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ステライメージ8 ファーストインプレッション

2月14日、ステライメージ8(SI8)が発売となり、アップグレードを申し込んでいたウチにも商品が届きました。早速インストールしてテスト……と思ったのですが、発売日当日に早くも8.0aへのアップデータが。ユーザーの方は忘れずにアップデートしておきましょう。


さて、以前の記事でSI8への期待と不安について書きましたが、これらの項目がどうなっているかが気になるところです。また、今回のバージョンアップの目玉ともいうべき新UIはどんな具合でしょうか?

新UIについて

SI8を起動すると、「自動編集モード」と「詳細編集モード」のどちらを選ぶかのダイアログが出てきます。前者を選べば新UIが、後者を選べば従来通りのUIが現れます。なお、これらのUIは起動後も互いに行き来が可能です。


新UIでは、ファイルの読み込みはWindowsの標準のパネルを使う仕様になりました。その結果、読み込みは高速に。ただ、こちらはこちらで仕様上、撮影情報やサムネイルが事前に確認できないので、一長一短といったところです。

機能はほぼ一か所のパネルにまとまっていて見通しはいいのですが……できることが従来UIに比べると極端に少なくなっています。ガンマフラット不可、ヒストグラムの表示不可、デジタル現像不可、かぶり補正不可、マスク処理不可 etc, etc……。一般的なフォトレタッチソフトと比べても本当にごくごく基本的な処理しかできず、かなり物足りなさを覚えます。むしろ「これで一体どうしろと?」という困惑が先立つ感じ。

UIとしては完全に初心者向けで、極端に多くの枚数を一括処理する必要がない限り、ステライメージの使用経験者があえて使う必然性はほとんどないように思います。

動作速度について

これについては、残念ながらほとんど改善がないようです。

旧UIにおいて、ファイルの読み込みに異様に時間がかかるのはSI7までと全く同様。非常にストレスを感じます。ソフト自体の動作や処理速度についても、体感できるほどの違いはなさそうです。

コンポジット時の位置合わせ精度

個人的には、これに期待していたのですが……残念ながらこちらも大きな改善は見られませんでした。


SI7の自動位置合わせにおいて、ズレが誤検出された一連の画像をSI8で処理してみると……やはり突拍子もない結果に。併進ズレや回転ズレの数値が違うので、アルゴリズムに何らかの改良は入っているのでしょうけど、根本的なところは変わっていないようです。



ちなみに位置合わせにかけたのはこんな画像(各画像サイズ:5196×3458ピクセル)。1月2日に撮影したM76の写真です。EdgeHD800においてオフアキシスガイドを行ったもので、一連の画像は全体を通して2ピクセル以下のズレしかありません。実際、どこをどう見ても、1000ピクセル以上ズレたり何十度も回転しているわけがないんですが、なぜこんな結果になるのか、まったくもって理解不能です。

RAW読み込み時の問題について

これも旧UIにおいては改善なし。キヤノンのRAWファイルを開くと、相変わらず「Canon CR2ファイルを読み込み中…」のダイアログがいちいち最前面にポップアップします。

一方、新UIの方ではそうした挙動はなく、これならバックグラウンドで走らせても邪魔になりません。なんでこんな簡単なことが旧UIの方でできないのか、理解に苦しみます。

そのほか気づいた点

マニュアル*1はモノクロ中綴じの非常に簡素なもので、内容としては新UIの簡単な説明と、作例を使ったチュートリアルです。旧UIおよび機能についての説明はSI7のマニュアル*2に丸投げするという割り切りよう。多少はコストダウンに効くのかもしれませんが、逆に言えば機能面はSI7から進歩がないということの裏返しでもあり、メジャーバージョンアップとしてどうかという感じはします。


で、肝心のマニュアルの中身ですが……これが大変よろしくない。チュートリアルが載っていると書きましたが、正確に言えば「製品DVDに同梱されているサンプル画像の処理方法」が書いてあるだけです。

例えば、ホットピクセル除去やガイド不良のフレームを選別するためのパラメータについては「0.9と入れてください」とか「1.7と入れてください」といった具合に具体的な数字が直接指定されているだけで、なぜその数値を入れるのか、数値を変えたらどうなるのか、そしてそもそもこれらのパラメータがどういった意味を持つのか、といった部分の説明がまったくありません。

ダーク引きの処理にしても「(ファイルリストから)ダーク画像を指定してください」とあるだけで、ダークフレームの作り方はおろか、そもそもダークフレームというものの意味すら説明されてないのです。


新UIは、作りとしては明らかに初心者向けなのですが、そのマニュアルがこれでは初心者は困ってしまうでしょう。また、どうにか一通りの処理ができるようになったとしても、パラメータや操作の意味が分からないのでは上達するはずもありません。


さらに、上で例に挙げた「ホット/クールピクセル除去」のパラメータでは、旧UIのパラメータと数字の表し方が異なる(新UIでは0〜1、旧UIでは0〜100%)というひどい状況で、わざとユーザーを混乱させてるんじゃないかと疑いたくもなります。

現時点での結論

まだごく一部の機能を軽く触っただけなので、後々印象が変わる可能性はありますが、メジャーバージョンアップとはいっても、大きな変化は「初心者モード」とでも言うべき新UIが追加されたという点だけと言って過言ではありません。ソフト自体としてはパフォーマンスの上積みも機能面での追加・進歩もほとんどなく、バージョン番号にして小数点以下の変化しかない感じです。率直に言ってSI7ユーザーは無理にアップデートする必要はないと思います。

ただ、最近広がり始めてきた天体撮影用CMOSカメラなどを使っていて、数十〜数百枚といった大量の画像を機械的に処理していかなければならない場合には、新UIが役に立つ場面もあるかもしれません*3。体験版で使用感を確認してみることをお勧めします。


それにしても、国産でほぼ唯一の市販天体写真処理ソフトがこの体たらくでは本当に困ってしまいます。開発リソースにも限りがあるのは分かりますが、自動処理と称した子供だましの初心者モードを付けるより前に、やるべきことが多々あると思うのですが……。

*1:製品のサポートサイトからDLできます。

*2:こちらも製品のサポートサイトからDLできます。

*3:ただし、上で書いたように自動位置合わせが信用しきれないのは相変わらずなので、過度の期待は禁物です