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SXP赤道儀生産終了

【2018/4/14 11時追記
社長のTwitterにより、後継機種の計画があることが明らかにされました。当面ラインナップに穴が開くとはいえ、極端に悲観的になる必要はなさそうです。以下の記事内容は幸いにも「杞憂」になりそうで、ひとまずは安心しました。


驚きの情報が入ってきました。

天体望遠鏡売店「シュミット」のブログによると、SXP赤道儀が生産終了とのこと。

http://syumittoblog.blog.fc2.com/blog-entry-1410.html


まさかと思ってビクセンのサイトを確認してみると、現行製品のラインナップ中にSXP赤道儀*1およびそのセット品はなく、すべて「在庫払底品」の項目に移っています。どうやら情報は本当のようです。*2

https://www.vixen.co.jp/product/tls1/?end_of_production=out_of_stock


冒頭のシュミットのブログによれば、後継機についての情報は今のところないとのこと。実際、先のCP+でも「新赤道儀を開発中」といった情報はありませんでしたし、SXP赤道儀→SXP赤道儀PFLのようなマイナーチェンジのネタもなさそうなので、おそらく本当にSXP赤道儀のラインはこれで終了、ということになりそうです。*3


これで、ビクセンの自動導入赤道儀はSX2*4、SXD2、AXJ、AXD2というラインナップになります。このうちSX2とSXD2は、鏡筒の取り付け方式がビクセン規格のアリガタ・アリミゾに限定されていて、これ以外の取り付け方をしたい場合はAXJかAXD2を選ぶことになります。


その意味ではラインナップの見通しが良くなったと言えるのですが、問題は価格帯の断絶が大きすぎる点です。ちなみに架台の実売価格*5はこんな感じ。

  • SX2-SB赤道儀(STAR-BOOK10特別仕様)+PFL極軸望遠鏡+SXG-HAL130セット:238,889 円(税込 258,000 円)
  • SXD2赤道儀PFL:280,750 円(税込 303,210 円)
  • SXP赤道儀PFL:340,250 円(税込 367,470 円)
  • AXJ赤道儀:700,000 円(税込 756,000 円)
  • AXD2赤道儀:980,000 円(税込 1,058,400 円)

SX2赤道儀のセットについては、SXG-HAL130が24,000 円(税込 25,920 円)ですから、架台(+STAR BOOK TEN)+極軸望遠鏡の価格としては214,889円(税込 232,080円)くらいでしょうか。


こうして見ると、SXP赤道儀なきあとは、税抜価格20万円台のSX2系列と同70万円オーバーのAX系列とにきれいに分かれます。


SX2やSXD2は、上で書いたようにビクセン規格のアリガタ・アリミゾでしか鏡筒を固定できません。規格はほぼ世界標準ですし、便利な機構ではありますが、VC200Lなどをはじめとした焦点距離2000mm前後の長焦点鏡を固定するにはいささか力不足です。*6

ところが、これ以外の取り付け方を選ぼうとすると、今後はAXJやAXD2しかないわけです。AXJやAXD2は一式そろえると100万円前後はかかってしまう*7高額機材。取り付け方の自由度を得るためだけにこの金額を払うくらいならEM-200 Temma2Zを選ぶ、あるいはコストパフォーマンスに優れ、ロスマンディ規格とのデュアルアリミゾになっているSkyWatcherのEQ6Rなどを選ぶという人がかえって増えそうな気がします。


SXP赤道儀は性能と使い勝手、機能や汎用性のバランスが良く、売れ筋の中核モデルだと思っていただけに、ディスコンになるというのは本当に驚きです。もしかすると、販売数の割に利幅が少ないとか事情があるのかもしれませんが、外から見ると非常に不可解かつ不合理な決定にしか思えません。

AXJやAXD2は、価格的にも能力的にも中型赤道儀というよりは大型赤道儀の系譜であり、絶対的な出荷数はそれほど大きくはならないでしょう。SXPを狙っていた顧客がAXJに流れて客単価が上がることを期待しているのかもしれませんが、価格帯の断絶を思えばその可能性は小さく、かえってミドルクラス〜ハイアマチュア層を取り逃がしかねない悪手のように思えます。


初心者はSX2やSXD2で十分。一方で、耳年増な団塊世代の初心者はカネを持っているだろうから、AXJやAXD2で搾り取れるだけ搾り取って……などという不遜な考えを抱いているようなことはないと思いたいのですが……。

*1:正確に書くと「SXP赤道儀PFL」

*2:社長からもディスコンは本当である旨、情報をいただきました。https://twitter.com/22kazu/status/984777644481830912

*3:ラインが残る目を無理やり考えるなら、AXD2でやっているような精度保証や、P-PECデータの工場での書き込み(実質的なV-PEC)をやって新機種として出すくらいですが、さすがにそれはないでしょう。

*4:STAR BOOK TENモデル

*5:協栄産業での価格

*6:特にSX2やSXD2のアリミゾの場合、主にネジの1点留めでアリガタを圧迫固定する形なので、ネジが緩みやすく固定力に不安があります。

*7:上記の価格は三脚などが含まれないことに注意