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2023年の振り返り

今年は温暖化のせいか、夏も冬も高温傾向。もう年の瀬だというのに気温高めで全く年末という気がしないのですが……カレンダーは確かに12月31日です。なので、毎年恒例の振り返りを行っておきましょう。




まずはハードウェアについて。昨年末の振り返りでは「現有戦力を大事に大事に使っていきたい」と高らかに宣言していました。
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が、その舌の根も乾かぬ1月早々に、Optolongのワンショットナローバンドフィルター「L-Ultimate」を購入 orz
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四捨五入すれば約6万円もするフィルターですが……使ってみるとその威力は歴然でした。特に赤い散光星雲の写りは素晴らしく、光害の酷い都内で撮っていることを忘れてしまうほどです。ただ、逆に言うと散光星雲(輝線星雲)や惑星状星雲、超新星残骸*1以外の写りは著しく悪くなるので、適した被写体の見極めは必要です。まぁ、こんな高価なフィルターを買おうなどという人は、そのあたり十分わかっているとは思いますが……。



さらに3月には、シュミットさんのCP+展示品セールに釣られてAskarのFRA300 proを購入。昨年末の誓いはどこへやらです(^^;
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ただ、この鏡筒について実験したところ、ライトフレーム、フラットフレームともに「強い強調処理を行うと、写真中心部が日の丸状に明るくなる」という、どこかでの内面反射によると思われる難点が明らかになりました。
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このような配光パターンは完全にフラットにするのが難しい上に、わずかでも補正がずれると明瞭な日の丸やリングとして画像上に現れてしまうため、かなり致命的です。それでも無理すれば*2ある程度は何とかなりますし、星像も隅まで結構きれいではあるのですが……。
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この鏡筒の扱いを今後どうしていくのかは悩ましいところ。無駄遣いは嫌ですすし、ほいほい買い替えたくはないのですが……。



6月、ビクセンからの「SD103SII/SD115SII鏡筒」の発売に合わせて、旧鏡筒の「スペーサー交換キャンペーン」が始まりました(キャンペーンは現在も継続中)。早速こちらも手持ちのED103Sを改造に出しましたが、結果、当たり前ですが星像が劇的に改善。同鏡筒最大の弱点がようやく解消された形で、非常に満足しました。
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古い鏡筒に対してもちゃんとアフターフォローを入れてくれるのはビクセンのありがたい点で、ここは大いに感謝したいと思います。中華鏡筒だと多分こうはいかないからなぁ……。



あとは秋に行った惑星撮影システムの見直し。ハードウェアとして買い足したのは中古の「2インチClicklock(シュミカセ2インチ用)」くらいですが、シュミカセでの惑星の写りがこれまた劇的に良くなりました。
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なまじ安上りに凝ったことをしようとすると落とし穴にはまる、という典型的な例で、猛省したいと思います。



そうそう、そういえばメインPCのHDDとGPUも数年ぶりに交換したのでした。
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HDD交換により、データドライブ容量は8TBから一気に16TBへと倍増。今後惑星撮影が増えたとしても、これでまた数年は問題なく戦えそうです。


GPUはGTX 960からRTX 3060Ti(GDDR6x版)へと、これまた大きなジャンプアップ。Topaz DeNoise AI、StarNet 2、BlurXterminatorなど、各種AI処理が大幅に速くなってストレスがなくなりました。最新のRTX 40シリーズと比べると消費電力は大きめですが、メモリ帯域などの基礎体力がしっかりしているので、今後も活躍してくれることでしょう。




さて、次は今年撮影した写真について。一覧がこちら。




ちゃんと仕上げたのは28枚で、枚数的には昨年とあまり大きくは変わりません。月1回出撃するのが精いっぱいという現在の家庭状況を考えると、このあたりが限界なのかもしれません。


今年は、上記の通り年初にL-Ultimateを購入したこともあり、昨年から引き続き……いや、昨年にも増して複数フィルターの使い分け&ブレンドに力を入れた年になりました。ここに載せた赤い星雲はすべてL-Ultimateが絡んだもの。しかしながら、恒星や反射星雲に対してこのフィルターは無力どころか有害ですらあるので、そこを従来型の光害カットフィルターで補う形です。


また、フィルターと言えばソフトフィルターも大活躍。特に、効果の弱い「プロソフトン クリア」は、望遠鏡に装着しても大きな威力を発揮しました。長焦点用に、さらに効果の弱いという「ブラックミスト プロテクター」あたりを導入してもいいのかもしれません。


M45周辺の分子雲やM78周辺など、比較的淡い反射星雲や分子雲にチャレンジし始めたのも大きいトピック。その裏には、LEDの光害が刻一刻と悪化していく中、これらの天体を都心から捉えられるのは今のうちだけかも?という焦燥感があります。金輪際、そんなものは感じたくなかったのですが……。


さらに、上記の惑星撮影システム更新に伴い、惑星撮影の扉が大きく開いたのも印象に残っています。特に、ガニメデの模様が写った11/3の撮影は自分でも驚きました。今後の惑星撮影が楽しくなりそうです。
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最後に、今年ページビューの多かった記事トップ10です。

  1. CP+ 2023
  2. 国内で簡単に入手できる望遠鏡一覧(口径15cm以下~25cmクラス編)
  3. 光害カットフィルターの比較
  4. SG-3500のバッテリー交換
  5. Askar FRA300 proレビュー(外観編)
  6. 国内で簡単に入手できる望遠鏡一覧(口径6cm以下~10cmクラス編)
  7. PoleMaster使用説明書
  8. BlurXterminator試用
  9. Sky-Watcher MAK127SP簡易レビュー(外観編)
  10. MAK127SPの写真適性


1位には、他を圧倒してCP+ 2023の記事が入りました。コロナ開け後、久々の大型イベントということもあって、皆さんの関心が集中したようです。ビクセンのVSD90SS鏡筒以下、注目の新製品の発表も少なからずありましたし、自分としてもなかなか楽しい展示会でした。


しかし、こうして改めて関心が可視化されてしまうと、毎年恒例とはいえ、ますますレポートに手が抜けないというかなんというか……(^^;


今年書いた記事だと、あとはFRA300 proのレビューが5位に。モノ自体の作りとしては下手な国産品よりよほど上質で、中華製品の勢いをまざまざと感じさせるものでした。しかし一方で、上にも書いたようにフラットにやや問題があり、光学的な詰めの甘さを感じる部分がなくもありませんでした。暗い空で明るめの天体を撮る分には、あまり問題にはならないとは思うのですが……。


それ以外は昨年以前の記事。今年はあまりレビューやノウハウ的な記事を書きませんでしたので、良くも悪くもそのあたりが反映されているのかと思います。ずいぶん以前に書いたSG-3500のバッテリー交換の記事が根強くランキングに残っているのは面白いところで、最近はリチウム系バッテリーが全盛とはいえ、まだまだディープサイクルバッテリーは死なず、といったところでしょうか(^^;

*1:要するに水素や酸素の輝線

*2:「無理」のレベルが「あたおか」なのは置いといて。