月齢も三日月で理想的でしたので出撃することにしました。ここで、普段ならいつもの公園に……というところなのですが、連休につき後のダメージの心配の必要がないということで、少し遠出をしてみることにしました。

「重いコンダラ」って、さすがにそろそろ通じないよね?

古来、天文観測機器というのは重量のあるものである。古代中国においてもそれは例外ではない。しかし一方で、暦法に用いる精密かつ高価な機器であり、移動に際して奴婢などを使役するわけにもいかず、学者自らが運ばざるをえなかった。後漢の時代、王宮の高級役人たちは、機材の重さに転げ、煩悶する学者の姿を「転悶」と嘲笑・揶揄した。これがのちに差しさわりのない文字に置き換わり、「天文」という言葉になったのである。

民明書房 刊「秘伝中華暦法大全~陰陽五行から四柱推命まで」より


……と、まぁ、謎の前置きは置いておくとして(ぇ


目的地は5kmほど先の河川敷。公園から直結なので自販機やトイレもありますし、公園は警備員が定期的に巡回していて比較的安全*1という好立地です。


この場所を選んだのは、いつもの公園だとLED照明が邪魔過ぎて、南天低い天体が狙いにくいから。過去に何度も惨敗していますし、この際だから南側に照明のない、見晴らしの良い場所で撮影してみたかったのです。
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ただ、問題は行くまでの道のりです。自動車を持っていない私は、普段は台車に荷物を満載して約1.5km先の公園まで移動しているのですが、今回はただでさえ距離が3倍近く伸びる上……



この高低差ですorz*2


オレンジがいつもの公園、青が件の河川敷までの道のりの高低差ですが、河川敷に行くまでに大きく急な坂があるのが一目瞭然です。これはいわゆる「河岸段丘」で、河川敷に降りる以上は避けようがないもの。これでも最も勾配の緩い経路を選んでいるのですが、その勾配は実に平均約6%*3!CMで有名になった「ベタ踏み坂」こと江島大橋の勾配が島根側6.1%、鳥取側5.1%とのことなので、結構な急坂なのが分かるでしょう。


これを台車で往復するのかと思うとイヤになります。まぁ、急ぐ必要はないのですし、休み休み行けばどうにかなるでしょうか……。



この日のターゲットは、まず夜半まではおとめ座の系外銀河NGC4647に現れた超新星SN2022hrsをEdgeHD800で、そして夜半以降は、夏の南天低くにある「無茶な対象」を狙う予定です。


これら必要な機材に加え、この季節は案外冷え込むこともあるので防寒具も……と、あれこれ台車に積み込んだ結果……




なんかすごいことになりましたorz ざっくり重さを見積もってみると、台車の自重22kgやボックスの自重7kgを含め90~100kg近くはありそうです。


バカなの?ねぇ、バカなの?


……うん、たぶんバカなんでしょう(笑) ここまできたら「なんとかの一念……」の世界、あとは気合だけです(^^;


動き出すと、平地はまぁいつも通り。距離が多少伸びたところで問題はなさそうです。が、問題はやはり中盤の急坂。下り坂だから楽かと思いきや、坂の傾斜以外に、路肩に向けて雨水を逃がすための傾斜があるため、油断すると台車が路肩に向けて暴走しがちになります。これを抑え込むため、ずいぶんと体力を使ってしまいました。


それでも、どうにか小1時間後には河川敷に到着。休日の割に意外と人も少なく、快適に撮影できそうです。



機材の設営途中、西空にはきれいな三日月が。虹色に染まった夕空とあいまって、実に美しい光景です。こればかりは都心でも関係ないですね。


そして天文薄明の終わった20時過ぎからは、予定通りSN2022hrsの撮影を開始。風がちょっと強めだったのが予想外でしたが、撮影に支障が出るほどではなさそうです。また、この風のおかげで体感温度が想像以上に低かったのですが、防寒具をしっかり持ってきていたので助かりました。重たい思いをしてでも持ってきたかいがありました。


そして夜半過ぎからは、鏡筒をBORG55FLに載せ替えて「無茶なチャレンジ」その1、アンタレス周辺のいわゆる「カラフルタウン」を狙います。この夜は、大気の透明度のせいかイマイチ冴えない空だったのですが、なんとか片鱗くらいは見えてほしいものです。


また、並行して「無茶なチャレンジ」その2、天の川の撮影に挑戦してみます。これについては過去、多少は写りそうな気配が見えていたので、南側に強い照明がない状態で本腰を入れて撮影してみたいと思っていました。さて、どうにか絵にできるでしょうか……?
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この季節、午前3時過ぎには天文薄明が始まるので、そこで撮影終了。機材を片付けて帰路につきます。


完徹で体力が削れているところに持ってきて、帰りは例の急坂を登り返さなければならないわけですが……路肩への傾斜に車輪を取られた経験から、帰りは車がいないことをいいことに車道の真ん中を堂々と。これだけでずいぶんと楽になりました。


とはいえキツいのは確か。Twitterでの叫びでお察しください(笑)

結局、帰路も行きとほとんど同じく約1時間で到着。あの高低差を100kg近い荷物とともに移動した割にはなかなかのタイムですが……できれば使いたくない場所ではありますね、体力的に(^^;


リザルト~超新星SN2022hrs


……というわけで、撮影結果。まずは超新星SN2022hrsからです。この超新星は4月16日に板垣公一氏が発見したもので、発見時の明るさは15等。その後、じわじわと明るさを増してきています。撮影時のプレビューの時点から見えていたので、心配はしていなかったのですが……こう!



2022年5月3日 EdgeHD800(D203mm, f2032mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -10℃, Gain=200, 露出180秒×40コマ, IDAS LPS-D1使用
セレストロン オフアキシスガイダー+Lodestar+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.9.0fほかで画像処理

M58(右側)とM60(左側)を並べた定番の構図で狙ってみました。M60の右上に密着している系外銀河NGC4647の中に青白く見えている明るい星がSN2022hrsです。


以前、同じ構図で撮影した画像と並べてみたのがこちら。



それまで存在の分からなかった星が、突如として系外銀河丸ごとの明るさに負けないくらい明るくなったというのがよく分かります。




周囲の星と明るさを比べてみたのがこちら。11.77等の星よりは暗く、13.07等の星よりは明るいということで、12等台半ばといったところでしょうか。他者の観測結果なども見ると、明るさ的にはほぼピークのようです。


ちなみに、このSN2022hrsはIa型超新星と考えられています。Ia型超新星は絶対等級が基本的にほぼすべて同じ(-19~-19.5等程度)と考えられていることから、見かけの明るさを測定することで超新星までのおおよその距離を求めることができます。


絶対等級Mと見かけの等級m、距離d(パーセク)の関係は以下の通り。


 m - M = 5 \log_{10} d - 5

見かけの等級を仮に12.5等とすると、距離dはおよそ20Mpc(メガパーセク)前後と求められます。NGC4647までの距離はおよそ19.3Mpc(=6300万光年)*4と言われていますので、オーダーとしてはまずまずいい線行っているのではないかと思います。


リザルト~都心の天の川


さて、ある意味今回の本命の1つ、「無理・無茶・無謀」を極めた東京都心からの天の川の撮影です。


先の撮影風景の写真の通り、撮影場所は比較的暗いとはいえ、そこは東京都心。夜空は猛烈に明るく照らされています。こんな状況で天の川など本当に写るのでしょうか?


しかし逆に考えてみれば「空の暗いところなら肉眼で見える」ということは6等以上の明るさはあるわけで……。また、過去にはオリオン大星雲M42周辺の分子雲を一眼レフで写したこともありますし、希望がまったくないわけではありません。


ここはもう、自分の画像処理の腕を信じてシャッターを切るしかないでしょう。白飛びしないよう、例によって感度をISO100まで下げ、F5.0、露出時間120秒で撮ってみます。


「ところでこの写真を見てくれ こいつをどう思う?」

「すごく……白いです……」

真下に走る高速道路の照明が上空を照らしている上、この夜の空の透明度があまり良くなかったことも手伝って、かなり悪い写りです。中央に干潟星雲 M8が写っているのがかろうじて判別できますが、天の川など影も形も見えません。


とはいえ、都心で撮っていると対象が見えないのはいつものこと。なんとかなると信じて撮りまくり、処理に回します。


35mm(@キヤノンAPS-C)と広角で撮ったためにフラット補正をしてもカブリが直線的にならず、カブリの除去には一苦労。最終的にはFlatAideでの補正を余儀なくされました*5が……こうだ!



2022年5月4日 SIGMA 18-50mm F3.5-5.6 DC(f35mm, F5.0) AZ-GTiマウント
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出120秒×48コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
ノーブランドCCTVレンズ(f25mm, F1.4)+ASI120MC+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.9.0fほかで画像処理

「見えるぞ!私にも天の川が見える!!」


天体改造とはいえ、冷却カメラではなく通常の一眼レフなのでノイズでザリザリですが、とうとう東京都心から天の川をまともに捉えることができました。以前も思いましたが、淡くかすかな光とはいえ、街の光を超えて星の光が地上に確かに届いているのだと感じられて、本当に感動します。しかも、架台は安いAZ-GTiだし、カメラは中古品の改造、レンズも3000円という激安の中古品と、特別な機材は何も使っていません。これで東京都心から天の川を捉えられるのだからたまりません。


星座線やメシエ天体の注釈を入れたのがこちら。



主な星雲、星団は写っていますし、恒星にしても意外と暗い星まで写っているのには驚きます。星図と突き合わせてみると少なくとも10等くらいまでは写っていそうです。


また、さそり座の尾のあたりを見ると、ごくかすかにですが出目金星雲 NGC6334と彼岸花星雲 NGC6357の存在が!




さらに、干潟星雲 M8の西側に伸びる「猫の手」と俗称される淡い星雲も見えているようです。




比較的雑に撮ってこれなので、冷却カメラでしっかり腰を据えて取り組めば、これらをまともに捉えることも可能かもしれません。



なお、残る「カラフルタウン」については、現在処理中なので後日。音沙汰がなければ、まぁ、そういうことだったんだろうなと察してください(笑)


好調な時こそ要注意


ところで「好事魔多し」で、天の川の撮影を始める前、実はつまずいてAZ-GTiごと機材を丸ごと転倒させてしまいました。幸い、倒れ方が良かったのか機材そのものに異常はなかったのですが、肝をつぶしました。

機材配置はこんなで、1か所で制御できるよう機材を近接して配置していたのですが、AZ-GTi設置時に横着して机をまたいだら、コードに足を引っかけそうになってよろめいて……という次第。


犠牲は、転がった水筒が地面で削れて傷だらけになったのと、カメラのホットシューに取り付けたガイドカメラ固定用自由雲台くらいでしょうか。後者は本体に打痕が付き、固定ねじのプラスチックノブが割れ、ホットシュー~雲台の部分が折れ曲がってしまっています。しかし、これが衝撃を吸収してくれたのでしょうね。本当に何事もなくて良かったです。


なまじ調子のいいときほど、気を引き締めてかからないといけませんね。

*1:あくまで「比較的」。まぁ、近くにホームレスはいないし、高級住宅地の中ということで変なヤカラも少なめと割と好条件ではありますが、河川敷は一般に人気(ひとけ)はないし、何かあっても助けを呼びづらいと悪条件も揃っているので、あまり積極的にはお勧めしません。

*2:グラフの作成には「地理院地図」を使用しました。

*3:338mの距離で20.79m差

*4:NGC 4647 - Wikipedia

*5:FlatAideを使うと負けた気になるので使いたくないのですが仕方ありません。

リベンジ!回転花火銀河(5年ぶり2回目)

前エントリでも触れましたが、先の金曜日、月没を待っていつもの公園に出撃してきました。


本来なら「春の銀河祭り」後半ということで、おとめ座~かみのけ座方面の系外銀河などを長焦点鏡で狙うところですが、今回はおおぐま座の「回転花火銀河」ことM101を狙うことにしました。


というのも、この銀河は過去2回トライしたことがあるのですが……

hpn.hatenablog.com
1回目はデジカメの特性をまだ理解していない頃で、短時間露出を積み重ねたもののボロボロの結果に。

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2回目は低感度設定・長時間露出によって銀河の姿をそれらしく捉えることはできたものの、処理にかなり無理があって不自然さが拭えませんし、腕の中のHα領域も白く飛んでしまっています。


デジカメの場合、RAWで撮ったとしても画像処理エンジンでの各種処理(ノイズリダクション処理、レベル調整、トーンカーブ調整など)を受けてしまうため、暗く淡い対象を撮ると、特に高感度ではシグナルが除去されてしまいがち(1回目)。これを避けるために低感度設定・長時間露出を使う*1わけですが、今度は輝度の高い部分が飽和しやすくなり、Hα領域が白飛びしてしまう……ということになるわけです。


そこで天体用冷却CMOSです。画像処理エンジンがないので、淡い光もデータとして余さず捉えられますし、高感度・短時間&多数枚露出でも画質がほとんど落ちないのは過去に検証済み。露出時間を短めにすれば飽和することもないでしょうし、これならある程度満足のいく写りになるのではないでしょうか……?


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当初の計画では、月没までの時間を使ってHα画像を撮り、月没後は通常のカラー画像を……と思っていたのですが、位置確認のためにHαの試し撮りをしたところ……


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……M101どこよ?


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うんと強調すると、なんとなく中心付近に銀河があるようにも見えますが、どうにもハッキリしません*2。ナローバンドだとプレートソルビングもいまいちうまく働かないのが厄介です。


そうこうやっているうちに月が沈んでしまったので、自信のないHαは諦め、通常の撮影に移ります。Gainは200と少し高めにし、露出は5分。この場所だとこれでほぼ適正露出です。


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撮って出しだとこんな感じ。M101はカタログ上の数字だけなら7.9等と、有名な「子持ち銀河」ことM51(8.4等)より明るいくらいなのですが、大きく広がっているために非常に淡く、銀河の存在はほとんど分かりません。よーく見ると、核が見えてはいるのですけど……。


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しかし、強調してみると銀河の姿がしっかりと。これならなんとかなりそうです。


こうして24コマ、計2時間分を確保したところで天文薄明開始が近づき、撤収となりました。



その後、自宅に戻ってからダークやフラットを撮影。その後、色ごとに丁寧にフラット補正を行ったり、ノイズ除去処理を挟んだりして……こう!


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2022年4月9日 ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -10℃
Gain=200, 300秒×24, IDAS LPS-D1フィルター使用
ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.9.0eほかで画像処理

新宿・渋谷から10km圏内の東京都心からということを考えれば、思った以上によく写ってくれました。核の部分と腕の部分との色の違いも出ていますし、Hα領域も鮮やかです。Hαナローバンドの画像を確保できなかったのが心残りだったのですが、ここまで表現できていれば、無理して追加しなくてもいいかなという気がします。


f:id:hp2:20220413174840j:plain:w600

写っている天体の番号を記入したのがこちら。おとめ座方面ほどではないにせよ、おおぐま座方面も系外銀河の多い領域で、多数の細かい銀河が背景に写りこんでいます。


また、M101の内部・周辺にNGC天体が多数ありますが、これは銀河の濃い部分やHα領域が独立した天体として記録されたもの。「さんかく座銀河」M33周辺の天体などもそうですが、当時は眼視観測ですから、銀河がこれほどの面積に広がっているとは思われなかったのかもしれません。

*1:露出時間が長い=1コマにたまる天体からの光の量が多い=ノイズリダクション処理等の影響を受けづらい

*2:結果的には、ほぼ中心にM101が入っていたのですが、現場ではなかなか分かりませんでした。