PHD2の日本語マニュアルを公開しています。こちらからどうぞ。

個人サイト「Starry Urban Sky」もよろしく。

新兵器投入

天体写真を撮るとき、これまでは赤道儀まかせのノータッチガイドで撮影してましたが、ED103Sの直焦点だと焦点距離は795mm。都心で短時間露出に限られるとはいえ、さすがに成功率は決して高くなく、オートガイドの必要性は常々感じていました。で、先日ガイド鏡の並列同架の体制が整ったのを機に、本格的にオートガイダーの選定に入りました。

オートガイダー選定

オートガイダーには、単独で動作可能なスタンドアロン型のものと、制御にPCが必要なものの2種類があります。前者は手軽なのがなによりの利点ですが、選択肢は決して多くはなく、現行品だとCelestronのNexGuideくらいでしょうか。このNexGuideは低価格なのもうれしいところです。

一方のPC制御の方は、当たり前だけどPCが必要になるのが最大の利点にして欠点。画面やボタンなどのユーザーインターフェイスが貧弱になりがちなスタンドアロン型と違って、PCの大きな画面を活用できますし、操作も(制御ソフト次第ですが)分かりやすいです。一方で、屋外にPCを持ち出すことになり、軽快さに欠けるのは否めないところです。選択肢は比較的多く、高感度・高性能なものもありますが、上記のNexGuideに比べると総じて高価です。

さてここで自分の現状を考えてみると、使用予定のガイド鏡は口径60mm、焦点距離540mmのF9とさして明るくなく、また光害がひどいことから、ガイド星探しに苦労するのは目に見えています。となると、オートガイダーに求めるべきは、暗い星像でも捉えることのできる高感度ということになります。

NexGuideの場合、色々調べてみると「口径40〜50mmで6等星くらいまで」、「口径80mmで8等星くらいまで」といったあたりが使えるガイド星の限界の模様。口径60mmだと、間をとって6〜7等星あたりが限界でしょうか。しかしこちらは超一等の光害地。限界等級は割り引いて考える必要があります。また、使われている撮像素子はSONYのSuper HAD CCD「ICX404AL」ですが、1/3型とサイズが小さく、そのため視野が狭いことが予想されます。ただでさえ大変そうなガイド星探しがさらに困難になりそうです。

お手軽さと低価格は魅力的でしたが、ピント合わせの難しさなど使い勝手にも不安が残りますし、この時点でNexGuideは脱落。PC制御のものに対象を絞ることにします。システムが大掛かりになるのは嫌ですが、PCはカメラのピント確認にも使えますし、どのみち遠征は前提にしていませんから許容範囲内でしょう。そこで、高感度であること、取り扱いが容易であることなどを勘案した結果…



高感度で最近話題の、Stalight XpressのLodestar Autoguiderに決定。



このオートガイダー、とにかく高感度な上に、アメリカンサイズのアイピースとほぼ同サイズ(直径31.7mm)のコンパクトさがウリなのですが、弱点はケーブルのコネクタ。特にオートガイダー端子は日本であまり普及していないタイプの上、小さいために構造的に弱く、破損する恐れが多分にありました。



そこで、コネクタを一般的なものに交換した、三基光学館オリジナルの改造品(Lodestar改)を購入。素のものより少々値が張りますが、安心料と思えば妥当なところでしょう。

実戦投入

Lodestar改を購入して以来、雨天・曇天続きでなかなかテストできなかったのですが、一昨日、昨日となんとか晴れ間が出たので、実際に使用してみました。ほぼ満月という悪条件でしたが、贅沢言っていられません。



実際の使用の様子。月明かりがあってISO1600に感度を上げているとはいえ、ノーストロボでこんなに明るく写る時点で、いかに環境が劣悪か分かろうというものです(^^;


Lodestar改とPCの接続は、ドライバをインストールした上でUSBケーブルで*1。Starbookとの接続は専用のガイドケーブルで…とはいえ、Lodestar改の場合は本体コネクタがSBIG互換のRJ11になっていますので、基本的には6極6芯のクロスケーブルで用が足りるんじゃないかと思います。

さて、実際のガイドですが、Lodestarにはオートガイド用ソフトも付属しているものの、使用例の多さと分かりやすさから、定番の「PHD guiding」を使用しました。カメラは「Starlight Xpress SXV」、マウントは「On-camera」を選択すればOKです*2

とりあえず、Starbookでオートガイド時の望遠鏡動作スピードを恒星時の1.5倍にセットし、他のパラメータは特にいじらずに撮影してみました。目標は天頂近くに昇ったヘルクレス座球状星団M13。キャリブレーションは無事通過し、画面を見る限り追尾もうまく行えているようです。驚くべきは、露光時間1秒にもかかわらず、PHD guidingのキャプチャー画面にM13が写っていたこと。M13の実視等級は6.4等。強烈な光害と月明かりの中でこれが写るのですから、聞きしに勝る高感度です。実際、空のどこに向けてもなんらかの星が必ず入っている感じ。これならガイドマウントはいらなさそうです。



2012年5月6日 ビクセンED103S(D103mm, f795mm) SXD赤道儀
D60mm, f540mmガイド鏡+Lodestar改+PHD guidingによる自動ガイド
ペンタックスK-7(ISO200) 露出2分×8コマ ステライメージVer.6.5で画像処理

こうして撮ったM13ですが、従来のノータッチガイドに比べればコマ間の構図のズレも小さく、オートガイダーの効果が実感できたものの、まだ赤経方向に微妙に流れています。ガイドマウントあたりが原因でガイド鏡が動いたか、修正がオーバーシュートしているんだろうと思います。


ログを見ると、200秒付近にうっかり望遠鏡に触れた影響が見える以外、まずまずの追尾結果のようにも見えますが、赤経方向の修正が頻繁に入っている上に修正量(RADistance)が時折1ピクセル近くに達していて、やや暴れているようにも思えます。写真を見ても、コンポジットしたすべてのコマで同じような流れ方をしていたので、修正のオーバーシュートの線が濃厚でしょうか。PHD guidingのパラメータを追い込んでいく必要がありそうです。

*1:ちなみにエレコムの極細USBケーブルを使用。取り回しは抜群です。

*2:StarbookはSBIG互換のオートガイダーに標準で対応しているので、オートガイドだけならASCOMドライバは不要です。