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ステライメージ9.0a1 公開

年末だし、今年の振り返りでもやろうかと思っていた矢先、アストロアーツから「先行配信」として、ステライメージ9.0a1のアップデータが急遽公開されました。年末ぎりぎりまでお疲れ様です。
www.astroarts.co.jp


リリースノートを見ると、

  • 「加算平均(σクリッピング)」「中央値」コンポジットの高速化と安定性向上
  • ファイルから追加した画像の位置合わせで、メモリ使用量を削減
  • スライダ等の表示遅延の修正
  • TIFF画像の読み込み不具合対応

あたりが主な修正内容。他にもいくつか重大な不具合が修正されています。


アップデートしてみると、たしかに不具合が解消されていて、ようやくまともに使えるようになったかなという感じです。と、ここで気になるのが「『加算平均(σクリッピング)』『中央値』コンポジットの高速化と安定性向上」という部分。先のレビューで確認した感じでは、「加算平均(σクリッピング)」はSI8と速度や挙動がほとんど同じで、おそらく手が入っていないのだろうと思われたのです。本当にここが変わったとすれば、非常に歓迎できることです。


そこで、先のテストと同条件……すなわち、「詳細編集モード」で32枚のFITSファイル(5184×3456ピクセル)を読み込んだのち、「自動位置合わせ」、「コンポジット」(加算平均&バイキュービック、加算平均(σクリッピング)&バイキュービック)のそれぞれについて計測してみました。すると……


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……は?


いやはや、これは驚きました。「加算平均(σクリッピング)」が、なんと10倍以上も速くなっています。


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CPU使用率を比べてみても、SI8とSI9(9.0a)が同じような挙動を示しているのに対し、9.0a1だけは全スレッドがフル稼働しています。おそらく、SI9でそもそも意図していた挙動はこちらなのでしょう。この速度でσクリッピングが使えるなら、ディザリングの価値もグッと上がります*1


……というわけで、前回レビューで上げた不満点のいくつかはきれいに解消しています。おそらく年明けには正式版(9.0b?)が出るのでしょうけど、現時点でもアップデートしておいた方が良いように思います。

*1:ただし、CR2ファイルを逐次読み込みながらの「加算平均(σクリッピング)」が非常に遅いのはそのままです。100ラインずつ読み込んで展開しては比較する、というやり方を取っている限り、劇的な速度アップは難しそうな気がします。