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PoleMasterに関するFAQ

QHYCCDのサイトでは、PoleMasterの説明書が公開されています。天文ハウスTOMITAでPoleMasterを購入すると、図版入りの詳細な日本語マニュアルが付属してきますが*1、そこに書かれていない情報もFAQを中心に存在します。

そこで、そのうちのいくつかについて、備忘録を兼ねてここに書き留めておきたいと思います(青字はHIROPONによる注)。

計算された極軸位置が微妙に動き回るのはなぜですか?

星の位置がシーイングの影響で動くため、計算された極軸位置も微妙に動き回ります。極軸位置の平均をよく見定め、そこに赤道儀の軸を合わせてください。ノイズに比べてシグナルが低い場合(ひどい光害や、雲の存在などによる)、ランダムエラーが増加し、極軸位置がより大きく動き回ることがあります。

あまりに動きが大きい場合、星が2つの緑の四角内に入っていることを確認してください。

精密調整のモニター時の話です。本来、緑の四角内には星が1つずつ入っていて、真の極軸を常に計算し続けています。しかし、赤道儀の恒星時駆動が止まっていたりすると、日周運動などにより四角内から星が外れることがあります。こうなると正確な極軸が算出できなくなるので、極軸位置のポインタが跳ね回ることになります。

PoleMasterの光軸と赤道儀の極軸とをきっちり合わせる必要がありますか?

いいえ。おおよそ合っているだけで大丈夫です。回転軸の位置はソフトウェアで検出するので、光軸と極軸とを機械的に一致させる必要はありません。

低緯度地域ではどのように使えばいいですか?

低緯度地域では大気差の影響が大きく、真の極軸の位置は星の位置から幾何学的に求めたものと一致しません。最新バージョンには大気差補正機能が装備されています。ソフトではその緯度によりターゲットの位置を以下のように動かします。

北緯25度:2ピクセル シフト(約1分角)
北緯20度:3ピクセル シフト(約1.5分角)
北緯15度:4ピクセル シフト(約2分角)

シフトさせる方向は「地平線に向けて下がる方向に」です(大気差により星は本来の位置より浮き上がって見えるので、それをキャンセルする方向ということ)


この計算で行くと、北緯35度付近の日本国内でのシフト量は2ピクセル以下となり、現実的には大気差補正の恩恵はほとんどなさそうに思えます。しかも、大気差の大きさは気圧や大気中の水蒸気量にもよるので正確な見積もりはそもそも困難です*2。こうした点を考えると、日本国内では無理に大気差補正機能を使う必要はなさそうに思います。

星をクリックするとき、正確にクリックする必要がありますか?

いいえ。大体でOKです。ソフトはカーソルの絶対位置ではなく、星像の重心を計算で求めて星の位置を決定します。

星像が丸くないのはなぜですか?

PolemasterではレンズをF値開放の状態で使っています。そのため収差が目立ち、星像は丸くなりません。しかし通常、ソフトは上記のように星の位置として星像の重心を計算で求めて使用しているため、計算に影響はありません。

極軸の設置精度を確認するにはどうすればいいですか?

赤緯赤経のガイドを切ったうえで、ガイドソフトの赤経赤緯のドリフトカーブを記録してください。赤緯のドリフト状況から、以下の式で極軸の設置精度が求められます。

 精度(秒角)=6(時間)×1時間当たりのドリフト量


例えば、1時間当たりのドリフト量が3秒角の場合、精度は6×3=18秒角となります。


良好な極軸設定ができないのはなぜでしょう?

30秒角以内の設置精度が得られない場合、以下の項目をチェックしてみてください。

(1) 極軸の設置精度は、赤緯のドリフト量から求めるようにしてください。他の方法で求めた設置精度は、大気差や赤道儀バックラッシュといった要因で不確かなものになることがあります。

つまりこの場合、本当に「設置精度が悪い」のではなく、「設置精度を見積もる方法が悪い」と言っています。

(2) 赤道儀機械的な回転軸が正しく求められているか確認してください。これは星が緑の円に沿って動くかどうかで確認できます。もし星が緑の円からずれる場合、回転軸を求めるステップからやり直してください。

(3) 低緯度地域で使っている場合、大気差補正機能を使用してください。

(4) USBポートが向かって左側になるよう、PoleMasterが正しく取り付けられていることを確認してください。

PoleMasterのソフトウェアは、歳差運動による北極星の移動を計算していますか?

現在のバージョンは、2015年11月から2016年5月30日までしかサポートしていません。次の5年間にわたって歳差を計算できる、新しいバージョンをリリース予定です。

考えてみれば当たり前の話ですが、これは地味に重要な部分かもしれません。今現在の最新バージョンがその「次の5年間にわたって歳差を計算できる」ものなのかは分かりませんが(上のFAQの文面はFAQを製作した時点での話かもしれないので)、ソフトウェアは常に最新のものを使うようにしましょう。

*1:おそらく他の代理店で購入した場合もほぼ同様のはず。

*2:天文年鑑によれば北極星の高度における大気差は約1.5分角ほどで、PoleMasterのソフトが採用している値と食い違いますが、このあたりは気圧などを含めた環境要因や、採用する計算式によっても変わってきます。大気差自体、こういうあやふやな部分を多分に含んだ数字です。