プレイヤーA 「俺のターン!『平日の眠気』と『片頭痛』の2体を生贄に『撮影データ』を攻撃表示で召喚!
さらにトラップカード『這い寄る年波』を発動!カードの効果により、プレイヤーにダイレクトアタック!!」*1
プレイヤーB 「ぐわぁぁぁっ!!」
……というわけで(?)、先の三連休最終日、色々と犠牲にしつついつもの公園に強行出撃してきました。*2
公園に到着したのは、ちょうど夕暮れ時。夕焼けと三日月の取り合わせがとてもきれいです。こればかりは街なかだろうが何だろうが関係ありませんね。
日没後、月没までは1時間ほどあるので、その間は「散開星団祭り」。最初のターゲットはいっかくじゅう座のM50です。派手な散光星雲が多い冬の星座にあってついつい忘れてしまいがちな対象です(^^;
そしてとも座のM93。こちらはかなり南に低いです。南中時でも地上高度が30度ほどしかありませんが、撮影時の高度はわずか20度程度。撮りやすい散開星団とはいえ、どこまでそれらしく写ってくれるでしょうか……?
そして月没後はいよいよ今夜の本命、「春の銀河祭り」開幕ということで、おおぐま座のM81 & M82へ。800mm前後の焦点距離でちょうどいい対象ということで、同じおおぐま座のM97 & M108も考えたのですが、より見栄えのするこちらを選びました。
比較的光害が酷い夜半まではL-Ultimateを用いてM81内の散光星雲およびM82のスーパーウインド狙い。
光害が落ち着いた夜半過ぎからは、フィルターをLPS-D1に切り替えて銀河本体を狙います。
(丸のあたりがM81 & M82)
もっとも、夜半過ぎに光害が落ち着くといっても、例によってご覧の通りの明るさなのですが……(^^;
ちなみに、この周辺にはIntegrated Flux Nebula(IFN)と呼ばれるごく淡い分子雲が取り巻いているのですが、さすがに都心から捉えるのは一晩やそこいらではとても無理でしょう。*3
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リザルト
というわけで、まずは散開星団の結果から。
2024年2月12日 ED103S(スペーサー改造済)+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -20℃
Gain100, 60秒×24, ケンコー・トキナー PRO1D プロソフトン クリア(W), ZWO UV/IRカットフィルター使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
PixInsight、ステライメージVer.9.0nほかで画像処理
いっかくじゅう座の散開星団、M50です。地球から3000光年ほど離れた位置にある星団で、年齢はおよそ1億4000万年。これといった大きな特徴はありませんが、中央やや下の赤色巨星と青い星々との取り合わせがなかなかきれいです。惜しむらくは、周囲にエース級の散光星雲がひしめいていて、被写体としてつい忘れられがちな点でしょうか(^^;
2024年2月12日 ED103S(スペーサー改造済)+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -20℃
Gain100, 60秒×24, ケンコー・トキナー PRO1D プロソフトン クリア(W), ZWO UV/IRカットフィルター使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
PixInsight、ステライメージVer.9.0nほかで画像処理
次いで、とも座の散開星団、M93。撮影時の高度がかなり低かったのできれいに撮れるかどうか少々心配でしたが、どうにかなりました。この天体は、シャルル・メシエが自身で発見、カタログに追加した最後の天体の1つです。
かなり南に低く、東京でも南中時の高度は約30度。メシエがいたパリでの高度は、上の星図のようにわずか18度ほどしかなく、よくぞ見つけたものだと思います。
星が三角形状に強く密集していて、高度の低さも相まって、小口径の望遠鏡で見ると彗星のように見えるかもしれません。「彗星と紛らわしい天体をリストアップする」というメシエカタログの当初の趣旨を考えれば、「らしい」天体と言えるかもしれません。
なお、これらの写真は例によって、フィルターとして「プロソフトンクリア」をかませて撮っています。さすがに焦点距離811mm@APS-Cともなれば効果がかなり強いですが、作品として台無しになるほどでもなく、雰囲気良く仕上がったかと思います。
そして、本命のM81 & M82です。
L-UltimateとLPS-D1で撮影したフレームを、ASIFitsViewerでそれぞれ強調表示した結果がこちら。
目論見通り、L-Ultimateの方はちゃんとHαが強調されています。そして、過去に何度も書いていますが、連続スペクトルで輝く銀河本体の写りはあまり良くありません。初心者の方がしばしば「光害カット」の目的で、この手の「デュアルナローバンドフィルター」を用いているのを見聞きしますが、天体の種類によってはこのように逆効果になる場合も多々あるので、十分注意が必要です。
ともあれ、これらをそれぞれ処理、合成して……はい、ドンッ!
2024年2月12日 ED103S(スペーサー改造済)+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -20℃
カラー画像:Gain100, 300秒×60, IDAS LPS-D1フィルター使用
ナローバンド画像:Gain350, 300秒×32, Optolong L-Ultimateフィルター使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
PixInsight、ステライメージVer.9.0nほかで画像処理
特に光害の酷い北天*4でこの写りなら、まずまず上出来でしょうか。
両者は地球から約1200万光年の距離にあり、銀河系が属する「局所銀河群」のメンバーを除けば最も近い距離にある系外銀河です。2つの銀河は、見かけではなく実際に近い距離(約15万光年)にあり、過去には接近遭遇を経験しています。その影響でM82内部では爆発的な星の誕生と活発な超新星爆発が引き起こされ、また銀河中心部からは電離した水素ガスが噴き出しています(スーパーウインド)。
ちなみにM82、一般的には「不規則銀河」に分類されがちですが、最近の近赤外撮影で腕の存在が確認できたらしく、実は渦巻銀河を横から眺めた形なのだそうです。
それぞれのアップはこちら。
L-Ultimateのおかげで、M81の腕にある散光星雲(いわゆる「赤ポチ」)やM82中心部からのスーパーウインドがハッキリ見えています。ここまで写るのなら、個別にアップで撮影しても面白そうです。
なお、M81の左側にはごく淡い光のシミがあるのが分かりますが、これはHolmberg IX(UGC 5336)という不規則矮小銀河で、M81の衛星銀河です。かなり淡いので、写っていてビックリです。
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