PHD2の日本語マニュアルを公開しています。こちらからどうぞ。

個人サイト「Starry Urban Sky」もよろしく。

散開星団祭り その2

先の日曜日、おそらくは今年最後の撮影にいつもの公園に出撃してきました。


実はその前の週の13日、ふたご座流星群の極大日の前日にも出撃したのですが、この時は冬型の気圧配置にもかかわらず、関東南部のみ局所的に雲が湧いて、まともな撮影にならなかったのです。「無理ナント」こと、おうし座の超新星残骸(レムナント)Sh2-240を狙っていたのですが……。今回はそのリベンジというわけです。


とはいえ、軽く撮ってみた感じでSh2-240が相当な難物であることは実感したので、この日は違う天体をメインで狙うことにします。具体的には反射星雲であるM78。こいつは過去にも何度かデジカメで狙ったことがあるのですが、都心で反射星雲を捉えるのはやはり相当に難しく、あまりまともな作品にはなりませんでした。

hpn.hatenablog.com
hpn.hatenablog.com

冷却カメラの使用によって、ここら辺が改善されればというところです。


なお、M78が30~40度ほどの「撮りごろ」の高さに昇ってくるのは20時半~21時ごろなので、それまでは短時間で撮れる手頃な天体……散開星団を狙うことにします。そして21時ごろからはM78を。3時過ぎにはM78が再び30度を切ってくるので、そのあとは薄明開始まで再び散開星団を狙うことにします。完璧(?)な作戦です。



さて、公園に到着したのは17時台。薄明終了は18時なので、それまでには余裕で準備完了……となるはずだったのですが、ここでトラブル発生。N.I.N.A.と赤道儀とがうまく接続できないのです。PC側とSTARBOOK TEN(SB10)とで緯度・経度の設定が食い違っていると警告が出る上、同期させようとしても「同期できません」とエラーが出るばかり。


ちょうどこの日の日中にN.I.N.A.をVersion 3.0 BETAにアップデートしていたので、そのせいかと思って旧版をダウンロードしなおしたり、ロールバック方法を検索したりしていたのですが……結論としては、接続に使っていたLANケーブルが抜けかかっていただけでしたorz 抜けかかっているなりに中途半端に端子が接触していたので、PC側からは接続してる判定になっていたようです。これで、たっぷり40分ほど無駄にしてしまいました(^^;


というわけで、19時前から当初の予定通り散開星団の撮影に移ります。まずは西に傾きつつある、はくちょう座のM39から。この日はかなりの強風でしたが、1コマ当たりの露出時間が短いのでおそらくなんとかなるでしょう。


なお、散開星団の撮影に当たっては、先日同様ケンコー・トキナーの「PRO1D プロソフトン クリア(W)」を用いています。今回の撮影鏡筒はED103S+SDフラットナーHD+レデューサーHD……焦点距離624mmと、前回のFRA300 pro(焦点距離300mm)と比べて長いですが、効果はどんなもんでしょうか……?


次いで、ペルセウス座のM34。ところが、ここでも「子午線反転後にガイドのキャリブレーションをし忘れる」という痛恨のポカをやらかし、時間を無駄に。今回はどうもこういう初歩的ミスが目立ちます。少し気を引き締めないと……。


そんなこんなで、M78の撮影に移れたのは21時過ぎ。予定よりだいぶ遅れてしまいましたが、仕方がありません。このM78の撮影については別エントリーにて。


3時過ぎてM78が西に傾いたら、再び散開星団の撮影に移ります。まずはふたご座のM35。


そして、薄明開始までうみへび座のM48を撮影し、これで終了となりました。


奇しくも、散開星団は「はくちょう座」、「ペルセウス座」、「ふたご座」、「うみへび座」と春夏秋冬の星座から1つずつ撮影したことになります。別に意図したわけではないのですが……(^^;


リザルト


後日、M78を後回しにして、処理が簡単そうな散開星団たちから処理を進めていきます。メシエナンバーの小さい順で、まずはM34(ペルセウス座)から。



2023年12月17日 ED103S(スペーサー改造済)+SDフラットナーHD+レデューサーHD(D103mm, f624mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -20℃
Gain100, 60秒×32, ケンコー・トキナー PRO1D プロソフトン クリア(W)使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.9.0n、PixInsightほかで画像処理

満月に近い広がりがあり、明るさも5.2等と明るい散開星団です。ペルセウス座というと、二重星団 h-χが真っ先に思い浮かんでしまい、こちらはついつい忘れられがちなのですが、なかなかどうして立派な星団です。



次にふたご座のM35。



2023年12月18日 ED103S(スペーサー改造済)+SDフラットナーHD+レデューサーHD(D103mm, f624mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -20℃
Gain100, 60秒×32, ケンコー・トキナー PRO1D プロソフトン クリア(W)使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.9.0n、PixInsightほかで画像処理

こちらもM34とほぼ同じような広がりと明るさをもつ立派な散開星団です。天の川の中にあるため、背景には微光星がびっしりで見ごたえがあります。


M35のすぐ脇には暗く小さな星団がありますが、こちらはNGC 2158。その密集度合から、かつては球状星団と考えられていましたが、れっきとした散開星団です。M35が2900光年ほどの距離にあるのに対し、NGC 2158は14000光年ほども離れていて、その分、暗く小さく見えます。色が赤っぽいのは、この星団が生まれてから約20億年と比較的年齢が高いためです(M35の年齢は約1億5000万年)。



2023年12月17日 ED103S(スペーサー改造済)+SDフラットナーHD+レデューサーHD(D103mm, f624mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -20℃
Gain100, 60秒×32, ケンコー・トキナー PRO1D プロソフトン クリア(W)使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.9.0n、PixInsightほかで画像処理

こちらは、はくちょう座のM39。とはいっても、位置的にはケフェウス座のすぐ南で、あまり「はくちょう座」という感じはしません。満月以上の広がりに4.6等という明るいカタログ値に期待してしまいますが、星の集まり方が緩い上にメンバーの数も少なく、見栄えとしてはもうひとつといった感じです。


それでも、天の川の微光星が背景になって、これはこれできれいなものです。



2023年12月18日 ED103S(スペーサー改造済)+SDフラットナーHD+レデューサーHD(D103mm, f624mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -20℃
Gain100, 60秒×32, ケンコー・トキナー PRO1D プロソフトン クリア(W)使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.9.0n、PixInsightほかで画像処理

そして、うみへび座のM48。見かけの広がりや明るさは前3つと同じようなものですが、似たような明るさの星が複雑に絡み合うように集まっていて、なかなかきれいです。


ちなみにこのM48、メシエが発見したものの、座標の記録ミスにより長らく行方不明になっていました。実際には、記録された位置より2.5度ほど南にNGC 2548があり、現在ではこれがM48と考えられています。このように正式に同定されたのは、実は20世紀に入ってからのことです。



なお、この4つの星団、いずれもフィルターに「プロソフトン クリア」を用いましたが、この焦点距離だとさすがに星の滲み方がやや過剰気味なようです。これはこれで十分きれいなのですが……。さらに効果が弱いという「ブラックミスト プロテクター」を試してみてもいいのかもしれません。




www.kenko-tokina.co.jp




さぁ、これで撮影済みメシエ天体は81個に達しました。残るは散開星団が5個、系外銀河が8個、そして球状星団が16個……。明らかに好き嫌いが反映されてますね(^^;



そして肝心のM78の結果については……長くなったので次のエントリーで。
hpn.hatenablog.com