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自宅付近のSQM値を測ってみた

先日、だいこもん (id:snct-astro)氏が普通のCMOSカメラを用いてSQM値を取得する方法を紹介されていました。
snct-astro.hatenadiary.jp


SQMというのはUnihedron社製の測光装置「Sky Quality Meter」のことで、夜空の明るさを「1平方秒あたりの等級」で表示することができます。ここから転じて「夜空1平方秒あたりの等級」のことを「SQM値」と言ったりします。


「Sky Quality Meter」の各種モデルは国内だと国際光器から購入することができますが、価格はいずれも2万円越え。空の明るさを計測するためだけに買うのはちょっと……とためらわれる金額です。
www.kokusai-kohki.com


しかし、CMOSカメラを用いて計測できるのなら話は別。上記の記事に従って自宅付近の夜空の明るさを測ってみました。


データの取得


  • 使用カメラ:ASI2600MC Pro(ピクセルサイズ3.76μm)
  • 露光時間:1, 2, 4, 6, 8, 10秒
  • Gain  :100
  • 露光時刻:2022年6月30日 23:37~23:38
  • 冷却温度:0℃
  • 撮影領域:ベガ付近


撮影領域は、この時間帯に天頂付近に昇るベガ周辺としました。カメラについては、カラーフィルターの影響がありそうですし、本当はモノクロカメラを使うべき*1なのでしょうけど、あくまで簡易測定ですし、気にしないことにします。


カメラにはEF 75-300mm F4.5-5.6 IS USM*2を装着し、焦点距離100mmで撮影。ピントはややボカして星像が飽和しないように注意しています。また、一応の気休めに、赤道儀モードのAZ-GTiで追尾撮影しています。


データの解析

データの解析方法については、上述のブログ記事そのままです。計測対象の星は、手頃なところにあったHIP91552(6.45等)を用いました。


まず夜空のカウントがこちら。


そしてHIP91552のカウント。


これらから、


 L_{sky} ′ = 1.295 [counts/(秒角^2・s)]
 L_{star} = 9203.7 [count/pixel・s]


となり、SQM値は約16.1等と計算されました。他にもいくつかの星で計算しましたが、おおむね15.9~16.5等くらいの間に収まっています。


環境省の「夜空の明るさ調査」の結果を見ると、夏場の杉並区や中野区で16.7~16.8等程度の値が出ているので、この夜の空の透明度がそれほど良くなかったことも考えると、まぁまぁそんなに大きく外れていないのかなとは思います。
www.env.go.jp


で、これがどのくらいの数字かですが、夜空の明るさが16等台だと肉眼での限界等級が2等星程度というレベルで、実感ともよく合っています。冬場ならもう1等くらいは下がりそうですが……いや、それにしても酷い夜空だorz(知ってた)



ちなみにこの測定方法ですが、夜空や星の明るさに対するセンサー出力が直線性を保っていることが必要なので、デジカメだと難しいかもしれません*3。やってみると案外うまく行くかもしれませんが。

*1:さらに言えば厳密にはVフィルターを使うべきなのでしょう。

*2:以前、中古で買った格安品

*3:画像処理エンジンが余計な手を加えがちなので。