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2020年の振り返り

今年はコロナ禍のせいか「年末」という感覚がイマイチ乏しいのですが、一応、年の最後ということでこの1年を振り返ってみましょう。


自分にとって今年最大のトピックは、冷却CMOSカメラ「ZWO ASI2600MC Pro」の導入でしょう。
hpn.hatenablog.com


これまではEOS KissX5の改造機で粘ってきたのですが、もう10年近く前の機種ですし、さすがに限界が見えてきていました。デジカメの画像処理エンジンの悪影響も気になっていたので、昨年末に思い切って発注。ところがちょうど折悪しく、新型コロナウイルスの流行が始まってZWOのオフィスや工場が閉鎖。なんだかんだでこちらの手元に届いたのは4月末になってしまいました。


その後、イメージングソフトを選定したり、撮影条件を検討したりしながら、M31やM42などのメジャーどころを撮影して感覚をつかむ1年でした。感想としては「デジカメの代替として気軽に使いやすいカメラ」というところで、画質を含めて満足度は高いです。


……と、言ってるそばからAPS-Cのモノクロカメラ、ASI2600MM Proの噂が。
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欲しいっ……欲しいけど、三色分解だと撮影に手間がかかる上、屈折だとピントの問題もあって案外面倒そう*1。多分、今のウチの環境だと、カラーカメラの方が稼働効率は良くなりそうです。おまけに、フィルターやフィルターホイールなどに出費がかさむと思うと……。



2つ目のトピックは、赤道儀化AZ-GTiの本格投入でしょうか。
hpn.hatenablog.com


「ありもの」をかき集めて構築したシステムですが、追尾精度も案外良さそうな結果が。


ASI2600MC Pro導入後は、余剰になったEOS KissX5改造機と同じく余剰のASI120MC、余剰のPC、中古の安レンズを組み合わせて、星野撮影機に仕立て上げました。
hpn.hatenablog.com


使ってみると想像以上にまともな性能で、200mmくらいまでのレンズなら十分に使い物になりそう。また、都心でも意外とちゃんとした星野写真が撮れることも分かって、楽しみが増えました。



さて、そんなこんなの1年でしたが、今年撮った天体写真は以下の通り。

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星雲に彗星に月に惑星に……と、相変わらず節操がないというかなんというか(^^;


案外数が少ない気もしますが、今年の東京は1月降水量歴代4位、4月降水量歴代1位、6月末~7月に19日間連続降水、7月日照時間歴代ワースト、9月は降水がなかったのが3日だけ……と、天気がメタメタだった上、そもそも一晩にほぼ1~2天体のペースで撮るスタイルなので、そこは仕方ありません。


ASI2600MC Proの扱いにもぼつぼつ慣れてきましたし、これからどんどん撮っていきたいと思います。




最後に、今年アクセスの多かった記事トップ10です。

  1. 【悲報】アトラス彗星(ほぼ)終了のお知らせ - 星のつぶやき
  2. 明るくなるか?ATLAS彗星(C/2019 Y4) - 星のつぶやき
  3. 【速報】アトラス彗星がピンチ!? - 星のつぶやき
  4. 光害カットフィルターのスペック一気比較 - 星のつぶやき
  5. アトラス彗星近況 - 星のつぶやき
  6. ノイズ除去ソフト一気比較 - 星のつぶやき
  7. PHD2マニュアル更新(v2.6.5対応) - 星のつぶやき
  8. 「恋する小惑星」を検証してみた - 星のつぶやき
  9. PoleMaster使用説明書 - 星のつぶやき
  10. SG-3500のバッテリー交換 - 星のつぶやき

アトラス彗星(C/2019 Y4)関係が見事に上位を占めました。ここには入っていませんが、今年の記事だけに限れば、都心から増光中の同彗星を捉えた記事も10位以内に入っています。しかしながら、彗星は接近中の4月頭に崩壊し、肉眼彗星はおろか、8等前後の平凡な彗星に終わってしまいました。すごく明るくなると期待されただけに、その落胆も非常に大きいものでした。そのあと現れたネオワイズ彗星(C/2020 F3)は実際に明るい彗星になりましたが、北海道以南では記録的な梅雨のためにほとんど見られず、本ブログでの関連記事のアクセスも「ほどほど」に留まりました。タイミングが悪かったとしか言いようがありません。


4位は、各社の様々なタイプの光害カットフィルターの特性を横並びで比較した記事。昨年の記事で、公開データから推測しただけのものですが、かなり需要があったようです。ナローバンド系のフィルターを含めて選択肢がずいぶん増えてきましたし、撮影対象によってうまくフィルターを選んでほしいものです。


6位はこれまた昨年の比較記事で、ノイズ除去ソフトを横並びで比べてみたもの。ソフトによる特性の違いがよく出たのではないかと思います。巷ではDeNoise AIの評価が高く、実際、ハマると猛烈に効果的ですが、一方で強めのノイズやいわゆる「縮緬ノイズ」には比較的弱い傾向があるので、これも適材適所、うまく選ぶ必要があるでしょう。


7位にはPHD2の、9位にはPoleMasterのマニュアルに関する記事が入りました。昨今、各種翻訳機能、翻訳サービスの精度が上がって、英語のハードルはますます下がってきた感がありますが、案外と根強い需要があるのだなぁ、というのが正直な感想です。


8位は今年の冬アニメ「恋する小惑星」の検証記事。この記事から始まって、3月まで天文マニア目線でのガチ目な検証記事を連載していました。
hpn.hatenablog.com

毛色の違うアニメ関連記事だけに、普段とは全く異なる客層にアプローチできたのではないかと思っています*2。このアニメ、天文普及にも一役買ったのではないかと思いますが、コロナ禍の影響で各種関連リアルイベントが軒並み中止になってしまったのは残念な所でした。


10位は、ユーザーも多いと思われるポータブルバッテリーSG-3500LEDの内部バッテリー交換記事。使用開始後、大体数年でへたってくるので、交換してみようという人も多いのでしょうね。

*1:モノクロカメラでは、フィルターを交換しながら各色ごとに撮影していきますが、R, G, Bの各色が揃わないと絵にならないので、隙間時間でちゃっちゃと撮るというわけにはなかなか行きません。少しでも歩留まりを上げるためにR→G→B→R→G→B→……と撮影しようとすると、屈折の場合、各色のピント位置が違うのでフィルター交換のたびにピント合わせが必要になります。

*2:実際、この時期に読者層が一気に若返りました(笑)