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ビクセンの新製品

昨日、ビクセンオンラインストアTwitterアカウントから、突然、意味深なツイートが流れてきました。



曰く、オンラインストア限定の新製品だとか。いわゆるティザー広告で、細かいところは現時点で不明な部分も多いのですが、分かる範囲で考察してみましょう。


機種名とスペック


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まず機種名ですが、これは動画をよく見れば分かります。


おそらく「SD60SS」で間違いないでしょう。同社の命名規則から考えれば、口径60mmのSDアポクロマートということでよさそうです。また、スペックについては機種名の下に「D=60mm f=300mm」とあるように見えます。口径60mm、焦点距離300mmならF5で、そう無茶なスペックというわけでもありません。


これに近いスペックの鏡筒というと、ビクセンには既にFL55SS(口径55mm, 焦点距離300mm(F5.5))があります。ただ、こちらはフローライトを奢っているだけに、実売価格で10万円以上とそれなりに高額です。本機は機種名にSDと付いているだけにSDガラスを使っていると思われ、その分、低価格化が期待できます。位置づけとしてはFL55SSの廉価版といったところでしょうか。


以前もまとめましたが、「口径60mm前後、F5前後」というこのクラスは現在、最激戦区といってもいい状況。ここに価格競争力のある鏡筒を投入できれば、ある程度のインパクトがあるのではないかと思います。
hpn.hatenablog.com


なお、これまでのビクセンの「SDシリーズ」はいずれも2枚玉で、おそらくこの鏡筒もそれに準ずるのではないかと思います。FL55SSもそうですが、2枚玉だと収差補正に限界があるので、実際にはフラットナーやレデューサーの使用がほぼ必須になるのではないかと思います*1


鏡筒の固定方法


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鏡筒の固定は、FL55SSとは異なり専用の鏡筒バンドで行うようです。見た感じ、結構頑強そうなバンドで、固定力に不安はなさそうです。


ただ、実用面でいうと、鏡筒バンド上面にネジ穴の類が一切見えないのが少々気になります。もしこの構造が本当だと、ガイド鏡やASIAIRのようなアクセサリを固定するのに苦労しそうです。


アリガタの構造


バンドからはスペーサー(?)を介してアリガタにつながる形。形状から見て、アリガタはビクセン規格でしょう。


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もっとも、アリガタの下辺を見ると、縁が輝いていて、なにやら段差があるようにも見えます。ひょっとするとですが、アルカスイス規格との「2階建て」になっている可能性も否定できません。もしそうなってたらいいなぁ……。


ファインダー取付部


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この鏡筒には、FL55SSとは異なり、ファインダー取付用のアリミゾが標準装備されているようです。焦点距離が短いので、ファインダー用と考えると必ずしも必要ではありませんが、ガイド鏡の取り付けなどにも使えますし、あって困るものでもありません。


アリミゾは、従来のビクセン鏡筒では見かけない、ネジ2本で留める形式。中華製鏡筒でしばしば見かける意匠です。


フォーカサー


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従来のビクセン鏡筒とは明らかに異なる意匠です。しかし、どこかで見たことのあるデザイン……と思ったら、ED80Sfがこんな感じでした。
www.vixen.co.jp


よく見ると、ノブの奥に小さなネジ頭のようなものが見えるので、ED80Sfと同じくクレイフォード式の可能性もあります。しかし、もしED80Sfのものと同等だとすると、いくらコストが下がったとしてもガッカリです。というのも、このフォーカサー自体の精度や強度が今一つなのに加え、ピント微動装置の類が取り付けられないためです。


デジタル写真全盛になって以降、ピント合わせの重要性は格段に上がりました。特にF値の明るい鏡筒では、ピント合わせに十数μmの精度が要求されるのもザラです*2。こんな精度は微動装置なしではとても達成できません。F値の暗い望遠鏡で眼視していた昔ならいざ知らず、現代の望遠鏡……特に写真用途に振った望遠鏡であれば必須装備だと思うのですが……。


願わくば、予想がいい方向に外れてほしいところですが……さて?

*1:可能性としてはRedCatみたいなペッツバール光学系の可能性もありますが……さてどうでしょう?

*2:https://hpn.hatenablog.com/entry/20170916/1505566523

NAS新調

現在、自分のPCに保存されている各種データについては、8TB HDDでRAID1を組んだNASにバックアップしています。二重化しているうえに、一方はRAIDアレイということでそこそこ安心ではあるのですが……夏前ぐらいからNASの残容量がなかなかヤバいことに。


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むしろ、こんな状態でよくぞ今まで正常に動いていたというか……。気づいたのは7月頭。その後、不要なファイルをちょこちょこ削除したり、惑星の動画データを圧縮したり*1とデータ量の削減に努めましたが、ほんの数パーセントしか残容量が増えません。


考えてみれば、HDDを8TBのものに更新したのが4年以上前、NAS本体に至っては7年も前のことになります。PC類の製品寿命がおおむね5年程度ということを考えると、そろそろNASごと更新してもいい頃合いでしょう。
hpn.hatenablog.com
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現在使っているNASはQNAPのTS-269 Pro。中小企業向けという位置づけの高性能サーバですが、OSのバージョンが上がるに従い、メモリ容量やパフォーマンスが不足気味だったのも確かです*2
www.qnap.com


また、HDDについては現在決して安くはありませんが、この価格は半導体の供給不足に由来するもので、一朝一夕に解消するとは思えません。
www.nikkei.com


というわけで、諦めてNASとHDDを合わせて新調することにしました。


NASについては気分を変えてSynologyやAsustorも考えたのですが、使い慣れているということでQNAPの製品で行くことに。ベイ数については、4ベイだとランニングコストが馬鹿にならないので2ベイとしました。そしてCPUはパフォーマンスを考えるとやはりIntel系列……ということで製品ラインナップを見ると、TS-251DとTS-253Dとの比較になります。
www.qnap.com
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両者の価格差は8000円程度で迷うところですが……

  • TS-251DのCPUが2コア2スレッドのCeleron J4025(2.0GHz, ブースト時2.9GHz)なのに対し、TS-253Dは4コア4スレッドのCeleron J4125(2.0GHz, ブースト時2.7GHz)*3
  • TS-251Dの標準搭載メモリが2GB*4なのに対し、TS-253Dは4GB。
  • TS-251Dのイーサネットポートが1GbEなのに対し、TS-253Dは2.5GbE。

と、それなりに違いは大きかったため、今後数年以上使い続けることも考え、TS-253Dを購入することとしました。


HDDは、価格と容量のバランスから12TBクラスで。とはいえ、相変わらず価格高騰、品薄状態なのは確かで、WesternDigitalのWD Red Plusシリーズなど4万円台後半の値が付いています。さすがにここまで行くと手を出しづらいです。


そんな中、東芝NAS用HDD「MNシリーズ」は12TBでも3万円を切っていてお買い得な感じ。今まで東芝の3.5インチHDDは買ったことがありませんが、製造技術はWesternDigitalから譲り受けたものですし、おそらく信頼してよいでしょう。
pc.watch.impress.co.jp

というわけで、MN07ACA12T/JPを2台購入。


結局、NASと合わせて11万円近い出費になりました。決して安くはありませんが、安心料と考えれば仕方のないところでしょう。


しかし、同じ11万円でも、ZWOのASI533MC Proが117700円、とかだったらちっとも高く感じないのに……不思議!(笑)


TS-253D簡易レビュー

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注文した翌々日、早速ブツが届きましたので、簡単なレビューを。


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内容物は、本体とACアダプタ、HDD固定用のビス、LANケーブル×2、説明書類と、ごく一般的なものです。余計なものが一切入っていないあたり、いかにもQNAPらしいところです。本体の外装はほぼプラスチック製で、旧製品と比べると正直安っぽい感じが否めません。性能的には問題ないのでしょうけど、製品の「格」が落ちた感じがしてちょっと残念です。


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本体デザインは、TS-269 Pro(写真右)をはじめとする旧製品から大きく変わっています。一番大きな違いはHDDトレイ周りの仕様で、旧製品では鍵付きのトレイに固定する形だったのに対し、TS-253Dではプラスチック製のスライドドアの内側に同じくプラスチック製のトレイが施錠なしで収まる形になっています。


盗難対策という面でみれば、企業ユースだったとしてもNASごと持っていかれれば終わりですし、トレイごとの鍵の必要性はあまり感じない……どころかパーソナルユースだと明らかに邪魔なだけなので、この変更は理解できます。ただ、上でも書いたように、どうにも安っぽく感じられてしまうのは否定できないところです。


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なお、この前面のスライドドアですが、最初の段階では、向かって左側側面にあるスライドスイッチによってロックがかかっています。最初、これに気付かずに無理やりスライドドアを開けようとして、危うくぶっ壊しかけたので要注意です(^^;


本体サイズはTS-269 Proの150×102×216mm(高さ・幅・奥行)に対し、168×105×226mmと微増。一方、重量は金属部品が減ったせいもあり、1.74kgから1.55kgへと200gも軽くなっています。この軽さも安っぽく感じる原因かもしれません。


本体の前面には電源スイッチと各種インジケータ、USB3.2 Gen1ポート、そしてワンタッチコピーボタンがあります。ワンタッチコピーボタンは、USB3.2 Gen1ポートに接続したUSBデバイスからNASに、あるいはNASからUSBデバイスにデータバックアップをコピーできるというものですが、あまり使うことはないでしょう。


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背面にはHDMIポート、2.5GbEポート×2、USB3.2 Gen1ポート、USB2.0ポート×3が向かって左側に集中して収まっています。また、背面上部にはPCIeのカバーが見えています。ファンサイズはTS-269 Proと同等のようです。


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前述のとおり、HDDトレイは旧モデルの金属製のものからプラスチック製のものに変わっています。材質の違いもさることながら、3.5インチHDDの固定方法も変更になっていて、旧モデルの物がHDD底面のねじ穴を利用してビスで留めるのに対し、新しいものでは側面のねじ穴にプラスチック製の固定具をはめて留めるようになっています。


この変更は、最近の大容量HDDで主流の「ヘリウム充填型HDD」を使う上で重要です。


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というのも、ヘリウム充填型HDDでは、おそらく構造上の制約により底面のねじ穴の位置が変更になっているからです。例えば上の写真、左側は従来タイプのWD Red 4TB(WD40EFRX)で、SATA端子近くと本体中央付近にねじ穴が見えますが、ヘリウム充填型のWD Red 8TB(WD80EFZX)では中央付近のねじ穴がずっと前の方に移動しています。この構造は、今回導入した東芝のMN07ACA12T/JPでも同様です。


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このため、今まではHDDを2か所のねじ穴でのみ留めざるをえませんでした。幸い、ねじが緩むようなことはありませんでしたが、精神衛生上よくないのは確かです。


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一方、プラスチック製トレイの方は、上の写真のように側面の固定具を分離できて、HDDをトレイに乗せたのちに固定具をパチンとはめれば、しっかり固定されます(側面のねじ穴の位置は変更ないので)。工具もいらないので作業は簡単です。なお、トレイにはヘリウム充填型HDDに対応した穴も空いているので、底面からのねじ留めも可能です。


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TS-269 ProからTS-253Dの変更で一番驚いたのはACアダプタの仕様。TS-269 Pro(下)は90Wの大きなアダプタでしたが、TS-253D(上)では65Wのものに。サイズがずいぶん小さくなって扱いやすくなりました。NAS自体の消費電力も相応に小さくなっているはずで、24時間365日稼働する装置であることを考えると、インパクトは決して小さくなさそうな気がします。



次に実際に使用した感じですが、セットアップについては付属の「QNAP簡単セットアップガイド」を見ながら行えば迷うことはあまりないかと思います。フルカラーで読みやすいですし、比較的よくできた冊子だと思います。ちょっとした落とし穴もあったのですが……その件は後述。


今回は「静的ボリューム」でRAID1を構成しましたが、RAIDアレイ構築直後のパフォーマンスをCrystalDiskMarkで簡単に計測してみるとこんな感じ。

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PC⇔NAS間はハブを介して1GbEで接続されていますが、シーケンシャルリード/ライトの結果を見ると、オーバーヘッドを勘案すればほぼ規格上限に達していることが分かります(1Gbit/s=125MB/s)。


せっかくNASの方が2.5GbEに対応していますし、HDDの転送速度も242MiB/s*5(≒254MB/s)に達するとのことなので、、PCに2.5GbEカードを装着したり、2.5GbE対応ハブを導入してみてもいいのかもしれません。ただ、ランダムアクセスでの恩恵はそこまで大きくなさそうですし、インターフェイスとハブとで安くても15000円近くかかってしまうことを考えると、慌てなくてもいいかなという気はします。


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ちなみに、12TB HDD×2で静的ボリュームでRAID1を構成すると、正味の容量は10.71GBとなりました。「12TBのHDD」といっても、HDD製品における容量表示は慣例上「1000byte=1KB」であるのに対し、OS等での容量表示は「1024byte=1KB」*6で計算するので、そもそも実用量は10.91GB程度しかありません*7。ここからRAIDメタデータの保存に約1%、EXT4ファイルシステムメタデータ保存に0.8~1.8%などが差し引かれる*8ので、容量としては妥当なところです。


ファンの音は静かで、HDDの駆動音を除けば気にならないレベル。それでいながら、フル稼働中でもCPUは60℃前後、HDDは40℃前後に保たれているので、冷却に不安はなさそうです。前面のインジケーターランプも消灯や明るさの調節が可能で、寝室に置いてもあまり気にならなさそうです。HDDではなくSSDを使えば、本当に静かな環境が出来上がるでしょう。



一方、東芝のHDD「MN07ACA12T/JP」ですが、駆動音や振動はそれなりの大きさ。低い音ですが、ゴロゴロと響くので、耳障りといえば耳障りです。とはいえ、昨今のHDDの音といえばこんなもののような気もする*9ので、まずまず標準的なレベルではないかと思います。


おまけ:RAID構築の落とし穴


ところで、実際に使い始めようと説明書に従ってRAIDアレイの構築に進んだ時点で、ちょっとしたつまづきが発生しました。問題は「ストレージプール」の取り扱いです。


現在のQNAPのNASには「ストレージプール」という考え方があります。QNAPのサイトを見ると「ストレージプールは物理ハードディスクドライブを統合し、大きなストレージ領域に作成するものであり、それに拡張 RAID 保護を提供します。」という、なんだかよく分からないようなことが書いてありますが、「仮想化技術」の一種と考えれば少し分かりやすいでしょうか?


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ストレージプールを用いてRAID1を構成したイメージ
後述する「シックボリューム」や「シンボリューム」はこのパターン

NASに搭載したHDDやSSDを仮想化してRAIDの容れ物を作ったものが「ストレージプール」で、その上に実際にユーザーがデータを置く「ボリューム」を構築するというイメージになります。ベイ数が少ないとメリットが見えにくく、一見まだるっこしいですが、ディスクの追加などによる領域の拡張などがやりやすくなりますし、「スナップショット」(特定の一時点の状態を写真のように切り取って保存する機能)のような高度な機能も利用できるようになります。


一方、「ボリューム」には「静的ボリューム」、「シックボリューム」、「シンボリューム」の3つの種類があります。


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静的ボリュームでRAID1を構成したイメージ
容量(四角の大きさ)がストレージプールを用いた時より大きくなっているのに注意

「静的ボリューム」は一般に「RAID」と聞いて連想するアレで、仮想化レイヤを挟まずに直接HDDにアクセスします。単純なだけにアクセス性能は最速ですし、容量も最も効率よく利用できますが、あとからボリュームの拡張はできず、スナップショットなどの機能も利用できません。


一方、「シックボリューム」はストレージプールの容量内で自由に好きな容量のボリュームを作れるもの、「シンボリューム」は実際に使用した分だけストレージプールからボリューム容量が都度確保されるものです。それぞれ「固定サイズ」と「可変サイズ」の仮想化HDDに近いでしょうか。今後、大容量ディスクに交換した場合、データをそのままに容量を拡張することが可能ですし、スナップショットが利用できるのも「シックボリューム」と「シンボリューム」だけです。QNAPとしては、機能とパフォーマンスのバランスが取れているという面で、「シックボリューム」を推奨しているようです。


今回、NASを新調するにあたってボリュームをどうするかはずいぶん迷ったのですが、

  • 所詮バックアップ用途なので、たとえ今後大容量HDDの導入が必要になったとしても、RAIDアレイを作り直せば済む。
  • スナップショットをとるために必要なディスク容量が案外大きい(デフォルトでストレージプール容量の20%)上に、実際に必要となる容量はデータの変更され具合によって変動し、事前に見当が付かない。
  • スナップショットはランサムウェア対策などの面で有効と思われるが、所詮は同じストレージプール上にデータがあるので、万が一の事態が起こった場合に復元ができるかどうか不透明。それよりは外付けHDDなどに定期的に重要データのバックアップを取った方が確実。
  • これまで「静的ボリューム」でずっと運用してきて特に困ってない。

といった理由で、「静的ボリューム」で利用することにしました。


ところが、「QNAP簡単セットアップガイド」の記述を見ると、まずストレージプールを作成した上で、「静的ボリューム」、「シックボリューム」、「シンボリューム」のいずれかを選択してボリュームを作成するようになっています。実際の画面構成も、ストレージプール作成後のボリューム作成の段階で、3種を自由に選べるかのように選択肢が提示されます。


しかし上で書いたように、「静的ボリューム」は仮想化レイヤが必要ないので、そもそもストレージプールを作る必要がないのです。フルにディスク容量を使ってストレージプールを作った後に「静的ボリューム」を作ろうとすると、利用可能なディスクが見つからず右往左往することになります。


分かれば単純なことなのですが、実はこのことに気付くのにずいぶんかかりました。おそらく、説明書の記述や画面構成は、3台以上のHDDを積んだシステムにおいて「ストレージプール+シック or シンボリューム」と「静的ボリューム」とを混在させるケースを想定しているのではないかと思いますが、どうにも不親切です。ストレージプールやボリュームといった用語の平易な説明に加え、設定フローの見直しも必要かと思います。

*1:古い動画はすでに圧縮済みでしたが、ここ1~2年分のデータは未圧縮でした。

*2:もちろんメモリ増設は可能ですが、CPUであるAtom D2700が32bit OSにしか対応していないため最大でも3GBに制限されること、対応するメモリモジュールが1Rankのものに限定されて面倒、など厄介な点はいくつかありました。

*3:いずれもGoldmont PlusアーキテクチャのCPUで、プロセスルールは14nm。コードネームはGemini Lake Refresh。

*4:カタログ上は「TS-251D-4G」という4GBメモリ搭載モデルもありますが、通販サイトなどでも見かけたことはなく、入手性はかなり悪そうです。

*5:メビバイト/秒

*6:いわゆるキビバイト(KiB)

*7:HDDで言うところのいわゆる「天使の取り分」ですが、HDDが大容量化するに伴い、天使も随分がめつくなったなぁと思います。

*8:https://www.qnap.com/ja-jp/how-to/faq/article/%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E4%BA%88%E7%B4%84%E6%B8%88%E3%81%BF%E9%A0%98%E5%9F%9F%E3%81%A8%E3%81%AF

*9:今まで使ってきた「WD Red 8TB WD80EFZX」と同じか、少しうるさい程度。

あれから10年も この先10年も

ついうっかり忘れていたのですが、この夏で、天文趣味に復帰してから丸10年になりました。実際に経ってみると、10年などというのは本当にあっという間です。


この10年の間には、機材などの進歩に加え、使っていた観測地が潰れたり、母親が脳内出血で倒れて介護が必要になったりと、公私ともに色々と変化がありました。きっと、この先10年も同様にいろいろと変化があるのでしょうけど、何とかついていきたいと思います。


機材の変遷


hpn.hatenablog.com

初めて天体望遠鏡ビクセン/アトム スーパーミラーR-125S)を購入したのは中学の頃でしたが、大学の研究室に入るとあまりに忙しく、しばらく天文趣味から離脱していました。


ところがそれから十数年後、翌年に金環日食を控えて、やけぼっくいに火が付く形に。久々にカタログを収集したりして、望遠鏡を購入し直したのは2011年8月のこと。実質的に最初の1本目ということで、汎用性などを考えてビクセンのSXD-ED103Sを、拡大撮影カメラアダプターとTリング、月観測時の減光に使うムーングラス、赤道儀駆動用のバッテリー&接続ケーブルと合わせて購入したのが始まりです。


その後、デュアルスピードフォーカサーEOS KissX5(のちに天文改造)、オートガイダー(StarlightXpress Lodestar)、光害カットフィルター(LPS-P2)、レデューサーED(F7.7用)などを徐々に揃えていきました。


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2013年4月には、動作に何かと問題の多かったSXD赤道儀からSXP赤道儀に買い替え。このあたりでタガが外れたのか、同年10月にはEdgeHD800を導入。11月に惑星撮影用としてZWO ASI120MM/MCを購入と軍拡が続きます。


hpn.hatenablog.com

2014年3月にはミニボーグ60EDを購入し、とうとう「BORG沼」に踏み込むことに。2014年秋にペンシルボーグ、2016年冬にミニボーグ45ED II、2017年6月に【6258】BORG55FL+レデューサー7880セットを購入し、現在に至る光学系がおおむね揃うことになりました。


架台については、2017年4月にミザールテックのK型経緯台、2019年5月にSkyWatcherのAZ-GTiを購入したくらい。このほかの大物といえば、2017年10月に購入したZWO ASI290MM/MC、2019年末に購入した冷却CMOSカメラZWO ASI2600MC Proくらいでしょうか。


かけてきた金額としては、ガチ勢の方々に比べればささやかなもののはずですが……それでも合計してみたくはないですね……(滝汗


周辺環境の変化


10年前、自宅前には住宅街の真ん中にしては珍しく広い駐車場があって、撮影はもっぱらそこでやっていたのですが、この土地が2013年春に分割・売却されてしまい、2014年にかけて住宅が次々と建つことになってしまいました。

hpn.hatenablog.com

結果、1.5kmほど離れた公園まで手押し台車で機材一式を運ぶ羽目に。とはいえ、公園内は静かで見晴らしも良好ですし、結果的には良かったような気がします。



一方、環境の変化といえば照明環境の変化が大きいです。以前は光害といえば蛍光灯、水銀灯、ナトリウムランプといった輝線光源がもっぱらでしたが、特に東日本大震災以降、白色LEDが急速に普及した結果、光害の連続スペクトル成分が大きく増えたように思います。


フィルターの方も、光害環境の変化に合わせてワンショットナローバンドフィルターの類が増えてきましたが、これはこれで有効な対象が限定されるので、できれば光害を減らす=無駄な光の拡散を減らす方向で照明が進化してほしいと思います。


影技法、画像処理技法の変化


一番変わったのはここかもしれません(^^;


初めてDSOを撮影したのは、望遠鏡を買って約2か月後の10月末のこと。被写体は定番のオリオン大星雲(M42)でした。

hpn.hatenablog.com

その時の写真がこちら。


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2011年10月29日 ビクセンED103S(D103mm, f795mm) SXD赤道儀
ペンタックスK-7(ISO200) 露出2分×6コマ ステライメージVer.6.5で画像処理

オートガイドなし、光害カットフィルターなしの状態で撮影したものです。


未改造のカメラなので、Hα線由来の赤い色が弱いのは仕方ないのですが、そもそもピントが甘い、周辺減光や光害カブリをごまかすために背景を真っ黒に落とすなど、まさに「初心者あるある」のオンパレードです。


これを今の自分の技術で「お色直し」してみたのがこちら。


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背景は真っ黒に落とさず、星雲は可能な限りあぶり出し。周辺減光もできるだけ補正した結果、消え失せていた「ランニングマン星雲」も浮かび上がり、元画像の酷さの割にはまずまず見られる画像になったかなという感じです。このあたりのテクニックは明らかに向上した部分です*1


そして、同被写体の最新の結果がこちら。


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2020年11月15日, 22日 ミニボーグ60ED+マルチフラットナー 1.08×DG(D60mm, f378mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -20℃, Gain=0, 露出5秒×8コマ+30秒×8コマ+180秒×8コマ+1800秒×8コマ, IDAS LPS-D1使用
ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

機材もカメラも何もかもが違うので、単純に比較するのもアレですが、撮影技術の向上と合わせれば、都心でもこのくらいは行けるぞという……。


ASI2600MC Proの最適撮影条件を詰め切れてない感じもあるので、まだもう少し伸びしろはありそうな気がします。また、せっかく購入したPixInsightについても、ロクに使いこなせていない*2ので研究していきたいところです。


これまで撮影した天体


参考までに、この10年間で撮影してきた天体を一覧にしてみました。まずはメシエ天体から。


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撮影したメシエ天体は全部で61個。ようやく半数を超えましたが、「撮りたいものを撮りたいときに撮る」というスタンスなので、なかなか数が増えません。撮り直しもしばしばやるのでなおさらです。


また、この表では天体の種類別に色分けしてありますが、明らかに球状星団散開星団の数が少ないです。単に撮るだけなら簡単な対象ですが、微光星を写しつつ、かつ星の色を出すのが難しいこと、目に見えない淡い対象をあぶりだす楽しみに乏しいことあたりが、なかなか食指が伸びない原因かと思います。今後、このあたりは積極的に改善していきたいところです。


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次いでカルドウェル天体。この「カルドウェル天体」というのは、イギリスのアマチュア天文学者パトリック・アルフレッド・カルドウェル=ムーア(Sir Patrick Alfred Caldwell-Moore, 1923~2012)が1995年、アメリカの天文雑誌Sky & Telescope誌で発表したもので、アマチュアの小望遠鏡でも観察しやすい109個の天体をリストアップしたものです。このうち、日本本土から観測できるのは80個ほどになります。


こちらはまだまだ穴だらけ。撮影できたのは23個と、ようやく1/4を超えましたが先は長いです。


一覧表をよく見てみると、愛称がついたものを多く撮っていることが分かります。愛称がついたものは、明るいものや形の面白いものが多く、被写体として映えるからでしょう。


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最後はその他の天体。おとめ座銀河団の銀河などを撮影した時に背景に小さく写り込む、いわゆる「粉銀河」の類までカウントしているので、数だけは148個とそれなりに行ってます。とはいえ、逆に言えば都心でもこのくらいの数の天体は写ってくれるわけで、希望のある結果ではあります。



2018年に同様にカウントした際には、メシエ天体が49個、カルドウェル天体が18個でしたから、ここ3年でメシエ天体が+12個、カルドウェル天体が+5個。なにしろ東京都心という悪環境下で撮っているので、露出がたっぷり必要で、一晩に1~2個の天体を撮るのがせいぜいということを考えると、ペースとしてはまずまずという気がします。


とはいえ、せめてメシエ天体くらいはコンプリートしたいところ。上でも書きましたが、どこかで「散開星団祭り」でも開催した方がよさそうですね(笑)

*1:こうしてみると、過去に撮ったものも、改めて処理するとずいぶん良くなるものがまだまだありそうな気がします。

*2:各種パラメータが主に非光害地での撮影に最適化されているようで、デフォルトの設定ではなかなか良い結果になりません。パラメータの意味を理解した上で数値を詰めること、そして超光害地向けのフローを確立するのが非常に大変です。