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シン・Askar FMA135簡易レビュー(実写編)


前回はバックフォーカスの解釈を誤り、大変失礼しました。


誤った原因は、フィルターの取り扱いについて、うっかり「『フィルター厚から計算された光路長』を消費する・・・・」と思い込んでいてしまった点。実際は「『フィルター厚から計算された光路長』の分だけ、バックフォーカスの規定長が伸びる」が正しい解釈になります。


こんなポカをやる人間が他にそうそういるとも思えませんが、一応簡単に解説。




補正レンズ(レデューサー、フラットナー等)が望遠鏡……特にフォーカス調節機構の後ろに取り付けられている場合、これらが最大の性能を発揮するための最適なセンサー位置が定められています。これと補正レンズ(正確には補正レンズのハウジング)後端との距離が、いわゆる「バックフォーカス」です。


ところが、フィルターが補正レンズの後ろに入ると、フィルターによる光の屈折のため、上の図のよう最適センサー位置がわずかに後退します。この後退量を見積もったのが「フィルター厚から計算された光路長」ということになり、その分だけ物理的にセンサーを後退させなければなりません。


FMA135の場合、バックフォーカスは55mm。テストに使おうと考えているZWOのUV-IRカットフィルターの場合、厚さが1.85mmなので、これによる後退量は約0.6mmということになります。

hpn.hatenablog.com


つまり、フラットナー後端からは55.6mmを確保しなければならないわけです。そこで、手持ちのパーツを組み合わせてみるとこんな感じ。


パーツ名光路長(mm)
M42P0.75→M57AD【7528】8mm
フィルターBOXn【7519】15mm
M57→M36.4AD【7522】5mm
M42延長筒10mm
38mm

使用するカメラ(ZWO ASI2600MC Pro, ASI533MC Pro)のフランジバックが17.5mmなので、これで合計55.5mmとほぼ規定値通りになりました。厳密に言えば0.1mm違うわけですが、このくらいは勘弁してもらいましょう(^^;


というわけで、再度玄関前でテスト。ターゲットは前回と同じく、天の川の中にある二重星団h- χです。撮影に用いたカメラはAPS-CサイズのASI2600MC Proで、フィルタードロワーには前述の通りZWOのUV-IRカットフィルターを挿入。オートガイドは25mm CCTVレンズを装着したASI120MCを用い、1ショットの露出は30秒です。


なお、以前もそうですが、ピント合わせには手作りのバーティノフマスクを使用。工作用紙を切り抜いただけの簡単なものですが、まずまずちゃんと働いてくれています。


ただ、FMA135のピント合わせは、これを用いても至難。ヘリコイドの動きが比較的大きいのか、ほんのごく僅かに動かしたつもりでもピントが大きくズレます。感覚的にはF3.6の「BORG55FL+レデューサー7880セット」よりまだ難しい気がします。






さて、30秒露出の1枚撮りはこんな感じ。ほぼ、メーカー公表のスポットダイヤグラム通りの結果で、なかなか優秀です。前回は誤りのために、バックフォーカスを規定値より約1mm短く設定してしまっていたのですが、そのときと比べると周辺像がずいぶん違います。わずか1mmの差とはいえ、センサーがAPS-Cと大きめの上、F4.5とまぁまぁ明るめの鏡筒なので、その影響でしょうか?




なお、、ASI533MC Pro(1インチ)相当の画角では、四隅は崩れ方も小さくほとんど気になりません。




フラット画像の光量分布*1APS-C周辺で15%ほどの光量低下がみられます。ただ、周辺減光のパターンとしては素直なので、補正はそれほど難しくなさそうです。ASI533MC Proの場合(青枠)、光量低下は5%ほどです。


次に、これを本気で軽く処理してみます。PixInsightにて、WBPPののちMGCでカブリを除去、GraXpertでノイズを除去してSPCCでカラーバランスを整えたのち、HTで階調強調&CSで彩度強調します。





星像の形の崩れは少なく好印象ですが、やはりどうしても星像が多少肥大している感じは否めません。そこで、階調強調の前にBlurXterminatorによる処理を加えたのがこちら。





案の定、星像が大幅に改善しました。アーティファクトもほとんど感じられませんし、これなら、APS-Cでも隅から隅まで安心して使用できそうです。





ちなみにASI533MC Pro相当の画角では、星の形の崩れが小さいため、BXTをかけなかったとしてもそれほど見苦しくはありません。各自のお好みでどうぞ。

*1:ASTAPでFITS画像を読み込んだのち、デベイヤーを行い「Tools」→「Image Inspection」で計測。

【取り下げ】Askar FMA135簡易レビュー(実写編)

【2026年1月15日】
「補正光学系の後ろにフィルターが挿入された場合のバックフォーカス」について、解釈に誤りがあり正しいバックフォーカスが取れていなかったことが判明したため、本記事は取り下げさせていただきます。正しい結果については後日改めて。


先月来、だいぶ時間が空いてしまいましたが、ようやく実写テストです。前回の「外観編」はこちらから。

hpn.hatenablog.com


ここまで時間がかかってしまったのは、FMA135のバックフォーカス「55mm」を達成するための延長筒の準備が整わなかったから。FMA135はフラットナーを内蔵しているため、フラットナー後端から撮像センサーまでの距離が厳密に決められています。この距離が長かったり短かったりすれば、鏡筒は所定の性能を発揮できず、特に画像端において星像が歪むことになります。
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当初、55mmは手持ちのボーグのパーツを組み合わせれば容易に達成できると踏んでいました。光路長のカタログ値はこんな感じ。

パーツ名光路長(mm)
M42P0.75→M57AD【7528】8mm
フィルターBOXn【7519】15mm
M57→M36.4AD【7522】9mm
32mm


使用するカメラ(ZWO ASI2600MC Pro, ASI533MC Pro)のフランジバック17.5mmなので、同じく手持ちのM42延長筒(光路長5mm)を挟めば32 + 5 + 17.5で光路長54.5mm。おおむね光路長55mm……という計算だったのです。


ところが、実際に試してみると星像があまりに悪すぎる……。そこでよくよく確認してみると、M57→M36.4AD【7522】の光路長の見積もりが間違っていることが判明しました。


M57→M36.4AD【7522】は、接眼側のM36.4のメスねじの外側にM42のオスねじが切られています。で、よくよくサイズを確認してみると……



M42を利用した場合、オスねじ部分は前後のパーツに埋没するため光路長に寄与せず、光路長は中央の5mm分しかないということが判明しました*1。となると、欠けた分の4mmをどこかで補わなければなりません。ネットを探すと、ちょうど光路長9mmのM42延長筒を発見。これを5mmの延長筒の代わりに挿入すれば、ちょうど辻褄が合うはずです。




が、届いた延長筒を見てみると、光路長が7mmしかなく、おまけに既存のM42パーツにねじ込もうとすると、途中で引っ掛かってしまって完全にねじ込めません*2。あとから測ったところ、M42M42でも、こいつはピッチが1mmのいわゆる「T1ねじ」*3であることが判明。天文関係で多く使われるのはピッチが0.75mmの「T2ねじ」(いわゆるTマウント)なので、ねじ込めるわけがありません。


結局、シュミットで7.5mmのM42延長筒とシムリングを購入。この延長筒に0.5mm厚と1mm厚のシムリングを組み合わせれば、ちょうど9mmを稼げる計算になります。おまけに、シムリングを挟むことで先に問題になったねじの噛み込みも防げます。

www.syumitto.jp
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だいぶ遠回りになりましたが、これでようやく撮影準備が整いました。


というわけで、早速玄関前でテスト。ターゲットは、天の川の中にある二重星団h- χです。撮影に用いたカメラはAPS-CサイズのASI2600MC Proで、フィルタードロワーにはZWOのUV-IRカットフィルターを挿入。オートガイドは25mm CCTVレンズを装着したASI120MCを用い、1ショットの露出は30秒です。






30秒露出の1枚撮りはこんな感じ。APS-Cの四隅では相応に星像が崩れますが、メーカー公表のスポットダイヤグラムと比較すると、まぁ、こんなものかなという気はします。




一方、ASI533MC Pro(1インチ)の四隅は崩れ方も小さく、あまり気にならないレベルです。




フラット画像の光量分布。APS-C周辺で20%近い光量低下がみられます。ただ、周辺減光のパターンとしては素直なので、補正はそれほど難しくなさそうです。ASI533MC Proの場合(青枠)、光量低下は5%ほどです。


次に、これを軽本気でく処理してみます。PixInsightにて、WBPPののちMGCでカブリを除去、GraXpertでノイズを除去してSPCCでカラーバランスを整えたのち、HTで階調強調&CSで彩度強調します。





まぁまぁ悪くない感じですが、やはり周辺部は星が多少肥大している印象。四隅を拡大してみると、星像の崩れがさすがに気になります。そこで、階調強調の前にBlurXterminatorによる処理を加えたのがこちら。




星像が一気に締まりました。四隅を拡大すると、若干補正しきれず星像が妙なことになってる箇所がありますが、ブログやSNSに流す程度なら十分でしょう。





それに、自分は主としてASI533MC Proで使うつもりなので、BXTの適用前後でこのくらい性能が出るのなら、十分だろうと思います(写真上:適用前、写真下:適用後)。

*1:この計測結果からすると、カタログ値の「9mm」というのも「『8mm』が正しいのでは……」と考えざるをえません。

*2:なお、無理やり使うと奇跡的に9.5mmの光路長を稼げましたが、さすがに不安すぎます。

*3:カメラ業界ではM42マウントとして有名。 dc.watch.impress.co.jp

2025年の振り返り

今年の年末はぽかぽか陽気で、ちっとも年末という気がしないのですが、それでもカレンダーは無常に過ぎていくもの。今年もこの1年をざっくり振り返ってみましょう。




まずはハードウェアについて。


カメラや光学系については、もういい加減充実しているので「さすがにそろそろ打ち止めだろう」と思っていたのですが、新年早々、直前に迫った「春の銀河祭り」にあおられて新しいガイドカメラを入手。

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撮像素子が1/1.2型と大きくてオフアキには最適ですし、赤外線フィルターも付属していて月面撮影にも十二分に使えそう。しかも、価格も税込約5万と比較的安く、お買い得でした。ただ、新製品ゆえかドライバのサポート周りは弱く、改善が必要かなという気がしました。特にT〇MITAさん、製品が動作しないドライバを同梱するのは止めてくれませんかね……。

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これで「春の銀河祭り」もOK……と思ったものの、実際に撮影を始めると今度は「対系外銀河砲」のEdgeHD800の結露が気になるように。そこで、5月にセレストロンの「結露防止ヒーターリング」を購入。

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あわせて、ヒーターの動作確認の意味も含めサーモグラフィーカメラも買ってしまいました。

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なお、これを買った直後(6月5日)にビクセンがセレストロンとの代理店契約を終了。まるで駆け込みで購入したような格好になりました(^^; ちなみに、9月にはPC・スマホ等の周辺機器取扱やInsta360の代理店として知られる(株)アーキサイトが、セレストロンの代理店に。この製品も、ビクセン時代の量販店価格より2~3000円ほど安くなったのは内緒ですorz



さて発熱の状態をモニタリングしたところ、ヒーターリングを12VDC電源に直結してしまうと発熱が激しすぎ。逆にUSBの5Vでは補正板全体を温めきれないのが判明しました。そこで、入谷のaitendoで600円ちょっとの可変降圧モジュールを買ってきて、降圧装置を組み立て。おそらくこれで丁度いい感じに働いてくれるはずです。


なお、実地検証はいまだにできていなかったり(^^; 次の春が勝負ですね。



そして、今年から遅まきながら赤道儀化AZ-GTi+ASI533MC Proをサブシステムとして本格運用始めたのですが、ASI2600MC Proより撮像素子が小さい分、より短焦点の鏡筒が欲しくなり、つい先日とうとうAskarのFMA135をお迎え。

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まだまだテスト運用中ですが、撮れる対象が増えると色々楽しくなりそうです。



あと、自分で購入したものではありませんが、Svbony Japan様から「SV220 H-Alpha&OIII デュアルナローバンドフィルター [3nm]」と「SV220 SII & OIIIデュアルナローバンドフィルター [7nm]」のレビュー依頼をいただきました。

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いずれも性能的には素晴らしく、特に「SV220 H-Alpha&OIII デュアルナローバンドフィルター [3nm]」の方はすっかり欲しくなってしまいました。L-Ultimateは既に持っているものの、サブ機との2台態勢だと、いずれにしてもフィルター2枚いる場面も少なくないしな……(ぉぃ




次に、今年撮影した写真について。一覧がこちら(オリジナルサイズはこちら))。




ちゃんと仕上げたのは29枚*1で、昨年の43枚と比べると大幅減。とはいえ、昨年はメシエ天体コンプリートのために散開星団球状星団ばかりをガシガシ撮っていた時期があるので、そこは割り引かねばなりません。参考までに、2022年は27枚、2023年は28枚なので、去年が異常だっただけで平均的と言えます。


ただ、赤道儀化AZ-GTi+ASI533MC Proを本格運用し始めた割には……という気もするので、来年はそのあたりをなんとかしたいところです。



今年は特に「彗星の当たり年」というわけではなかったのですが、年初早々からアトラス彗星(C/2024 G3)の撮影に奔走しました。昨年の紫金山-アトラス彗星(C/2023 A3)の余韻が残っていたのかもしれません。

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その後も、夕空で明るくなったレモン彗星(C/2025 A6)、史上3つ目にして、最大の離心率を持つ恒星間天体3I/アトラス彗星と、自分にしては珍しく3つも彗星を撮っています。一般に、彗星は尾が淡い一方で短時間で撮影する必要があり、一部のごく明るい彗星を除いては街なかで撮影するには極めて不向きなのですが、特にレモン彗星(C/2025 A6)については想像以上にイオンテールがよく写り、嬉しい誤算となりました。

hpn.hatenablog.com
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そして今年は、非ナローバンド回帰の年でもありました。系外銀河のみならず、反射星雲の成分を含む三裂星雲 M20、もろ反射星雲の魔女の横顔星雲 IC2118などはまさに「非ナローバンド」の特徴が出た作品。LED照明の普及が進んで本当に厳しいのですが、それでもある程度はなんとかなるのだというのを示せたかと思います。

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中でも白眉はアイリス星雲 LBN487。東京都心からここまで写るのかと、自分でも驚いた作品です。ひと昔前と比べても、カメラとソフトウェアの性能で、限界値は明らかに引き上げられてますね。

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最後に、今年ページビューの多かった記事トップ10です。

  1. 天体撮影で利用しているツール一覧
  2. 水冷服導入 ~ICEMAN PRO-X簡易レビュー~
  3. アトラス彗星(C/2024 G3)
  4. Image Composite Editorの入手先
  5. ショックコード交換
  6. 光害カットフィルターの比較
  7. 国内で簡単に入手できる望遠鏡一覧(口径15cm以下~25cmクラス編)
  8. SG-3500のバッテリー交換
  9. オートガイダー新調 ~QHY5III585M簡易レビュー(外観編)
  10. セレストロン「結露防止ヒーターリング」 レビュー


1位は昨年に引き続き、普段撮影や画像処理に利用しているツール類を紹介したエントリーが連覇。ツール選びには各人のノウハウが含まれることもあり、ニースが高いのでしょう。さすがの強さですね。ソフトウェアがらみと言えば4位のエントリーも昨年と同着で、同じくニーズの高さが伺えます。


2位には昨年購入した水冷服の記事がランクイン。今年の夏も暑かったですからね……。夜間でも、街なかでは本気で熱中症対策を考えないとかなりヤバいです。


3位はアトラス彗星(C/2024 G3)の記事。「アトラス彗星」という固有名の彗星は非常に多いので、果たしてこれらのアクセスのうちのどれだけがC/2024 G3目当てだったのか*2……とも思いましたが、アクセスが1月に集中しているので、実際にC/2024 G3目当てだったようです(^^;


5位と8位にはメンテナンス系の記事が入りました。これらの記事は、去年もそれぞれ5位と9位だったので、根強い需要があるようです。しかしSG-3500、なかなかしぶとく残りますね(苦笑)


6位と7位はそれぞれ2020年と2021年の古い記事。これらは去年もランクインしていましたが、現在とは状況も色々変わってきていますので、さすがに更新した方がいいかもです(と、去年も言ってた気がする(^^;)。


9位と10位は今年購入した物品のレビュー記事。まぁ、順当なところでしょうか。


ちなみに昨年、一昨年とランクインしていたCP+の記事は惜しくも11位でランク外。行った日が遅くてニュース価値が下がってからのレポートだったので、これは仕方のないところでしょう。

*1:月食のアップの写真を1枚とカウントして。

*2:昨年は紫金山-アトラス彗星(C/2023 A3)とアトラス彗星(C/2019 Y4)とを取り違えての誤爆によって、アトラス彗星(C/2019 Y4)消滅の記事が異例のジャンプアップを果たしたので。