先週末、一晩中晴れ間が広がるという予報だったので、宵のうちからいつもの公園に出撃してきました。
もっともWindyの予想を見ると、晴れではあるものの、特に夜半前は5m/s以上の風が吹きそうだったので長焦点鏡の運用は難しそう。可能なら系外銀河のクローズアップなんかも……と思っていたのですが、そこは諦めることにします。
さて、夜半前はミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55で……というところだったのですが、これについては後回しにするとして
夜半過ぎからは鏡筒をED103S+レデューサーHDに載せ替えて、おとめ座銀河団の「マルカリアンチェーン」を狙います。
この付近は5年ほど前に撮影したことがありますが、当時は使用していたのがデジカメだったこともあり、淡い部分の表現に難がありました。季節的にも春霞や黄砂の時期でしたし、改善を期待したいところです。
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午前3時を回ると、東の空からは早くもさそり座が。ついこの間まで冬の天体が撮り頃だったというのに、季節の移り変わりは本当に早いものです。このあと、夜明けが近づくと雲が出てきたので、そのタイミングで撤収です。
ちなみにマルカリアンチェーン、撮って出しだとこんな感じ。

小さくて確認しづらいですが、明るい系外銀河はこの時点でハッキリ写っていますし、それなりに期待できそうです。レベル調整とフラット補正&カブリ除去後、シャープネス処理等々強調処理を行って……こう!

2022年2月28日 ED103S+SDフラットナーHD+レデューサーHD(D103mm, f624mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -20℃
Gain=100, 600秒×21, IDAS LPS-D1フィルター使用
ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.9.0dほかで画像処理、一部トリミング
今回はちゃんとNGC4438の歪んだ腕、NGC4388やNGC4402の暗黒帯も捉えられているし、まずまず満足です。とはいえ、東京都心の激烈な光害の中からだと、連続スペクトルで輝く対象はやはり難物なのは確かですね。
ちなみに、系外銀河の名前などを書きこんだのがこちら。

天の川の薄い方向だけに、この狭い範囲内だけでもおびただしい数の系外銀河が写りこんでいます。ここでPGCから始まる銀河は、いずれも暗く小さいものばかりで、地球からの距離にして数十億光年離れたものも少なくないはずです。
失敗だけど……失敗じゃなかった!orz
さて、夜半前に撮影していた対象についてですが、1月31日に撮影していたカモメ星雲ことIC2177です。実はこの時の撮影に一部失敗していて、その撮り直しです。
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このときは前半にHα、後半に通常のカラーを撮り、合成する予定で作業を進めていました。

Hαの方は、ほぼ思った通りに撮れた*1のですが……問題はカラーの方。

これはコンポジット&カブリ除去後の画像ですが、画像全体に斜めに走る妙なカブリがある上、「カモメ」の翼内側に明らかに不自然な暗斑が現れています。この時点で、まず疑ったのはフィルターケースのドロワーの装着不良でした。ドロワーがきっちり押し込まれていなかったため、隙間から迷光が侵入したのではないかと疑ったのです。
そこで今回は、ドロワーが正しく挿入されていることを何度も確認しながら撮影に臨みました。さすがにここからの迷光はもうないはずです。
ところが、撮ったカラー画像をフラット補正後にコンポジット&カブリ除去してみると……

前回とほとんど同じようなところに暗斑が現れています。

フラット補正の失敗かとも思ってフラットフレームを確認しましたが、特に異常もなく滑らかなものです。ちゃんとフラット化できたかどうかコンポジット前のライトフレームを確認したときにもこれといって……いや、確認していないライトフレームはどうだったでしょう?
試しに、フラット補正のみ施したライトフレームのRチャンネル*2のみ抜き出してみると……

あああっ!時間の経過とともに暗い影がハッキリと写りこんできています。しかも、天体に対する影の位置が時間とともに変化していることから、フィルターケースやカメラ側からの迷光ではないでしょう。ああ……このパターンは見覚えがありま
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以前、アンタレス周辺を撮影しようとしたときに、全く同じ状況になったのでした。ということは、今回もまず間違いなく南側のLED照明が原因でしょう。しかし……アンタレス周辺は南中時でも30度以下という低さなので影響を受けるのはまぁ分かるのですが、対するIC2177は南中時に40度以上。そんなに影響を受けるものでしょうか……?
原因推測
まず、画像に暗斑が現れるタイミングを見てみます。そう、撮影序盤は一様にカブっているだけで、特に異常はなかったのです。

これは最初の1コマ、19時13分のものですが、都心らしく無茶苦茶カブっている点を除けば、カブリのパターンは一様で素直なものです。

そして、こちらは20時2分のもの。このあたりから暗斑が目に付いてきます。これ以降は不均一なカブリが常に画像上に載り続けるわけです。
ところで、LED照明が原因だとすれば、その光は当然筒先から入ってくるわけですが……曲がりなりにもフードがついているわけですし、役には立たなかったのでしょうか?
ちょうどいいことに、トミーテックのサイトにミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55の構造図が載っていたので、これを拝借して検討してみると……

案外フード短っ!これでは、単純計算だと対物レンズに対して約45度以内の角度で入射してくる光は遮ることができません。
逆に言えば、LED照明から角距離にして45度以内の領域では、影響を受ける可能性が否定できないわけです。そこで、実際のLED照明の位置、高さをステラナビゲータの星図上に書き込み、半径45度の円を描いてみます。この円内では、LED照明の光が直接望遠鏡内に入ってきて、画像に影響を及ぼす可能性があるわけですが……。

各撮影時刻におけるおおいぬ座およびIC2177の位置。中央の棒と白点はLED照明。白文字は撮影時刻。
ビンゴ!(T▽T) 画像に影響の出始めた20時ごろから、見事にLEDから45度以内に入ってきています。つまり「フードが短いためLED照明からの直射光を遮断できず、画像が影響を受けた」という推測でほぼ間違いないでしょう。推測がきれいに決まり、原因も明確になってスッキリしましたが、ちっとも嬉しくないのは気のせいでしょう
ともあれ、原因が分かってしまえば対策は簡単。まずはフードの延長からですかね。次善策は撮影場所の変更ですが……少々遠かったり、行くまでにアップダウンが激しかったり*3、治安面でやや不安だったりと一長一短。フード延長だけでカタがついてくれると簡単なんですが……。