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ASI2600MC Pro保護ウィンドウ交換

普段メインで使っている冷却CMOSカメラASI2600MC Pro。性能含めおおむね満足なのですが、1つだけ不満がありました。それは、センサーの手前にある保護ウィンドウがUV-IRカットフィルターになっていること。これがあるため、このカメラでは赤外線撮影が不可能でした。



もちろん、保護ウインドウがUV-IRカットフィルターになっているのは理由があって、これにより別途フィルターがなくてもカラーバランスの崩れがない画像が得られます。しかし、先日の系外銀河の撮影でも明らかなように、特に光害地において赤外線撮影の威力は絶大です。また、たいていの場合、光害カットフィルターやデュアルナローバンドフィルターの類を装着して撮影しますから、UV-IRカットフィルターがなくても紫外線や赤外線はカットされた状態です。となれば、もはやこのフィルターは赤外線撮影を妨げる邪魔者でしかありません。


そこでこれを、ASI2600MC Proのモノクロ版であるASI2600MM Proにも使われている反射防止ガラスに交換することにしました。これなら赤外域の透過度も十分あるので、赤外線撮影を楽しむことができます。




問題はこの反射防止ガラスが手に入るかどうかですが……


ZWOのサイトに該当製品がありました。ASI2600などの場合、「AR D60 Window」というのがそれです。価格は39ドルで、プラス送料として30ドルがかかります。円安の折、少々惜しい気もしますが仕方ありません。


もっとも自分の場合、以前、TopazのキャンペーンでPayPalの口座に50ドルがキャッシュバックされていた*1ので、これを使うことで19ドル分の支払いで済みました。


で、購入手続き後しばらくして、荷物が届きました。


注文していたフィルターです。届くまでそこそこ早く、国内通販とほぼ同様の使い勝手でした。


交換手順


それでは交換作業に移ります。ウィンドウを交換するには当然カメラをバラさないといけないわけですが、ついでなのでセンサーの掃除や乾燥剤の再生も同時にしてしまいましょう。


なお、ASI2600MC Proについては、2021年10月以前のロットにおいて、センサー裏面のサーマルパッドからのオイルブリードでセンサーが汚れる問題が報告されています。
astronomy-imaging-camera.com


自分のは、画像に影響が出るような直接的な被害は出ていませんが、センサーの外縁部にオイルが染み出しているのが視認できるので、これをウィンドウ交換のついでに掃除してしまいます。


まずは、ティルトプレートの3本のネジ(緑丸)を六角レンチで外します。


プレートを取り外したら、次いで本体の6本のネジ(緑丸)を外します。


これで蓋が外れ、センサーがむき出しになりました。


センサーは、念のためエアダスター等でほこりを飛ばしたのち、アルコールないし洗浄液を染み込ませたスワブやシルボン紙などで丁寧に拭います。


今回、自分は過去に買っていた「DD Pro [湿式]」(生産終了品)というイメージセンサークリーニングキットを使いましたが、同様のクリーニングキット*2が便利に使えると思います。


この時気を付けたいのは、一度、一方向に拭ったら同じスワブやシルボン紙で繰り返し拭わないこと。特に今回の場合、汚れはオイルですから、繰り返し拭ったり往復させたりすると、オイルを塗り広げるだけになってしまいます。もったいなく感じるかもしれませんが、1回拭うごとにスワブやシルボン紙を交換するようにしてください。


一方、外した蓋の方ですが、表側のプラスネジ4本(緑丸)を外すと……


ヒーターが見え、その下に問題のUV-IRカットフィルターがあります。ヒーターとフィルターとは特に接着などされていないので、フィルターは簡単に取り外せます。


これを反射防止ガラスに交換すればOKです。


なお、蓋の裏側には乾燥剤のタブレットがセットされています。これを指やピンセットで摘まみだして、電子レンジで加熱・乾燥させます。自分の場合、500Wで2分加熱しました。


加熱後、熱いうちにタブレットを蓋にセット。センサー上や反射防止ガラス内側のほこりを再度エアダスター等で吹き飛ばしたのち、分解したときと逆の手順で手早く組み立てます。これで作業完了です。





フラットを撮ってみましたが、幸い、目立つような大きなごみはなさそうです。厳密に見るとややスクエアリングが狂っているようにも見えるので、そのあたりはティルトプレートで要調整でしょうか*3

*1:すっかり忘れていたのは内緒。

*2:VSGO DDR-32、K&F Concept クリーニングキットなど

*3:カメラアダプターに問題がある可能性もあるので、それも含めて要調査です。