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Heart & Soul

金曜の東京は、移動性高気圧に覆われて久々の秋らしい快晴。週末になると天気が下り坂になる予報が出ていたので、仕事を早めに切り上げていつもの公園に出撃してきました。


ただ、ちょっと気になるのは季節外れの黄砂がやってくる予報が出ていたこと。


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たしかに気象衛星ひまわりからの画像(https://www.data.jma.go.jp/gmd/env/kosa/himawari/himawari-TRM.html)を見ると、黄砂が日本の上空に流れてきているのがハッキリ分かります。実際、日中の青空もどこか白っぽかったですし、夕焼けもやたら鮮やかで大気中の微粒子が多いことが容易に想像できました。


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そこで、大気の透明度に写りが左右されやすい系外銀河等の撮影は諦め、散光星雲を狙うことにします。ターゲットはカシオペヤ座の「ハート星雲」&「胎児星雲」ことIC1848&IC1805です。


この両者は2017年9月に「BORG55FL+レデューサー7880セット」のファーストライトとして撮影した対象ですが、この時は露出がやや不足気味だった上にフォーカスも微妙にずれていたので、この機会にリベンジです。


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以前の撮影の時には、光害カットフィルターとしてLPS-P2を用いていたのですが、今回はNebulaBooster NB1を使用。その甲斐もあってか、撮って出しの時点で星雲の姿が確認できます。これなら処理もだいぶ楽そうです。


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夜半過ぎからは、鏡筒をミニボーグ60ED+マルチフラットナー1.08×DGに載せ替え、オリオン座のM78周辺を狙うことにします。反射星雲は原則として、光害の影響が出やすい透明度の低い夜に狙うべき対象ではないのですが、相対的に光害自体が減る深夜に撮影するとどうなるのか、半分興味本位です。


こちらも2017年1月に撮影していますが、この時は宵のうちの撮影ということで光害の影響が酷く、使った光学系のフラット補正の難しさも相まってボロボロの結果だったので、このあたりが解消できれば。


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撮って出しだとこんな感じ。かろうじてM78由来の光斑が見えますが、フレームに入っているはずのバーナードループは影も形も見えません。相手が反射星雲ということで、フィルターをNebulaBooster NB1から旧来のLPS-P2に切り替えているのですが、光害カット性能は当然ながら雲泥の差です。


近隣の街灯などが軒並みLEDに切り替わっていることを考えると、そろそろLPS-D2への切り替えを考えてもいいのかもしれません(この夜は、前述の通り黄砂が飛んでましたので、その影響が大きそうな気もしますが)。




帰宅後は画像処理。まずは組しやすそうな「ハート星雲」&「胎児星雲」から取り掛かります。


RGBに分割して丁寧にフラット補正を行った後、各種強調処理等を噛ませて出てきた結果がこちら。



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2019年11月1日 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出900秒×16コマ, IDAS NebulaBooster NB1使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

今回は、フォーカスをバーティノフマスクで追い込んでいるので、その点はバッチリ。そしてさすがはNebulaBooster NB1の効果というべきか、淡いところまでよく写っています。色が単調になりがちなのが惜しいところですが、このあたりは甘受すべきでしょう。



ちなみにカブリの処理ですが、フラットさえきっちり合わせることができれば、あとはおおむね地上→天頂方向の直線状の光害カブリだけなのでステライメージの「カブリ補正」で大体なんとかなります。


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今回の画像の場合、フラットを当てた直後の等光線はこんな感じ(傾斜が分かりやすいよう、レベル調整をしています)。カブリがほぼ直線状になっているのが分かるかと思います。


その代わり、フラット補正はかなり慎重にやる必要があって、自分の場合は↓こちらに示したように、RGBの各色に分割したのちに補正を行っています。フラット補正時のガンマやオフセットは、カブリが直線状になるように何度も試行錯誤を行うので手間はかかりますが、効果的なのは確かです。

urbansky.sakura.ne.jp


もっとも、天体は日周運動により地上→天頂のカブリ方向に対して回転していくため、厳密にはカブリは直線ではないはず。カブリ補正に関してはPixInsightあたりの方が高度な補正ができるようですが、未購入なこともあり今後要研究でしょうか。



一方、M78の方ですが……


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2019年11月2日 ミニボーグ60ED+マルチフラットナー 1.08×DG(D60mm, f378mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出900秒×10コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

案の定というかなんというか、やはりボロボロです。バーナードループを炙り出すだけでも一苦労で、空の条件の悪さがモロに出た印象です。本来ならここまで厄介な対象とも思えないのですが……。


こちらは要リベンジですね。