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祝・星ナビ掲載! その2

花粉症でダルダルしている今日このごろですが、本日(3月5日)発売の「星ナビ」4月号に……

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ウチのサイトが掲載されました!!

……って、これまた写真入選とかじゃないのですが(^^;


星ナビ」読者にはおなじみ、リレー企画である「ネットよ今夜もありがとう」のコーナーに、Twitterでも相互フォロー頂いている「アローの野帳」のアローさんから推薦をいただいたものです。本当にありがとうございました。曲がりなりにも同好の士から評価をいただけたということで、こういうのは素直に嬉しいところです。
shudooooooon.com


コメントの文章は250文字以内という指定があって、何を書こうか一瞬迷ったのですが、結局、内容的には同サイトの「管理人について」の文章をベースにまとめました。特定文字数以内に文章をまとめるのは、職業柄、学会の要旨等で慣れっこなので、割とスムーズに書けた印象です。
urbansky.sakura.ne.jp


なお、本エントリのタイトルに「その2」とありますが、「その1」は2019年の根本泰人氏の記事の脚注だったりします(笑) その前の掲載経験は30年以上前の「天文ガイド」の投書欄だったりするので、どっちにしてもフォトコンの類とは無縁ですね(^^;
hpn.hatenablog.com


ちなみに、これまで同コーナーに掲載されたサイトの一覧はこちらにあるのですが、おなじみのサイトがある一方、意外と有名どころが抜けてたりもします。リレー企画という性質上、運の要素も多分にあるのでしょうね。

今さら初撮影

お久しぶりです。年明け以降、天候の巡りだったり体調だったり忙しさだったりがうまくかみ合わなくて、なかなか天文関連に時間を割けなかったのですが、この週末は久々に穏やかな晴れ予報。上弦の月も夜半には沈みますし、この金曜夜、夜半過ぎにいつもの公園に出撃してきました。


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時期的には春の銀河がぼつぼつ狙い目ですが、翌土曜日は強風という予報もありましたし、Windyの予想でも強風域との境界付近で風の強さを判断しかねたことから、「対系外銀河砲」のEdgeHD800ではなくED103Sの方を持ち出しました。


狙うはM58, M89, M90のトリオ。これをED103S+SDレデューサーHDで狙う予定です。焦点距離は624mmと系外銀河を狙うには控えめですが、画角的に3つの系外銀河がきれいに収まりますし、M58やM90は視直径も比較的大きいので、それなりに見栄えがしてくれるでしょう。


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ちなみに、こうした構図決定の時に役に立つのがイメージングソフトであるN.I.N.A.の「フレーミング」機能。「NASAスカイサーベイ」などによる実際の画像を元に構図を決定できる機能で、自宅などで事前に確認しておけば、出先でもキャッシュされた画像を元に結果を再確認できます。ここから対象の導入もワンタッチで行えますし、プレートソルビングと組み合わせればより精密に構図を追い込めます。非常に便利なので、N.I.N.A.を使っているならぜひとも利用したい機能です。


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今回は、撮影時のケーブルの取り回しにちょっと工夫を加えています。以前、3mのUSB3.0ケーブルを使用して撮影したところ、ケーブルの重さ&硬さのためにカメラが引っ張られ、像が流れてしまったことがありました。そこでサンワサプライUSB3.0アクティブリピーターケーブル KB-USB-R303を導入してみました。
www.sanwa.co.jp


これを望遠鏡のピラー部分に100均で購入したゴムバンドで固定し、ここにカメラからのUSB3.0スリムケーブルを繋ぐ形です。これならカメラに余計なテンションがかかることもなく安心です。難点があるとすれば、アクティブリピーターケーブルが異様に硬い点と、ACアダプターを挿す方向が本体と直交している点、ACアダプターのケーブルが1mと短い点で、このケーブル自体の取り回しは決して良くありません。1度設置してしまえば動かすことはないので問題ないのですが、もう少しデザインは考えてほしいところです。


また、こちらは少し前からやっていたのですが、電源についてもシガーソケットをバッテリーから延長・分岐したうえ、同じく100均で購入した小物入れ&フック*1を利用してピラー付近から取れるようにしています。こちらも余分なテンションがかかることがないので快適です。*2


撮影の方は、おおむねいつも通り1コマ15分で。8コマ確保した時点でまだ3時頃だったので、天文薄明開始までの残り2時間で何か別のものを撮ろうかとも思ったのですが、他の銀河を撮るにも焦点距離が中途半端すぎるので断念。結局、明け方までそのままコマを追加して終了となりました。


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撮影途中には、並行して赤道儀化AZ-GTiにBORG55FL+レデューサー7880セットとEOS KissX5 SEO-SP3を載せてプレセぺ星団 M44を撮影。ガイド付きなら計算上は200mmも利用可能なはずですが、実際のところどんなもんでしょうか……?


リザルト


さてリザルトです。


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まずはM58, M89 & M90の「撮って出し」ですが……うむ、期待にたがわぬ(?)真っ白具合です。とはいえ、系外銀河の中心部はしっかり見えていますし、渦巻銀河のM58やM90については腕の部分も確認できます。ここまで見えていればあとは簡単。ゴニョゴニョとアレコレやって……こうじゃ!



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2021年2月20日 ED103S+SDレデューサーHD(D103mm, f624mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -20℃, Gain=0, 露出900秒×16コマ, IDAS LPS-D1使用
ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.9.0bほかで画像処理

こうしてみると、東京都心のど真ん中で撮った割に、なかなかの迫力です。また、元画像の画素数が多いのでトリミング耐性も高く、それぞれの銀河を等倍で切り出してもそれなりに見栄えがします。


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M58


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M89


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M90

また、このあたりは系外銀河の密集地帯にあるので、背景には無数の銀河が写り込んでいます。「Astrometry.net」でメシエ、NGC、ICに限って同定しただけでもご覧の通り。


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PGC(Principal Galaxies Catalog)に収載の系外銀河などまで対象を伸ばすと、さらに凄まじい数になります。こういうのを1つ1つ拾い上げて調べてみるのも楽しいものです。



そしてもう1つ。赤道儀化AZ-GTiの結果ですが、まずはガイド状況の確認から。

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露出時間は1分と短いですが、撮れた写真を確認してみるとほぼ全コマ点像になっているようです。目論見通り、APS-Cの200mmでも十分に使い物になりそうです。


そして、これらをコンポジットして仕上げた結果がこちら。


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2021年2月20日 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm) AZ-GTiマウント
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出60秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
ノーブランドCCTVレンズ(f25mm, F1.4)+ASI120MC+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.9.0bほかで画像処理

うむ。55FLがシャープな分、全面にわたって星がほぼ点像で、猛烈に地味です。デジタル現像時の色彩強調や「マトリックス色彩補正」で極力色情報を持ち上げましたが、どうしても限界があります。望遠レンズでの使用に向いた、効果がごく弱いソフトフィルターがあるといいのですが……。以前、広角レンズでの星野撮影で使ったPRO1D プロソフトン[A](W)では効果が強すぎます。


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お遊びとして、上の画像を加工してソフトフィルター風に処理してみる*3と、見かけが派手になってだいぶそれっぽくなりますが……ここまでやってしまうと、天体写真としてはちょっとアレな気がしなくもありません。

*1:上の写真で右側に白く写っているもの

*2:実はこちらについては、EdgeHD800を使う際、温度順応ファン「TEMPest」への電源供給をスムーズに行うのが最大の目的。TEMPestの電源ソケットは外径φ5.5mm、内径φ2.1mmのごく一般的なもの(DC2.1)なのですが、どうも国内のプラグだと微妙にサイズが合わず中途半端な接触不良に。海外製品に付いてきたケーブルだとサイズが合うのですが、こちらは長さに限りが……という理由での窮余の策です。

*3:レイヤを複製し、一方にガウスぼかし→ぼかしたレイヤに対し、レベルの自動調整→トーンカーブを調整して暗めの星のぼかしを目立たないように→彩度を下げたのち、重ね合わせのモードを「明るいところ」に→レイヤの透明度やトーンを調整

2020年の振り返り

今年はコロナ禍のせいか「年末」という感覚がイマイチ乏しいのですが、一応、年の最後ということでこの1年を振り返ってみましょう。


自分にとって今年最大のトピックは、冷却CMOSカメラ「ZWO ASI2600MC Pro」の導入でしょう。
hpn.hatenablog.com


これまではEOS KissX5の改造機で粘ってきたのですが、もう10年近く前の機種ですし、さすがに限界が見えてきていました。デジカメの画像処理エンジンの悪影響も気になっていたので、昨年末に思い切って発注。ところがちょうど折悪しく、新型コロナウイルスの流行が始まってZWOのオフィスや工場が閉鎖。なんだかんだでこちらの手元に届いたのは4月末になってしまいました。


その後、イメージングソフトを選定したり、撮影条件を検討したりしながら、M31やM42などのメジャーどころを撮影して感覚をつかむ1年でした。感想としては「デジカメの代替として気軽に使いやすいカメラ」というところで、画質を含めて満足度は高いです。


……と、言ってるそばからAPS-Cのモノクロカメラ、ASI2600MM Proの噂が。
www.facebook.com


欲しいっ……欲しいけど、三色分解だと撮影に手間がかかる上、屈折だとピントの問題もあって案外面倒そう*1。多分、今のウチの環境だと、カラーカメラの方が稼働効率は良くなりそうです。おまけに、フィルターやフィルターホイールなどに出費がかさむと思うと……。



2つ目のトピックは、赤道儀化AZ-GTiの本格投入でしょうか。
hpn.hatenablog.com


「ありもの」をかき集めて構築したシステムですが、追尾精度も案外良さそうな結果が。


ASI2600MC Pro導入後は、余剰になったEOS KissX5改造機と同じく余剰のASI120MC、余剰のPC、中古の安レンズを組み合わせて、星野撮影機に仕立て上げました。
hpn.hatenablog.com


使ってみると想像以上にまともな性能で、200mmくらいまでのレンズなら十分に使い物になりそう。また、都心でも意外とちゃんとした星野写真が撮れることも分かって、楽しみが増えました。



さて、そんなこんなの1年でしたが、今年撮った天体写真は以下の通り。

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星雲に彗星に月に惑星に……と、相変わらず節操がないというかなんというか(^^;


案外数が少ない気もしますが、今年の東京は1月降水量歴代4位、4月降水量歴代1位、6月末~7月に19日間連続降水、7月日照時間歴代ワースト、9月は降水がなかったのが3日だけ……と、天気がメタメタだった上、そもそも一晩にほぼ1~2天体のペースで撮るスタイルなので、そこは仕方ありません。


ASI2600MC Proの扱いにもぼつぼつ慣れてきましたし、これからどんどん撮っていきたいと思います。




最後に、今年アクセスの多かった記事トップ10です。

  1. 【悲報】アトラス彗星(ほぼ)終了のお知らせ - 星のつぶやき
  2. 明るくなるか?ATLAS彗星(C/2019 Y4) - 星のつぶやき
  3. 【速報】アトラス彗星がピンチ!? - 星のつぶやき
  4. 光害カットフィルターのスペック一気比較 - 星のつぶやき
  5. アトラス彗星近況 - 星のつぶやき
  6. ノイズ除去ソフト一気比較 - 星のつぶやき
  7. PHD2マニュアル更新(v2.6.5対応) - 星のつぶやき
  8. 「恋する小惑星」を検証してみた - 星のつぶやき
  9. PoleMaster使用説明書 - 星のつぶやき
  10. SG-3500のバッテリー交換 - 星のつぶやき

アトラス彗星(C/2019 Y4)関係が見事に上位を占めました。ここには入っていませんが、今年の記事だけに限れば、都心から増光中の同彗星を捉えた記事も10位以内に入っています。しかしながら、彗星は接近中の4月頭に崩壊し、肉眼彗星はおろか、8等前後の平凡な彗星に終わってしまいました。すごく明るくなると期待されただけに、その落胆も非常に大きいものでした。そのあと現れたネオワイズ彗星(C/2020 F3)は実際に明るい彗星になりましたが、北海道以南では記録的な梅雨のためにほとんど見られず、本ブログでの関連記事のアクセスも「ほどほど」に留まりました。タイミングが悪かったとしか言いようがありません。


4位は、各社の様々なタイプの光害カットフィルターの特性を横並びで比較した記事。昨年の記事で、公開データから推測しただけのものですが、かなり需要があったようです。ナローバンド系のフィルターを含めて選択肢がずいぶん増えてきましたし、撮影対象によってうまくフィルターを選んでほしいものです。


6位はこれまた昨年の比較記事で、ノイズ除去ソフトを横並びで比べてみたもの。ソフトによる特性の違いがよく出たのではないかと思います。巷ではDeNoise AIの評価が高く、実際、ハマると猛烈に効果的ですが、一方で強めのノイズやいわゆる「縮緬ノイズ」には比較的弱い傾向があるので、これも適材適所、うまく選ぶ必要があるでしょう。


7位にはPHD2の、9位にはPoleMasterのマニュアルに関する記事が入りました。昨今、各種翻訳機能、翻訳サービスの精度が上がって、英語のハードルはますます下がってきた感がありますが、案外と根強い需要があるのだなぁ、というのが正直な感想です。


8位は今年の冬アニメ「恋する小惑星」の検証記事。この記事から始まって、3月まで天文マニア目線でのガチ目な検証記事を連載していました。
hpn.hatenablog.com

毛色の違うアニメ関連記事だけに、普段とは全く異なる客層にアプローチできたのではないかと思っています*2。このアニメ、天文普及にも一役買ったのではないかと思いますが、コロナ禍の影響で各種関連リアルイベントが軒並み中止になってしまったのは残念な所でした。


10位は、ユーザーも多いと思われるポータブルバッテリーSG-3500LEDの内部バッテリー交換記事。使用開始後、大体数年でへたってくるので、交換してみようという人も多いのでしょうね。

*1:モノクロカメラでは、フィルターを交換しながら各色ごとに撮影していきますが、R, G, Bの各色が揃わないと絵にならないので、隙間時間でちゃっちゃと撮るというわけにはなかなか行きません。少しでも歩留まりを上げるためにR→G→B→R→G→B→……と撮影しようとすると、屈折の場合、各色のピント位置が違うのでフィルター交換のたびにピント合わせが必要になります。

*2:実際、この時期に読者層が一気に若返りました(笑)