今年最後の天文イベントということで楽しみにしていた26日の部分日食は、一点の晴れ間もない「快曇」で見事に撃沈したわけですが、翌27日は逆に一点の曇りもない快晴。強風が予想されていましたが、恐れていたほどではなかったのでいつもの公園に出撃してきました。おそらくこれが今年の撮り納めになるかと思います。
空が光害で明るく照らされる夜半前、まずは小手調べに、比較的明るい「カリフォルニア星雲」ことNGC1499を55FLで狙います。ここは2016年1月と同12月の2回撮っていますが、もう一つ納得のいく写りではなかったので、NebulaBooster NB1フィルターを用いて再チャレンジです。
撮って出しの状態ではこんな感じ。このところ輝線星雲用に重宝しているNB1フィルターですが、ここでも遺憾なくその威力を発揮してくれています。都心の激烈な光害の中、これだけ見えていてくれれば処理も楽です。
夜半頃からは、鏡筒をED103S+SDフラットナーHD+レデューサーHDに載せ替えて、ふたご座の超新星残骸「くらげ星雲」ことIC443を狙います。
直前まで、おおいぬ座の「トールの兜星雲」として知られるNGC2359とどちらを撮るか相当迷ったのですが、高度*1や色合い*2を考えて、難易度がやや低いと思われるIC443を選びました。とはいえ、こちらも非常に淡い星雲で、どこまで写るかかなり心配です。
念のため、ISOは200に設定し*3、1コマ当たりの露出時間も20分とかなり長めにしました。
撮って出しだと、最も星雲が濃い「くらげ」の傘部分が視認でき、脚に当たる部分もうっすらとですが見えるようです。これなら画像処理でどうにかできるでしょう。
撮影は2時ごろにひとまず予定枚数を撮り終えたのですが、中焦点&NB1フィルター向きの天体が春の天体にほとんどないこともあり、浮気せずに3時過ぎまで撮り足して終了としました。
ところで、現在撮影に用いている公園ですが、最近になって隣接するマンションの敷地内にLED照明が設置され、公園内を強烈に照らすようになってしまいました。北天を撮ろうとしない限り、迷光などの直接的な影響はあまりなさそうですが、光があまりに強くて不愉快なのは確かです。何らかの形での目隠しが必要かもしれません。
帰宅後は画像処理。まずはカリフォルニア星雲からです。
例によってRGBに分割して丁寧にフラット補正を行った後、各種強調処理等を噛ませて出てきた結果がこちら。
2019年12月27日 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出900秒×8コマ, IDAS NebulaBooster NB1使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理
メインとなる星雲に加えて、そこから延びる淡いHα領域も見えています。北に渋谷や新宿を控えたこの場所でここまで写ってくれればまずは上出来でしょう。
ちなみにこのカリフォルニア星雲ですが、すぐ南側にあるペルセウス座ξ星の放射により星間の水素ガスが励起され輝いているものです。このペルセウス座ξ星というのが実はものすごい星で、質量は太陽の30倍、表面温度は太陽の6倍にあたる35000度、明るさは可視光の範囲で太陽の12700倍、紫外線まで含めると太陽の263000倍……という青色巨星で、肉眼で見ることができる最も熱い星の1つと言われています。ξ星は生まれた散開星団からはじき出されて現在も高速で宇宙空間を移動中とのことなので、いずれはこの星雲も見えなくなってしまうものと思われます。
次いで「くらげ星雲」ことIC443ですが、こんな感じに。
2019年12月28日 ED103S+SDフラットナーHD+レデューサーHD(D103mm, f624mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO200, 露出1200秒×12コマ, IDAS NebulaBooster NB1使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理
心配していた「くらげ」の脚の部分もそこそこ出てきて、それらしい見た目になってくれました。OIII由来と思われる青緑色もわずかに見えていて、形状含め網状星雲と同種の天体であることが類推できます。
本来はナローバンド向きの天体ですが、都心からデジカメでもある程度撮れることが分かったのは収穫でしょうか。