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ウィルタネン彗星

8月末以降、東京は新月期の夜の天気が異常に悪く、天体写真からは長らくご無沙汰だったのですが、10日の夜は珍しく雲がほとんどない快晴。しかし残念ながら平日の上、家族の食事も用意しないといけないので「近所の公園までプチ遠征」というわけにもいかず……。

ですが、時期的にちょうどウィルタネン彗星が地球に接近していて見ごろということもあり、食後早々に玄関先に機材を展開しました。

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我が家の玄関は西向きで隣家との間隔も狭く、おまけに上空は電線が多数這っているので視界は良くありません。それでも、短時間露出で追えば電線を回避することもある程度可能でしょう。


機材設置前に、念のためウィルタネン彗星があるはずの位置を10×42の双眼鏡で確認しましたが、姿は全く見えません。一応、4等級に達しているはずなんですが…。以前、ラブジョイ彗星(C/2014 Q2)ホームズ彗星、百武彗星が、都心のこの場所からでも双眼鏡で楽々見えたのとは対照的。見かけ上、アンドロメダ銀河(M31)*1より淡いのは確かです。空の暗いところなら多少は見えるんでしょうけど、見栄えは悪そうですね。


ともあれ、撮影開始。使用機材はミニボーグ60ED+レデューサー0.85×DG(f=298mm, F5)です。試しにISO6400、露出5秒で撮ってみると、下のように彗星のコマがあっさりと写りました。視認のしづらさに比較して写真写りは結構良さそうです。


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その後はISO800、露出1分に切り替えてまずは32コマを確保。さらに撮り足そうかと思ったところで、彗星が上空の「電線密集地帯」に突入してしまったので、ここで撮影終了です。


今回は、素直に恒星時で追尾しておいて、後から「メトカーフコンポジット」で彗星核基準での位置合わせを行う予定で撮りましたが、STAR BOOK TENの彗星追尾機能*2を用いたノータッチガイド、あるいはPHD2の彗星追尾機能*3などを使って長時間露出するのも面白いかもしれません。


撮影した画像は、ダークフレーム、フラットフレーム、フラットフレームのダークフレームともどもステライメージ8(SI8)に放り込み、自動処理でメトカーフコンポジットを行います。以前のレビューの通り、基本的にはダメダメなSI8ですが、この機能だけは優秀です。

SI7ではあらかじめ彗星の移動量をステラナビゲータで調べたり、画像上の方位を指定する必要があったりとかなり煩雑なものでしたが、SI8では彗星の名前とカメラ名、焦点距離さえ入力しておけば後はすべて自動でやってくれます。方位などはおそらくPlate solvingの要領で割り出しているのだと思いますが、今まで試した限りでは失敗はまずなく、本当に優秀です。自動化が進みすぎていて、何をやっているのかが外からでは全く分からないのが気持ち悪いところではありますが……。


そしてコンポジット後の画像を処理して出てきた結果がこちら。


46P/ウィルタネン彗星
2018年12月10日 ミニボーグ60ED+レデューサー0.85×DG(D60mm, f298mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5(未改造), ISO800, 露出60秒×32コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.8.0fほかで画像処理

いかにもイオンリッチな、緑色のコマが浮かび上がってきました。

尾はちょうど地球と反対方向に伸びているため、目立たないのが残念なところ。それでも、空の暗いところで撮った写真には尾が捉えられているので、長時間露出をかければ見えるのかもしれません。

*1:こちらは双眼鏡で視認できます。

*2:STAR BOOK TENにあらかじめ軌道要素を入れておいた状態で彗星を導入すると、彗星の固有運動に合わせて自動追尾してくれます。

*3:1つは、伝統的なメトカーフガイドに準じた方法で、赤経赤緯の各方向への変位量をあらかじめ調査、入力しておいて、それに基づきガイドする方法、もう1つはライブビューで彗星像を捉え、一定時間手動追尾して彗星の動きを学習させる方法です。後者はきっちり集光していて、かつかなり明るい彗星でないと難しそうです。