※以下の小話はフィクションです。実在の人物や団体、物品、また実際に起こった出来事とは一切関係ありません……関係ないはず……ないといいなぁ。
クリスマスイブの深夜、俺は自室でひとり、パソコンの画面と向かい合っていた。ZWOが新型赤道儀を発表したのだ。
「ほぅ……こいつは面白いことになりそうだ……」
ひとりごちると、キーボードに指を走らせる。格好のブログのネタだ。原稿を書きながら、いくつかのサイトを渡り歩き、情報を集めていく。と、誰もいないはずの背後にふと気配を感じた。サッと振り向くと……そいつがいた。
年のころは70過ぎだろうか?白髪に同じく白い髭を蓄えた、恰幅のいい男が静かに、そして一分の隙もない姿で立っていた。俺はこいつを知っている。
惨多苦老師……
噂では、クリスマスイブにターゲットの家にこっそり忍び込んでは、鉛玉やククリナイフ、トマホークをプレゼントして回るイカレたヤツだ。曰く、その服はターゲットの返り血で常に赤く染まっているという……。
俺「何の用だ?いくら非モテだからといって、爺と一晩を共にする趣味はないのだが?」
警戒しながら、ヤツに尋ねる。手元には赤道儀のウェイトシャフト(ウェイト付)をこっそり握りこんでいる。いざとなったら側頭部に一発お見舞いしてやる……。
惨多「なに、大した用ではない。貴殿にクリスマスプレゼントをやろうと思ってな」
ヤツは愉快そうな笑顔を浮かべた。ふむ、とりあえず、今すぐ問答無用で襲ってくることはなさそうだが……。
俺「プレゼントだと?鉛玉だのの類はいらんぞ?」
惨多「いやいや、儂がやるプレゼントは『情報』だ……。ん?ちょうどZWOのサイトが開いているな?よく見てみるといい。」
俺「よく見ろもなにも……新型赤道儀の情報がトップにあるだけではないか。Black Fridayセールのガッカリ具合ならとうに確認しているぞ……と、んっ?」
"10TH ANNIVERSARY GIVEAWAY EVENT"とある。「10周年記念プレゼント企画」くらいの意味だろうか。見落としていたぞ。ページを繰ると……
古いZWO製品を買っているとクーポンがもらえるらしい。お、ASI120MM/MCも対象に入っている。なになに、"If your order was placed from the ZWO dealer, then Please contact your dealership for promotion details."(ZWOディーラーから注文した場合は、プロモーションの詳細についてディーラーにお問い合わせください。)と。
ということは、代理店のサイトには……
……あった!なにっ!?10500円の割引だと!?
惨多「フフッ、『情報』は気に入ってもらえたかな?」
俺「くっ!貴様、何が目的だ!?俺にカメラを買わせる気なんだろう?がま口壊れ隊みたいに!がま口壊れ隊みたいに!」*1
惨多「どう受け取っていただいても結構。貴殿にとって良い選択をすることだ、クフフフ……」
俺「あっ、待て!いや、待ってください!一昨年末はASI2600MC Pro買ってるし、今年も大容量HDD買ったりNAS買ったりで地味に支出してるんで安月給の身には財布が心配なんです本当にもうこれ以上物欲を刺激されたらこまr」
引き留めようとしたら、ヤツは文字通り煙のように消えていた。くっ……これはとんでもないクリスマスプレゼントもあったものだ。ヤツの口車にホイホイ乗せられるわけにはいかない。この調子では本当に支出がファイヤーホイールでバーニングになりかねない。
えぇと、ASI120MMを購入した日は……
……
…………
………………おっと、いかんいかん。俺としたことが、いつの間にか寝落ちしていたらしい。
……ん?なんだこれ? *2
*2:近赤外撮影なら、本当は感度的にも解像度的にもモノクロカメラでやるのがスジなのですが、「LRGB合成が簡単そう」というのと、冷却モノクロカメラに手頃なのがなかったという点でこの選択に。ASI533MM Proなんていうのが出たら飛びつくと思います。