先の金曜日は、WindyでもSCWでも終日快晴の予想。ちょうど新月と重なって絶好の撮影日和だったので、いつもの公園に出撃してきました。
ところでこの日、西の低空にやや緑がかった青白い雲がたなびいているのを目撃しています。「夜光雲」っぽいちょっと妙な雲だな?とは思ったもののスルーしてしまったのですが……この日は種子島からH2Aロケット48号機が午後1時44分に打ち上げられていて、どうやらその痕跡が夜光雲として見えていたようなのです。打ち上げから数時間経っている上に、まさか東京から見えるとは思わず全くのノーマークだったのですが……実に惜しいことをしました。
閑話休題。
もちろんこの日は本命の撮影も計画していたのですが……その前にいくつか実験したいことがありました。その1つがSQM値の測定です。
SQMというのはUnihedron社製の測光装置「Sky Quality Meter」のことで、夜空の明るさを「1平方秒あたりの等級」で表示することができます。ここから転じて「夜空1平方秒あたりの等級」のことを「SQM値」と言ったりします。
冷却カメラを用いての測定については、過去にも行っています。
が、以前のは撮影の有無とは関係ない単発のもの。実際に撮影を行う際の空の状態がどんなものなのか、という意味で改めて興味がわいてきたというわけです。ちょうど光害のスペクトルを見てみた直後でもありますし……。
方法自体は簡単で、露出時間を変えて撮影したフレームから空のカウント数を求め、同時に写りこんでいる任意の標準星の明るさをもとに、実際の「空の明るさ」(等級/平方秒)を求めるというものです。詳しくは、だいこもん (id:snct-astro)氏のこちらの記事をご覧ください。
データの取得
- 使用カメラ:ASI2600MC Pro(ピクセルサイズ3.76μm)
- 露光時間:1, 2, 4, 6, 8, 10秒
- Gain :100
- 露光時刻:2024年1月12日 19:17(日没の2時間28分後)
- 冷却温度:-20℃
- 撮影領域:天頂付近
カメラがカラーの上、測光用のフィルター*1を用いているわけでもないので厳密には正確とも言い難いのですが、あくまで簡易測定なのでそこは勘弁ねがいます。一応、この方法で出てくる結果についてはそう突拍子もないものではなく、それなりの妥当性はあるのかなと思っています。
カメラはED103S(スペーサー交換済み)+SDフラットナーHD+レデューサーHD(焦点距離624mm)に接続し、ガイドしながら撮影。ピントはややボカして星像が飽和しないように注意しています。
データの解析
データの解析方法については、上述のブログ記事そのままです。計測対象の星は、写真中心付近にあって周辺減光の影響をほとんど受けていないと思われるGSC 02334-00203(8.05等*2)を用いました。
まず、夜空のカウントがこちら。
この近似直線の傾きから、夜空の明るさは
となります。ただ、この値はピクセル当たりの明るさになっているので、平方秒あたりの明るさに変換します。
1ピクセルが見込む角度は
なので、
一方、GSC 02334-00203のカウントがこちら。
この近似直線の傾きから、星の明るさは
となり、これらの値からSQM値は約16.7等と計算されます。
他の星を使ったり、Gチャンネルのみで計算してみたりもしましたが、どれもおおむね同程度の値になりました。
昨年冬の、環境省による「デジタルカメラによる夜空の明るさ調査」の結果を見ると、文京区や中野区で16.5~16.8等程度の値となっているので、数字としてはまずまず妥当な感じです。
「夜空の明るさ」の数値と実際の星空の見え方との関係は、諸説あって何とも言えない部分はあるのですが……
例えば環境省などでも使われているこの図によれば、SQM値16.7等というのは、天頂付近でギリギリ3等星が見えるかどうかといったところ。ただ、実際には周辺の灯火の影響もあってか、もう0.5等ほど厳しくなるような感触があります*3 *4。ちなみに、一般に天体写真の撮影適地と呼ばれるようなところだと、SQM値は21とかなので50倍ほども明るいことになります。
まぁ、快晴の真冬でこれなので、どう見ても酷い空なのは間違いないですね ┐('~`;)┌
*1:例:https://kokusai-kohki.shop-pro.jp/?pid=124908641
*2:ガイドスターカタログ(GSC)の数値による。
*3:周囲が明るいので、暗順応が解除されてしまいがちなのも大きそうです。
*4:それこそ、LEDの影響増大による光害の青色化の影響もあるのかもしれません。