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PoleMaster使用説明書

先日から関連記事を上げている、QHYCCDの電子極軸望遠鏡「PoleMaster」に関してですが、天文ハウスTOMITAから提供された日本語マニュアルをQHYCCDのサイトにあるマニュアルと見比べていたところ、結構マズい感じの間違いを発見しました。

また、日本語マニュアルに書かれていない内容も若干ありましたので、以下に「勝手訳」を載せておきます。青字はHIROPONによる注です。

なお、もしかしたら誤訳等があるかもしれず、完全な正確性は保証しかねますので、その点はご了承ください。これによって何か損害が生じても、一切責任は取れません。不安があるなら、大元の英文マニュアルをご参照ください。

PoleMasterの使い方

アプリケーション使用前に、赤道儀の極軸を大まかに合わせます。コンパスの指示に従って赤道儀を北に向け、高度角を使用場所の緯度に合わせます。詳しくは赤道儀の説明書を参照してください。これを行うのは、PoleMasterのカメラの視野に北極星が入るようにするためです(PoleMasterは11度×6度の視野を持っているので、設定が粗くても北極星は視野の中に大体入ります)。

PoleMasterの接続とアプリケーションの起動

カメラとPCを付属のUSBケーブルで接続します。初めて接続した場合、PCはカメラを認識し、ドライバのインストールが行われます。

Polemasterのアプリケーション(インストール時に、ショートカットがデスクトップ上に作られているはずです)を起動すると、以下のような画面が現れます。


メニューから「接続」を選びます。


以下のようなセクションが現れます。

北天か南天かを選択します。


大気差補正を有効にする場合、「ツール」から「大気差」を選択し、緯度、経度等を入力してください。


表示が見やすいよう、露出設定(露出時間とゲイン)を調節します。北極星と周辺の星々が見えるようにしてください。終わったら「設定完了」をクリックします。

北極星の位置の確認

画面中の北極星の位置を指定します。北極星をダブルクリックしてください(冒頭に書かれているように赤道儀がおおよそ正しく設置されていれば、視野内には北極星がほぼ必ず入っています。画面中でひときわ明るく見える星がそうです。)北極星を同定するのが難しかったり、画面中に北極星があるのかどうか分からない場合(事前のおおまかな極軸合わせがちゃんとできていない場合など)、メニューの「ファイル」→「BMPで保存」で画面をBMPファイルとして保存することができます。このファイルをAstrometry.netのようなオンラインサービスを含むフリーのplate solver(その写真が星空のどこを写したものかを同定するソフト)にかけることができます。これにより、どれが北極星か、あるいは画面中に北極星が写っているのかどうかを確認することができます。これは特に南天で有用です(はちぶんぎ座σ星を同定するのは難しいので)。


北極星をダブルクリックしたら、次に周辺の星々が描かれたスケールパターンを画面の星に合わせます。スケールパターンはキーボードの上矢印・下矢印キーやスライダーで回転させることができます(マウスをスライダーの上に置いた状態で、ホイールを回すことでも調節できます)。正しく合わせると、星々と赤い円で描かれたスケールパターンとが各々一致するはずです。そうならない場合、北極星として選択した星が正しいかどうか、確認してください。済んだら「完了」をクリックし、次のステップに進みます。

回転軸の検出

(据え付け型の赤道儀などでPoleMasterを取り付けっぱなしにしている場合、以前の検出結果を利用して、この段階をスキップすることもできます。)

北極星周辺の明るい星を1つ、ダブルクリックで選択します。正確な極軸合わせのために、回転中心に近すぎない星を選ぶのが理想的です。


画面上に、赤道儀を回転させるよう指示が出ます。このステップで、アプリケーションは赤道儀機械的な回転軸の向きを同定します。赤道儀を回転させている間、選んだ星が分からなくならないよう注目していてください(通常、コントローラの「東」ボタンを押すと、アプリケーションが要求する方向にまわりますが、実験が必要です)。


赤道儀が15度ほど回ったら「回転完了」をクリックし、同じ星を再びダブルクリックします。そしてもう1度同様の操作を繰り返します。赤道儀を回転させるには、ハンドセットコントローラやコンピュータソフト(EQMODやASCOMなど)を用いてください。クランプを緩めて手で回転させてはいけません。クランプを緩めることで回転軸が浮き、大きなずれを引き起こすことがあります。

TOMITAの日本語マニュアルがマズいのはここで、同文書にはクランプを緩めて回していいように書いてありますが、これをやってはダメです。


一連の操作が終わると、選んだ星を通る緑の円が描かれます。この円の中心が、アプリケーションが判断した回転軸です。これが正しいことを確認するため、赤道儀を逆回転させ、選んだ星が元の位置に戻ることを確認します。


星が円に沿って動いたなら「Correct」をクリックします。もし円に沿って動かなかった場合は「リセット」をクリックし、再設定を行います。

極軸の粗調整

北極星を再びダブルクリックし、前記と同じくスケールパターンを周辺の星に合わせます。できたら「完了」をクリックします。


画面には小さな緑の円が現れます。これが北極星のあるべき位置です。赤道儀の方位、高度を調整して北極星と緑の円を合わせてください。できたら「完了」をクリックします。

ここまでで極軸の粗調整は完了です。この時点で5分角程度の極軸設定精度が得られます。


北極星を再びダブルクリックし、前記と同じくスケールパターンを周辺の星に合わせます。できたら「完了」をクリックします。

極軸の精密調整

「モニター開始」をクリックします。小さな緑の円と小さな赤い円とを重ねあわせたら、精密な極軸設定の完了です。

終わったら「調整を完了」を、やり直す場合は“Restart”をクリックします。


なお、このとき緑色の各ボックスに星が1つずつ入っていなくてはなりません。もし星が入っていない場合、極軸の位置を決定することができず、緑の円はランダムに飛び回るでしょう。

こうしたことがあるため、PoleMaster使用時は赤道儀を恒星時運転しておくことが推奨されています。赤道儀が止まっていると、日周運動で星がボックスから出てしまいかねません。


モニターを開始すると、天体を導入したりして赤道儀を駆動させない限り、ソフトウェアはフレームごとに極軸の位置を計算し続けます。設置した赤道儀が何かのアクシデントで駆動して極軸位置を見失った場合、赤道儀を再度駆動して2つの星を緑のボックスの中に入れなおすことで復帰できます。極軸の位置が再計算され、極軸の再調整が可能になります。


天体を導入した後は、2つの星はボックス内から出てしまいますが、最新バージョンでは手動で2つのボックスを回転させることができます(「ツール」→「手動調整」を使用します)



以下、FAQが続きますが、これについてはこちらのエントリをご覧ください。