先の記事でも少し触れましたが、ビクセンでは今、「103S /115S鏡筒シリーズ スペーサー交換キャンペーン」というのをやっています。
www.vixen.co.jp
ビクセンの2枚玉SD屈折鏡筒は、手頃な価格ながらも、SDフラットナーHDやレデューサーHDと組み合わせれば撮影目的にも十分な性能を発揮する優秀な鏡筒です。2枚玉なので温度順応も早いですし、使い勝手はいいのですが……大きな泣き所が1つ。
それが2枚玉のレンズの間に挟まる「錫箔」の問題です。
古典的な屈折鏡筒ではしばしばあったことですが、2枚の対物レンズを貼り合わせる際、レンズ間隔を調整するためのスペーサーとして、錫箔をレンズ外周付近に挟み込むことはよく行われていました。ところが、この錫箔が光路上に飛び出しているため、写真を撮るとその影響が回折像となって現れます。*1
同じ回折像でも、反射望遠鏡なら4本ないし6本のスパイクとなるものが多く「味」とも言えるのですが、錫箔による回折像は輝星の周りに三ツ矢状の影が生じるもので、かなり見苦しいというのが本音。ここだけが本当に泣き所でした。
ところが2021年10月、リング状スペーサーを導入することでこの問題を解決した「SD81SII鏡筒」が発売。同時に、従来製品(SD81S、ED81SII、ED81S鏡筒)を対象にした「81S鏡筒シリーズ スペーサー交換キャンペーン」も行われました。
他社製品での「当たり前」が実現したという意味で「ようやく」という印象でしたが、対象はあくまで81Sシリーズのみで、103Sや115Sは依然として置き去りの状態でした。
この状況が変わったのが今年。CP+において、スペーサーを錫箔からリングに変更した「SD103SII/SD115SII鏡筒」が発表されたのです。*2
hpn.hatenablog.com
これらの発売に併せ、冒頭のキャンペーンが実施されたというわけです。
スペーサー交換の効果
というわけで、このキャンペーンに早々に申し込んでみました。
手順は簡単で、キャンペーンサイトから修理依頼表を印刷して必要事項を記入したのち、鏡筒とともに梱包してビクセンに送付するだけ。なお、このとき「デュアルスピードフォーカサー」などのオプション品などは外しておいた方が無難です。
箱については、元箱が残っていれば簡単ですが、ない場合は以下のページのように、複数の段ボールを組み合わせることになるでしょう。
メンテ返送時の鏡筒梱包方法(屈折)
http://enyoou.g2.xrea.com/mainte/konpou/konpou.html
キャンペーン開始は2023年6月20日なのでそれに合わせて発送し、受け付けられたのが21日。キャンペーンサイトによれば標準納期は約20営業日ですが、「キャンペーン開始直後と終了直前は、ご依頼が多くなり混み合うことが予想され、通常の修理納期よりお時間をいただく場合があります」とのことなので、「8月くらいに戻ってくれば上出来かな」と思っていたのですが……
なんと7月19日には早くも修理完了の連絡が。ジャスト20営業日しかかかっておらず、驚きの早さです。かかった費用はリング交換&オーバーホール費用の19800円(税込)に送料がプラスされての20570円(税込)。仕事が早い上に価格も良心的なものでした。
7月21日には鏡筒が返送されてきました。
対物レンズを覗きこんでみると、あの目障りな錫箔(写真上)がきれいになくなっています。これでようやく、何の憂いもなく撮影に集中できるというものです。
そこで翌22日後日、早速星像の確認だけ行ってみました。*3
左が交換前、右が交換後ですが、その効果は一目瞭然です*4。【2023年7月25日追記】同条件で撮影しなおしたので、写真を差し替えました。これなら輝星が写野中に合っても見苦しいことにならずに済みそうです。
*1:ここで生じる回折像は暗いので、眼視ではあまり問題になりません。逆に言うと、眼視メインの時代の設計をいまだに引きずっているということでもあります。
*2:大口径かつ厚みが均一なスペーサーを量産するのに苦労した模様。
*3:ついでにM27を撮ろうと思っていたけど、雲が出てきて断念。どうも機材を出したときに限って雲の出る割合が高いような……。
*4:星像の大きさなど写りの違いは、撮影機材(EOS KissX5 or ASI2600MC Pro)や感度、使用フィルター(LPS-P2 or L-Ultimate)の違いによるもの。交換後の方が星像がぼってりしているように見えますが、これは超高感度での撮影により星像が飽和したせいです。