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新年初撮り

みなさま、遅ればせながらあけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。


さて、この年末年始は月の巡りがちょうどよく「撮影三昧だー!!」と思っていたのですが、年賀状に年越しそば、おせちと準備がなかなか忙しく、案外撮影時間を捻出することができず。が、2日、3日の両日はどうにか抜け出せそうだったので、いつもの公園に初撮りに行ってきました。

撮影

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メインは罵倒……もとい、馬頭星雲ことIC434周辺。ここは6年前にデジカメで狙っていて、当時としてはそこそこ悪くない写りだったのですが、冷却CMOSでどのくらいの写りになるのか気になるところです。
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撮影内容としては、2日の夜はLPS-D1(一般的な光害カットフィルター)を用いたカラー画像、3日の夜はHα画像を撮る予定。先日、IC405 & IC410の撮影で大きな効果を発揮した撮り方です。
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2日の夜は、2時近くなって馬頭星雲の高度が30度を切りそうなあたりで撮影を終了。引き続き何か春の天体を撮影したい気もあったのですが、あいにく鏡筒は短焦点のものしか持ってきておらず、視直径の小さいものが多い春の天体には合わないので、この夜は撤退しました。


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3日の夜は、また夜半頃まで馬頭星雲を。前述のとおり、今度はHαナローバンドで狙います。この夜は前日に比べて湿度が高く、空もどことなく霞んでいます。が、Hαナローバンドなら光害の影響は軽微なはずで、撮影に大きな支障はないでしょう。


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そして、夜半過ぎからは鏡筒をEdgeHD800に載せ替え。これで狙うは「天空のダイヤモンドリング」こと惑星状星雲のAbell 33です。大変淡い天体で、主に青緑色のOIIIで輝いているため、一般に青緑色の成分を含む光害の下での撮影難易度は極めて高。以前、デジカメで撮影したときは、証拠レベルの像を写すのがやっとでした。リベンジなるでしょうか?
hpn.hatenablog.com


ところが、いざ撮影に入るとトラブルだらけ。まず、オフアキの視野内にガイド星が入りません。


オフアキでの撮影の際には、ガイドカメラとしてStalightXpressのLodestarを用いています。ZWOの安価なCMOSカメラが普及する前にベストセラーとなっていたガイド用CCDカメラで、チップサイズが1/2型(6.4mm×4.75mm)と比較的大きいので重宝しています。しかしながら、これをもってしても、オフアキで使った時の35mm判換算の焦点距離は10000mmを優に超えます。光路外に光を導き出すプリズムの位置によっては、ガイド星が見つからないこともしばしばです。


最終的には、どうにか適当なガイド星を見つけることができたのですが……今度はオフアキの割にガイドが安定しません。しばらくPHD2のパラメータを弄ったりなんだりしていたのですが……結局判明したのは「極軸設定のずれ」という単純な理由でした。


どうやら鏡筒を載せ替えた際に、微妙に極軸がずれてしまった模様。搭載物の重量が大きく変わったことによる、たわみなども影響しているかもしれません。載せ替え後に再度極軸を設定し直せば良かっただけなのですが、横着して失敗しました。結局、これらの騒動で都合2時間ほど無駄にしましたが、どうにか撮影はできました。


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また、裏ではこの日極大を迎える「しぶんぎ座流星群」を狙ってカメラをセット。都心の明るい空なので、写れば御の字というくらいの緩い姿勢ですが……。


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ところが、明け方近くになると台車に霜がびっしりと。確かに寒い夜でしたが、都心でここまで霜が降りるのはあまり記憶にありません。そしてこの余波で、都心にしては珍しくカメラレンズにも曇りが!これは完全に油断しました。まぁ、こちらは元々大して期待していなかったので、いいといえばいいのですが……。


ともあれ、撮るものは撮れたので、明け方頃に撤収しました。


リザルト


さて、流星群の写真はチェックが面倒なので後回しにするとして……まずは馬頭星雲の写真から。処理前のHα画像は……

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うん。撮って出しの時点でもよく写っています。これなら期待できそうです。カラー画像の方は……

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こちらも比較的良く写ってますが……明るすぎないか?これ……。


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そう、CMOSカメラの撮像結果としては明らかに露出オーバーです。淡い部分を写す分にはこれでも構わないといえば構わないのですが、ここまで背景が上がってしまうと、せっかくの広ダイナミックレンジが無駄になってしまいます。


また、この写真をよく見ると、左側がえらい暗く落ち込んでいます。光害カブリにしてもさすがに大きすぎるような……。で、フラット補正、コンポジット、カブリ除去まで処理してみると……

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な ん だ こ り ゃ orz


ゴミの影はともかく、円周状に変な明暗が……。原因ははっきりとは分からないのですが、おそらく撮影に用いたレデューサー0.85×DGのイメージサークルがギリギリなこと、そしてライトフレームとELパネルで作成したフラットフレームとで光の回り方が違い、その影響が顕著に出たこと、といったあたりが影響していそうです。もしかするとフィルターが斜めにねじ込まれていた可能性もありますが、今となってはもはや検証不可能。この時点で、やる気は当社従来品比97%減↓ですorz



やる気が減ったので、気分を変えてもう一方のAbell 33の方を見てみます。


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こちらは逆に、暗すぎて何も見えません。さすがは(?)F10の鏡筒というべきか……。Gain100で撮りましたが、こちらはもっとGainを上げても良かったかもしれません。強調してみると


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確かに、中央にうっすらと円形のものがあるように見えますが……やはり猛烈に淡いです。NB1フィルターを使っているとはいえ、青い星雲は光害地では鬼門です。


それでも、気合と根性でなんとか炙り出して……こう。


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2022年1月4日 EdgeHD800(D203mm, f2032mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -20℃, Gain=100, 露出600秒×12コマ, IDAS NebulaBooster NB1使用
セレストロン オフアキシスガイダー+Lodestar+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.9.0dほかで画像処理

うぅむ……かなり頼りない写りの上、カラーノイズの色むらも乗って、ぶよぶよした汚い球体にしかorz 無理やり炙り出しましたが、都心からだとやはりかなりの難物です。トラブルによる2時間のロスが痛かったですし、そもそも露出時間がもっともっと必要ですね。Gainももっと上げた方が良さそうです。


その意味で、EdgeHD800のF10という暗さも考えどころ。純正レデューサーを使えばF7まで明るくなりますが、今度はオフアキが使えなく……ああ、そうか。デジカメと違って必ずしも長時間露出いらないから、ガイド鏡ガイドで行けるかもしれないのか*1。……ふむ、考えてみましょう。



さて、一方の馬頭星雲。すっかりやる気をなくしていたのですが、Hα画像はちゃんと撮れているのですし、放っておくのももったいないです。仕方がないので、StarNet++やFlatAideなどを駆使しつつ処理して……こう!


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2022年1月2日、3日 ミニボーグ60ED+レデューサー0.85×DG(D60mm, f298mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -20℃
カラー画像:Gain100, 900秒×10, IDAS LPS-D1フィルター使用
Hα画像:Gain350, 600秒×16, Astronomik Hα 6nmフィルター使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.9.0dほかで画像処理

……なんとか最低限形になったでしょうか?地味な反射星雲まで結構写りこんでいるあたり、都内で撮ったにしては上出来かなとは思いますが、「なんちゃってフラット補正」の段階でディテールを損なうようなかなり怪しい処理が入っていますし、強調しきれなかったのも確かなところ。撮影条件も反省点が多いですし、多分次のシーズンになるとは思いますが、リベンジを果たしたいと思います。

*1:過去、この鏡筒でもガイド鏡ガイドをやってましたが、長時間露出ではミラーシフトに起因すると思われる像の流れをどうしても止められず、オフアキに移行した経緯があります。