昨日、ビクセンオンラインストアのTwitterアカウントから、突然、意味深なツイートが流れてきました。
ビクセン オンラインストア限定!
— ビクセン オンラインストア (@VixenMarketing) September 28, 2021
“漆黒の異端児”がやってくる!?
まずはフォローして続報を待つべし。 pic.twitter.com/CxkTOEl2yB
曰く、オンラインストア限定の新製品だとか。いわゆるティザー広告で、細かいところは現時点で不明な部分も多いのですが、分かる範囲で考察してみましょう。
機種名とスペック
まず機種名ですが、これは動画をよく見れば分かります。
おそらく「SD60SS」で間違いないでしょう。同社の命名規則から考えれば、口径60mmのSDアポクロマートということでよさそうです。また、スペックについては機種名の下に「D=60mm f=300mm」とあるように見えます。口径60mm、焦点距離300mmならF5で、そう無茶なスペックというわけでもありません。
これに近いスペックの鏡筒というと、ビクセンには既にFL55SS(口径55mm, 焦点距離300mm(F5.5))があります。ただ、こちらはフローライトを奢っているだけに、実売価格で10万円以上とそれなりに高額です。本機は機種名にSDと付いているだけにSDガラスを使っていると思われ、その分、低価格化が期待できます。位置づけとしてはFL55SSの廉価版といったところでしょうか。
以前もまとめましたが、「口径60mm前後、F5前後」というこのクラスは現在、最激戦区といってもいい状況。ここに価格競争力のある鏡筒を投入できれば、ある程度のインパクトがあるのではないかと思います。
hpn.hatenablog.com
なお、これまでのビクセンの「SDシリーズ」はいずれも2枚玉で、おそらくこの鏡筒もそれに準ずるのではないかと思います。FL55SSもそうですが、2枚玉だと収差補正に限界があるので、実際にはフラットナーやレデューサーの使用がほぼ必須になるのではないかと思います*1。
鏡筒の固定方法
鏡筒の固定は、FL55SSとは異なり専用の鏡筒バンドで行うようです。見た感じ、結構頑強そうなバンドで、固定力に不安はなさそうです。
ただ、実用面でいうと、鏡筒バンド上面にネジ穴の類が一切見えないのが少々気になります。もしこの構造が本当だと、ガイド鏡やASIAIRのようなアクセサリを固定するのに苦労しそうです。
アリガタの構造
バンドからはスペーサー(?)を介してアリガタにつながる形。形状から見て、アリガタはビクセン規格でしょう。
もっとも、アリガタの下辺を見ると、縁が輝いていて、なにやら段差があるようにも見えます。ひょっとするとですが、アルカスイス規格との「2階建て」になっている可能性も否定できません。もしそうなってたらいいなぁ……。
ファインダー取付部
この鏡筒には、FL55SSとは異なり、ファインダー取付用のアリミゾが標準装備されているようです。焦点距離が短いので、ファインダー用と考えると必ずしも必要ではありませんが、ガイド鏡の取り付けなどにも使えますし、あって困るものでもありません。
アリミゾは、従来のビクセン鏡筒では見かけない、ネジ2本で留める形式。中華製鏡筒でしばしば見かける意匠です。
フォーカサー
従来のビクセン鏡筒とは明らかに異なる意匠です。しかし、どこかで見たことのあるデザイン……と思ったら、ED80Sfがこんな感じでした。
www.vixen.co.jp
よく見ると、ノブの奥に小さなネジ頭のようなものが見えるので、ED80Sfと同じくクレイフォード式の可能性もあります。しかし、もしED80Sfのものと同等だとすると、いくらコストが下がったとしてもガッカリです。というのも、このフォーカサー自体の精度や強度が今一つなのに加え、ピント微動装置の類が取り付けられないためです。
デジタル写真全盛になって以降、ピント合わせの重要性は格段に上がりました。特にF値の明るい鏡筒では、ピント合わせに十数μmの精度が要求されるのもザラです*2。こんな精度は微動装置なしではとても達成できません。F値の暗い望遠鏡で眼視していた昔ならいざ知らず、現代の望遠鏡……特に写真用途に振った望遠鏡であれば必須装備だと思うのですが……。
願わくば、予想がいい方向に外れてほしいところですが……さて?
*1:可能性としてはRedCatみたいなペッツバール光学系の可能性もありますが……さてどうでしょう?