PHD2の日本語マニュアルを公開しています。こちらからどうぞ。

個人サイト「Starry Urban Sky」もよろしく。

新年初撮り

みなさま、新年あけましておめでとうございます。


この年末年始は、休みに入ったとたんに母の介護がどっと圧し掛かってきて、とても「今年の振り返り」などをやってる余裕はなかった*1のですが、どうにか3日の夜は時間が取れそうだったので、いつもの近所の公園に行ってきました。

f:id:hp2:20190104005347j:plain

「前半戦」の狙いは、いっかくじゅう座~おおいぬ座の境界付近に位置する「かもめ星雲(わし星雲)」。ここは2年前にミニボーグ45ED II+レデューサー0.85×DG(焦点距離285mm, F6.3)で狙っていますが、想像以上の淡さであぶり出しに恐ろしく苦労した記憶しかありません。

hpn.hatenablog.com


しかも、焦点距離の短さ=視野の広さを期待して45ED IIを投入したものの、カタログ上の焦点距離(325mm)と実際の焦点距離(335mm)に食い違いがあり、ミニボーグ60ED(焦点距離350mm)を使った場合と大差ない&より暗いというオマケつき。そこで、ミニボーグ60ED+レデューサー0.85×DG(焦点距離298mm, F5)で撮り直しというわけです。


前回はISO200, 600秒×16コマという条件でしたが、今回はISO100, 900秒×8コマで狙います。総露出時間では劣りますが、1コマ当たりの露出時間が伸びている分、淡いところの表現力は勝っているはずです。


f:id:hp2:20190104024841j:plain

一連の撮影が終わったら、鏡筒をED103Sに交換してM81 & M82を狙います。これは前回のリベンジ。先日はバランスウェイトがトラブルを起こしたせいで、ガイドがめちゃくちゃになってしまいましたが、今回はバランスウェイトも固定ネジがしっかり締まるよう改良しましたし、大丈夫なはずです。

実際、ガイドは順調で、今回は1コマ当たり20分の露出を与えていますが、大きく流れるような事態は避けられました。


なお、この夜はしぶんぎ座流星群の極大日。撮影中は天頂付近をぼーっと眺めていたのですが、かなり明るい流星を数個目にすることが出来ました。この流星群は出現ピークが鋭く、極大時刻の前後数時間しか見られないこと、そして極大時刻が日本時間の4日午前11時ごろと予報されていたことからあまり期待していなかったのですが、思った以上によく飛んだ印象です。空の暗いところであれば「1時間当たり30個程度」という予測は十分に達成したのではないかと思います。


f:id:hp2:20190104055437j:plain

夜明けごろには、虹色に染まった東の空に金星、木星、月が並んだ美しい光景が見られました。ちょっとしたご褒美といったところでしょうか。



機材を撤収して帰宅、睡眠後、さっそく画像処理に取り掛かります。まずは「かもめ星雲」から。撮った画像を開いてみると……


f:id:hp2:20190103235134j:plain

ええ、ええ。分かっていましたとも(T_T)


案の定というかなんというか、淡くて姿がほとんど見えません。かろうじて見えるのは南端のSh2-297のみ。淡さとしてはカシオペヤ座のハート星雲 IC1805 & 胎児星雲 IC1848ケフェウス座のIC1394ぎょしゃ座の勾玉星雲 IC210あたりとどっこいどっこいといった感じでしょうか。IC天体はどれもこれも、都心で撮るには淡すぎて困ります。


それでも画像処理を進めた結果、出てきた結果がこちら。


かもめ星雲(わし星雲) IC2177
2019年1月4日 ミニボーグ60ED+レデューサー0.85×DG(D60mm, f298mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出900秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

前回撮影時に比べると、比較的容易に*2翼を広げた「かもめ」の姿が浮き上がってきてくれました。今回はフラットが割とよく決まってくれたこともあり、視野全体をほぼフルに使うことが出来ています。南側の翼の折れ曲がり部分の西側(写真右側)にあるSh2-293やSh2-295も見えていますし、都心からデジカメで撮ったにしてはまずまずうまくいった方ではないかと思います。

この冬、さらに時間があればHαでも狙ってみたいところです。



次いで、M81 & M82を処理。この処理をしたのは日食のある日の明け方になります。日食を前に空の具合が気になって眠れなかったので……(^^;


f:id:hp2:20190104030155j:plain

1コマ当たり20分も露出をかけただけに、撮って出しでも2つの銀河の存在がハッキリわかります。ちょっと強調しただけでもM81の腕が確認できますし、期待できそうです。

また、今回はガイドの流れもなし。ネジ部分を改良したバランスウェイトがちゃんと働いてくれたおかげです。逆に言うと、バランスが狂っただけでガイドに露骨に悪影響が出るので、特に長時間露出を狙う場合はキッチリとバランスを取るべきでしょう。

そして、これらをコンポジット処理してあれこれ強調処理等を行った結果がこちら。


M81 & M82
2019年1月4日 ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出1200秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

M81は姿こそいいものの、腕が淡くて存外苦労するのですが、今回は前述のとおり最初から腕が見えていましたので、あまり極端な強調処理をせずに済みました。昔撮ったものでも腕を抽出できてはいたのですが、かなり無理をしたせいで画像が荒れてしまっています。それに比べればだいぶきれいになったかと思います。

また、M82の方は中心部から噴き出すジェットもわずかながら見えています。これも、機会があればHαで撮ったものを重ねてみたいところです。


ちなみに、暗い空で丁寧に撮られた写真を見ると、この領域には極めて淡い分子雲が広がっています。しかし、さすがに東京都心からこの程度の撮影条件では抽出は無理。もし捉えようとしたら一体どのくらいの露出が必要になるのか、見当もつきません。

*1:家族全員の食事を朝昼晩と準備してるだけでも、ものすごい勢いで時間が溶けていきますorz

*2:あくまで比較論です。