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CP+ 2023


前回のリアル開催から実に3年、コロナ禍を乗り越えて、CP+がパシフィコ横浜で今週末まで開催されています。


リアル開催でないと聞けない情報もありますし、実に久々なので楽しみ……というわけで開催初日、ちょうど祝日なので行ってきました。例年通り、天文関連製品中心のレポートです。

ビクセン

今年のビクセンは比較的こじんまりしたブース。新製品の数的にも控えめです。


その中でも最大の目玉はVSD90SS。これまでいくつかの場所で試作品が展示されてきましたが、満を持しての登場です。価格は税込682000円(税抜620000円)とVSD100F3.8の登場時と同額ですが、昨今の物価高騰に加え、後述のようにレンズ材を奢っているので仕方がないところかと思います。個人的には予想の範囲内です。


スペックとしては口径90mm、焦点距離495mm、F5.5の5枚玉SD屈折ということになります。当然のことながら、レンズを支える錫箔などは皆無。コーティング等も上質です。


光路図はこんな感じ。ほぼ同口径のSDレンズ(黄色)2枚とEDレンズ(水色)1枚を含んだ光学系です。VSD100F3.8と比べると後群のレンズ系が大きくなっているのが特徴で、これにより「星割れ」として知られる、口径食が原因の星像の乱れが起きないようになっています。VSD100F3.8の場合、ピント調節にヘリコイドを使っていた関係もあってレンズ径に制限があり、口径食が避けがたかったのですが、ここが一般的なラック&ピニオンになって径の制限が緩和され、口径食が解消された形です。展示されていた作例を見る限り、たしかに星割れは見られませんでした。


そのラック&ピニオンですが、微動装置などのないごく標準的なものです。がっかりした方も少なくないと思うのですが、実は従来のビクセンの接眼部と違い、ZWOの電動フォーカサーEAFがそのままつく形になっているとのこと。当然ビクセンのピント微動装置「デュアルスピードフォーカサー」も選べるようにしてあり、その上であえて最低限の構成ということらしいです。なるほど、そういうことなら納得ですが……最初からカタログなどで相当きちんとアピールしないと「写真に本気じゃない/理解がない/不真面目」と見られて、イメージ戦略的に大きなマイナスになりそうな気がします。


周辺光量は豊富で、フルサイズ周辺でも95%程度とほとんどフラットが要らないレベル。APS-Cクラスなら本当にフラットが要らなさそうです。


眼視性能も優秀で、ストレールレシオ*1で比較するとAX103Sに次いで社内2番目(96.7%)とのこと。VSD100F3.8は、ペンタックス時代のツチノコPENTAX 100SDUF II)からの「伝統」(?)で特に眼視では像が甘かったですが、そこが解消されています。ただ、その意味で惜しいのが、同社が販売していた超短焦点アイピース「HRシリーズ」が終売になってしまっていること。欲しいマニアには行きわたって売れ行きが鈍くなったと判断されての終売ということだったらしいですが、焦点距離495mmのこの鏡筒には本来ベストマッチ。惜しいことをしました。



ところでこの鏡筒、設計自体はずいぶん前に終わっていて、あとは量産するだけ……という状態だったらしいのですが、思わぬところで足止めを食らっていました。「思わぬところ」というのはSDガラス(S-FPL53)を作っているオハラの工場で、なんとガラスの仕込みを失敗したそうなのです。仕込みは年に1回で、これを失敗すると次は翌年ということになります。ビクセンに限らず、高橋製作所でFSQ-106EDPなどの納期が異常に伸びたりしているのはおそらくこれが原因です*2


で、「次の仕込み」というのはこれからのようなのですが、一方で発売をこれ以上ずるずる伸ばすわけにもいかず、今回「えいやっ!」で発表することになったとのこと。もし万が一、今回も仕込みに失敗したらえらいことになりますし、そもそもあちこちでの価格高騰が響いて今の価格設定だと足が出る危険性すら出てきますが……そんなことにならないよう、祈っておきましょう(^^;



そしてもうひとつ、鏡筒関係の大きな発表としてはSD103SII/SD115SII鏡筒があります。同社の従来のSD鏡筒は、レンズ間隔の維持のために錫箔を挟みこんでいるのですが、これが回折を引き起こして輝星に「ひげ」が生えるのが最大の弱点でした。詳しくは以下の記事をご覧ください。
urbansky.sakura.ne.jp


この問題について、口径の小さなSD81系列はSD81SIIで支えが錫箔からリングに変更されて解消したのですが、SD103S(ED103S)やSD115S(SD103S)は後回しになっていました。しかし、ようやく径の大きなリングの量産方法にめどがついたということで、今回発表となりました。


レンズを覗き込んでみると、たしかに光路上に障害となるようなものは一切ありません。


発売時期は夏以降とのこと。希望小売価格は税込でそれぞれ264000円、368500円。実売価格だと約15%引きの224400円、313200円あたりになるでしょうか?また、発売後にはSD81S(ED81S)と同じく、既存鏡筒を改造するキャンペーンを行う予定があるとのことなので、ED103Sユーザーとしては楽しみに待ちたいと思います。


本機のような2枚玉鏡筒は、写真撮影全盛の最近、人気が今一つのように感じられますが、比較的安価、軽量、温度順応が速いなど利点も数多くあります。写真性能も、優秀な補正レンズを使えば相応のものが出ます。中華鏡筒がレンズ枚数面で恐竜的進化を遂げているように見える今こそ、気軽に使えるこの手の鏡筒はもっと見直されてもいいのじゃないかと思います。


このほか目に付いた新製品としては暗視野ファインダーII 7倍50mmがあります。これは矢印のところが31.7mmスリーブになっていて、ここにそのままCMOSカメラなどを装着することが可能です。焦点距離は200mmとのことなので、ガイド鏡としては十分ですし、電視観望にも最適かと思います*3。なお、通常のアイピースは、ここに差し込んでもピントが出ません。構造からすると、ピントを出すためには31.7mmの延長筒が必要になるかと思います。


この暗視野ファインダーII 7倍50mmは、新鏡筒のSD103SII/SD115SIIには標準で付属します。望遠鏡を買えばガイド鏡までのオールインワンシステムが手に入るわけで、簡便さという意味でメリットは少なくないと思います。


ビクセン規格とアルカスイス互換*4のアリガタが「2階建て」になっているデュアルスライドバー。両対応ののアダプターというのは他社からも出ていますが、このスライドバーの場合、裏返すことなく両者に対応できるのが特徴で、使い勝手は良さそうです。

しかし、新製品にしてはどこかでみたことあるような……と思ったら、以前ビクセンマーケティングクラウドファンディングで資金を集めて作ったSD60SSに採用されていたのと基本構造は一緒ですね。重いモノをアルカスイス側で留めようとする初心者が出かねないことを心配していましたが……こればかりは注意書きで対応するしかないでしょう。


地味なところではレンズヒーター360IV。巻きつけるときにレンズに触れないで済むようベロ(写真で手前に伸びている白い部分)がついています。実際にカメラマンからのリクエストを聞くなどして作ったとのことで、実際のフィールドでの使い勝手が気になるところです。



なお、今回ワイヤレスユニットについても話を聞くことができたのですが、頻繁に接続が切れることがある件については十分に認識しているとのこと。一応、ビクセンの方でも世代も様々な多種類のスマホを使って接続試験をやっているそうなのですが、「3階でつながったものが1階で繋がらない」、「昼つながったものが夜つながらない」など不安定な挙動が発生しているそうです*5。そこで、近々アップデートで通信方式を変えるそうです*6。これで多分症状が改善されるはず……されるといいなぁ。


とにかく「遠征に行って使おうとしたら繋がらない」などというのは最悪 of 最悪なので、一刻も早く改善してもらいたいところです。


それから、アップデートと言えばワイヤレスユニットをAPマウントに対応させる作業も進んでいて、こちらも夏頃には出そうです。まぁ、実のところ、動くか動かないかで言えば今でもAPマウントを制御することはできなくないそうなのですが、1軸モーターのモデルもある上、初心者に「ワイヤレスユニットさえあれば(1軸モーター or モーターなしでも)自動導入化できる」と誤解を招かないよう*7、アプリの作りこみ含め、正式対応には多少時間がかかるようです。


サイトロン

飛ぶ鳥を落とす……どころか、飛ぶ鳥を落として羽根むしって焼いて食べちゃうくらいの勢いのサイトロン。中華系企業の伸びに完全に乗った感じです。


目立っていたのはキラキラ輝く鏡筒たち。SharpstarやAskarブランドの鏡筒がずらりと並んでいます。いずれも嘉興鋭星光学儀器有限公司の製品ですが、非常にコストパフォーマンスのよい製品ばかりです。


棚の上段、一番手前にあるグレーの鏡筒は、先日発表になったばかりのSharpstar Z4。口径100mm、焦点距離550mm、F5.5の6枚玉(!)屈折です。スペックだけ見ると、上で書いたビクセンのVSD90SSと丸カブリにも見えるのですが、こちらはイメージサークルが狭くAPS-Cまでに限られます。価格面では希望小売価格が税込486750円のところ、実売価格が税込389400円なので、光学系の構成も考えれば猛烈に高いわけではないのですが……AskarのFRA500の実売価格が税込317900円なのを思うと、ちょっと考えてしまいます。


というか、SharpstarとAskarはブランドが違うだけで同じ会社なのに、本件に限らずカニバリゼーションが起こりそうなラインナップで、外から見てるとはらはらします(^^;


また、棚の下段中央付近にある小さな鏡筒は、正式発表間近のFMA180 Pro。従来品のFMA180から光学系が改良されているそうですが、その実力はどの程度のものでしょうか……?


同じく下段の一番手前に黒と緑の鏡筒が見えますが、こちらは見覚えのある方も多いはず。以前、天リフさんでレビューがされていたFounder Opticsの製品です。
reflexions.jp
reflexions.jp


以前はスタークラウドなどでしか取り扱いがなかったのですが、いよいよサイトロンで取り扱いを始めるようです。性能については上のレビューなどを参考にしていただきたいのですが、素性は悪くなさそうなのであとは価格次第でしょうか。知名度ではどうしても一歩劣るので、うまいきっかけがあるといいのですけど……。


その隣にはPlayer Oneの製品群が。中央には国内発売間近のPoseidon-MPoseidon-Cが鎮座しています。APS-CサイズのイメージセンサーであるIMX571搭載製品で、ZWOのASI2600MM Pro, ASI2600MC Proと直接競合することになります。実性能やコスパで明確なメリットを出せるでしょうか……?


4月発売予定のSJ-M経緯台。以前から情報はちょいちょい出ていましたが、実際に触って見るとなかなかしっかりしています。


そしてついにはSWATと合体させた試作品まで(笑) SWATのPEC*8技術とSJ-Mの回転機構を組み合わせたものですが、中望遠で十分に実用になる精度ということ。なんと本年度中に製品化する予定もあるようです。コンパクトなので、旅行などには向きそうです。


海外では去年から情報の出ていたAZ-GTixマウント。AZ-GTiの強化版のような位置づけですが、その分重量なども増しているので、国内でどこまで受けるか……。とはいえ、大口径のシュミカセを運用したいという人もいるハズなので、十分目はあると思います。


こちらは逆に、AZ-GTiよりもワンクラス下のACUTER OPTICSのTRAVERSEマウント。おそらくこれと同じもの。
www.galuxe.com.tw

中身自体はAZ-GTeみたいなもので、実際SynScanで制御できてしまうのですが……現在専用アプリを開発中とのことです。


赤道儀で展示されていたのは2つ。1つはSharpstarのMark III赤道儀。最近流行りの波動歯車装置採用の赤道儀ですが、展示されていたものは制御に「マチナカリモート天文台」のAlThiba PROを採用したもの。氏のお話によれば、波動歯車装置採用の赤道儀は、やはり一般的なウォームギア採用の赤道儀とはかなり挙動が違うらしく、PECに全幅の信頼は置けないとのこと*9。反応性の良さに期待して、オートガイド前提で運用するのが良さそうです。


こちらはSky-WatcherのCQ350 PRO赤道儀とAskarの151PHQ鏡筒。鏡筒の方は今年の正月に存在が明かされたもので、世界にまだ数本しかない貴重品。正式発表前ですが、実物を見るととんでもない大きさです。おそらくF値は7で、だとすると焦点距離は1057mmということになります。


そしてCQ350 PRO。こちらも長らく噂になっていた*10赤道儀です。iOptronのパクリものによく似た*11センターバランス赤道儀で、後発だけに各種機能がきれいに良くまとまっています。剛性も確かなもので、構造上子午線越えこそできないものの、重量級機材を運用する方には要注目かと思います。





……あ、赤道儀の展示、もう一つあったわ(笑)



さて、もうひとつ要注目なのはスターエンハンサー。色素系の光害カットフィルター*12にソフトフィルターの効果を持たせたフィルターです。星景写真で、星の存在を強調したり、星の色を表現するのにソフトフィルターは不可欠ですが、いままでは光害カットフィルターとソフトフィルターを2枚重ねする必要があり、面倒な上にゴースト発生の危険もありました。しかし、これを使えば1枚で済むのでそのメリットは大きいです。


これについてはちょっとした裏話があるのですが……それはまた後ほど。


このほか、電視観望専用機のVAONIS VESPERA、先日のZTF彗星の接近で注目を集めた大型双眼鏡コメットスキャンシリーズなどが展示されていました。


ボーグ

CP+の出展企業の一覧を見て「今年はボーグは出展しないのか……」と残念に思っていたのですが、嬉しい誤算!なんとケンコー・トキナーのブースの一部を間借りして出展していました。最低限、生存が確認できたので、まずは一安心です。


製品開発も進めているようで、一番目立つところに展示されていたのは参考出品扱いの125FL SPカーボン鏡筒セットです。


この鏡筒の特徴は使われているカーボンで、スーパーレジン工業が開発した「Kaleidφ(カレイド)」というパイプが使われています。詳しくは同社のサイトを参照してほしいのですが、確かに驚くべき軽さでまるで紙管のよう。それでいて強度は非常に高く、凹んだり歪んだりという危険性は全く感じません。結果として、この鏡筒も口径125mmとはとても信じられない軽さです(たしか4kg程度だったかと思います)。本気でモックアップかと思いました。


もっとも、パイプ自体の価格は相応に高いとのことなので、このまま商品化されるとただでさえ高いカーボン鏡筒が、さらにとんでもない値段になってしまいそうです。しかし一方で、軽さのメリットは大きい鏡筒ほど出るので、バランスが悩ましいところです。


ところで、上の写真で125FLの後ろにちょこっと写っているのは50FLII-HEXA 望遠レンズセット。年内の発売を予定している製品で、対物レンズはかつて発売していた50FLの復刻版です。六角柱の鏡筒がユニークで目を引きますが……そこはかとなく万華鏡っぽいですね(笑) ただ、これだと他のパーツを組み込むような使い方はあまり合わないような……。特に、ヘリコイドなどを中間に入れたりすると、違和感がすごそうです(^^;


なお、展示機の鏡筒バンドは3Dプリンタで印刷したもの。鏡筒が軽いので、それでも十分実用になるのでしょう。


こちらは72FL 望遠レンズセット。現行の72FL 望遠レンズセットCHを60φ鏡筒システムに仕立て直したものと捉えればいいでしょうか。これならレンズが小さいデザイン上のアンバランス感も解消されますし、価格の低下も見込めます。


ちょっとチャレンジングなのが、こちらの55FL/36ED 電視観望用セット。対物レンズと延長筒、接眼ヘリコイド、三脚座という最低限の構成で、電視観望にそのまま使えるのみならず、これからボーグのシステムを導入する際のベースモデルとしても利用できるというものです。


対物レンズの性能は元から折り紙付きなので、うまく運べば……というところですが、本気で行くならSky-WatcherのEVOGUIDE 50ED IIよろしく、オプションでいいので小さなフラットナーくらいはあった方がいいかもしれません。


ちなみに、36EDの鏡筒はかつて販売していたコ・ボーグで使われていたのと同様のM42規格のもの。コ・ボーグは、鏡筒の細さが撮影用鏡筒としては不格好すぎて嫌われた面があったようですが、こういう方向ならコンパクトという面で生きるかもしれません。


それにしても、ビクセンにしてもボーグにしても、ようやく電視観望に目が向いてきた感じですね。とはいえ、補正レンズ系は後回し。まだまだ市場の具合を瀬踏みしている感が強いですが……。


ブースの裏手にはケンコーとボーグのコラボ商品として、MOEBIUS(メビウスというシリーズを展開。その第1弾としてアクロマート屈折経緯台を展示していました。鏡筒は口径55mm、焦点距離600mmという無理のない設計。ボーグと同様、60φ鏡筒システムを採用しているため、ボーグの各種パーツでカスタマイズできるのが売りです。


ファインダーは初心者でも扱いやすい覗き穴式。ピント調節機構はヘリコイドを採用しています。天頂プリズムと20mmのアイピースが付属します。


経緯台は片腕フォークのフリーストップ式。三脚はステンレス製の2段で重量3.1kgとそこそこしっかりしており、パッケージングとしては悪くなさそうに思えます。ボーグのシステムで遊べることも考えると、大人の初心者向けでしょうか。


しかし難点はやはり価格で、希望小売価格が税別120000円。まぁ、口径54mm、焦点距離300mmのアクロマート「BORG54天体鏡筒セット」が税別106000円なのを考えれば無理もない価格ですが……競合製品を考えるとそうそう楽な展開にはならなさそうな気はします。


ともあれ、ボーグが健在なのは本当にほっとしました。ただ、ウェブサイトにしろSNSにしろ、情報発信が文字通り「死んでいる」のは確かなので、もう少し頑張って元気のある所を見せてほしいところです。ましてや「組み立て式」という、マニア以外には一見分かりにくいところに特徴がある特殊な製品なので、理解を促すためにも不断のアピールは必須かと思います。


ケンコー・トキナー

一方、「母屋」にあたるケンコー・トキナーのブースは、傘下に多数のブランドを抱えているためかなりの広さです。


ここに並んでいる望遠鏡は、大半がSky-WatcherからのOEM品である従来品で、目新しいものはほとんどありません。


ミードは初心者向け望遠鏡の新製品を2つほど。右が口径70mm、焦点距離700mmのアクロマート屈折&経緯台AZM-70(税込19800円)、左が口径127mm、焦点距離1000mmのニュートン反射&赤道儀EQM-127(税込44800円)です。


いずれも典型的な初心者向けのたたずまいで、良くも悪くも特筆すべき点はない感じ。海外では、ミードは相変わらずACF光学系や高性能屈折望遠鏡を手がけていたりしてそれなりに存在感がある*13のですが、日本に入ってくる製品については、ケンコーの方針なのか今一つパッとしません。日本市場でも頑張ってほしいのですけどね……。


天文関連ではこのほか、昨年発表したスカイメモSWなどを展示していました。


そして今回、ある意味最も注目すべき展示がこれ。


スターリーナイト プロソフトンです。


色素系の光害カットフィルター「スターリーナイト」にソフトフィルター「PRO1D プロソフトン クリア(W)」の効果を持たせたもの……って、似たような話、どこかで聞きましたね!?


つまりケンコー・トキナーサイトロンは、ほぼ同じタイミングで同じような効果を持つフィルターを独自に開発してたわけです*14。トレンドって怖い……。


しかも傑作なのは、サイトロンケンコー・トキナーのグループ会社である点。両社の担当者も、お互いのプレスリリースや展示物を見て頭を抱えたに違いありません(^^;


ちなみに、フライヤーによればスターリーナイト プロソフトンは「特許出願中」(特願2023-18814)とのことですが、あくまで「出願」なので現時点ではケンコーに何の権利も発生していません。同時かつ独立に同じようなフィルターが出てきたことを考えると、たとえ特許を成立させるために審査請求をしても「同業者なら容易に想到しうる」として拒絶されるオチになる可能性が高そうに思います。

*1:点光源の像がどのくらい収束するかを表す数字。基本的には、大きいほど結像性能が良い。

*2:在庫はカメラメーカーなどの大口顧客に回ってしまい、天体望遠鏡メーカーみたいな中小にはなかなか……。

*3:もっとも、Sky-WatcherのEVOGUIDE 50ED IIと違ってアクロマートですし、補正レンズ系もないので、画質は「それなり」だとは思いますが。

*4:商標の問題などもあるのか、ビクセンでは「薄型アタッチメントプレート規格」と称していますが、実質、アルカスイス互換と捉えていいと思います。

*5:そんなものを見切り発車で発売するな!というのが率直な感想ではありますが。

*6:変更と言っても、IEEE 802.11b/g/nに準拠する以上、できるのはせいぜいパラメータの変更やオプションのオン・オフくらいだと思いますが。

*7:そんな馬鹿な、と思うかもしれませんが、ビクセンは良くも悪くも客層が広いので……。

*8:ピリオディックエラー補正。ギアの回転によって生じる周期的な回転ムラを補正する機能

*9:波動歯車はその仕組み上、ギアの弾性が回転に影響を及ぼしますが、逆にその弾性のせいで荷重のかかり方等でエラーの出方が不規則に変わり、PECだけでは完全に補正できないそうです。

*10:hpn.hatenablog.com ただし、当時からは細部の仕様が変わっています。

*11:ご丁寧に、クラッチの構造までよく似ています。

*12:光害カットフィルターには、光の干渉を利用して光害の波長を鋭くカットする「干渉系」と、ガラスに含ませる色素を工夫して光害を低減する「色素系」とがあります。性能的には一般に干渉系の方が高いのですが、斜めからの光に対して透過波長が変化する……つまり画角が広いと使えないという弱点があるため、このフィルターでは色素系を採用したと思われます。

*13:それでも往時に比べればずいぶん地位が低下しました。

*14:なお、特性については、それぞれ両者全く同じではないはず……とのこと。