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【速報】アトラス彗星がピンチ!?

久々の大彗星かと期待されているアトラス彗星ですが、少し心配なニュースが飛び込んできました。



コメットハンターとして有名なテリー・ラブジョイ氏のツイートですが、最近の彗星像がやや暗くなりつつあるとのこと。氏は"not a good sign"と言っていますが、たしかに、氏の撮った写真を見ると、3月31日から輝きがやや減退しているように見える上に、コマがやや▽の形に伸びているような気もします。


そこで、例によってComet Observation Databaseで公開されている観測データをもとに光度曲線を描いてみました。


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……うむ。たしかにちょっとマズい感じです。ここ数日、光度が停滞しているどころか、むしろ若干下がっているような気もします。これが気のせいだったり、一時的な現象ならそれほど心配ない*1のですが、最悪のケースとして核が崩壊し始めた可能性も否定しきれません。


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核が崩壊した例として思い出すのは、タイバー彗星(C/1996 Q1)です。当時、肉眼彗星になるのではないかと期待されていて、順調に光度を伸ばしていたのですが、太陽まであと1 auというところで急に光度の伸びが停滞。その後、核が直線状に伸びていくのが観測されるとともに、光度が逆に下がっていって1か月ほどで見えなくなってしまいました。


アトラス彗星は太陽までまだ1.4 auありますし、明確に核が伸びるのが観測されたわけでもないので慌てる必要はないとは思いますが、光度カーブの形状はよく似ていて、ちょっと心配なところです。


また、アトラス彗星は核が脆そうというのも不安材料ではあります。C/1844 Y1と分裂した「前科」もありますし、遠方での活動が「異常に」活発だったのも、核が脆くて物質放出が盛んだったと考えれば、ある程度納得できるような……。上で「核が崩壊した例」として引用したタイバー彗星(C/1996 Q1)も、リラー彗星(C/1988 A1)の破片ではないかと言われていて、そのへんの符合もイヤな感じです。



ともあれ、現時点ではまだ確定的なことは何も言えません。客観的な事実としては「Lovejoy氏の写真でコマの形がちょっと変」、「光度がほぼ完全に停滞している」だけです。どうにか無事に、5月に雄大な姿を見せてほしいものです。


※光度グラフはComet for Windowsで作成しました。また、各彗星の光度データはComet Observation Databaseに集積されているデータを参考にしています。

*1:それでも、おそらく予想最大光度は引き下げざるをえないかも……。