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春の先駆け

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前日の1月31日は、東京も積雪を心配されるような天気でしたが、幸い雪は大したことなく。そして翌2月1日はきれいな快晴。月齢の巡り合わせもいいですし、夕食後、いつもの公園に出撃してきました。


今の季節で夜半以降となると、撮影対象は春の系外銀河がメインになります。ここはEdgeHD800の出番か……とも思ったのですが、家を出るときにはそこそこ風がありましたし、シーイングもかなり悪そうだったので、焦点距離を抑えてED103Sを出動させることに。


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最初に狙うはりょうけん座のM106です。明るく大きな銀河ですが、なぜか今まで撮影対象から外れていました。


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露出はISO100の15分を基本にしましたが、ヒストグラムの具合からすると露出をもっと伸ばしても大丈夫そうです。とはいえ、そうすると今度は効率が問題になってくるので悩ましいところです。


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次いで、南側に移っておとめ座のM59 & M60。両者は近い位置にあるので、このくらいの焦点距離キヤノンAPS-Cで811mm。35mm判換算で約1300mmほど)だとちょうど収まります。


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この夜は冷え込みが厳しく、台車の上にはガッツリと霜が降りています。都心のアメダスでも-0.6℃まで下がっていたので、この場所だとおそらく-1℃くらいまでは下がっていたのではないでしょうか?


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ここまで撮って、天文薄明開始まで40~50分あったので、最後にかみのけ座の球状星団M53を。こういう時、星団の類は短い露出時間でサッと撮れるので便利です。


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夜明け前には木星、金星、月の並んだ姿が。先月頭と比べると互いの位置が大きく変わっていて、惑星の動きの意外な速さに驚かされます。



さて、帰宅して仮眠をとったのち、画像処理を進めます。まずはM106から。


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撮って出しの状態で、すでに特徴的な2本の腕が確認できます。噂にたがわず、かなり明るい銀河のようです。そして、これを処理して出てきた結果がこちら。



M106
2019年2月2日 ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出900秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

M106は、2本の腕のみならず、それを取り巻く薄い腕が確認できます。また、銀河の多い領域だけに、画面のあちこちに銀河が確認できます。Astrometry.netにデータを投げて注釈を入れたのがこちら。



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惜しかったのはNGC4217。もう少しM106を左側に寄せていたら、きれいなエッジオンの姿が完全に捉えられていたところでした。元々の撮影計画ではそのつもりだったのですが、構図の詰めが甘かったようです。



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次いでM59 & M60。こちらも、集光がハッキリした楕円銀河だけに撮って出しの状態で位置がよく分かります。M60に寄り添った渦巻銀河NGC4647も分かりますね。



M59 & M60
2019年2月2日 ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出900秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

処理してみると、このNGC4647がやや青みがかっているのが分かります。NGC4647とM60とは、見かけの位置だけではなく実際に近接していて、互いに重力を及ぼしあっています。NGC4647が青っぽく見えるのは、もしかするとM60の重力の影響で星形成活動が活発化、若い星が生まれ続けているせいなのかもしれません。



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こちらも「おとめ座銀河団」の真っただ中、銀河の密集地帯だけに細かい銀河がたくさん写り込んでいます。



M53
2019年2月2日 ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出60秒×8コマ+240秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

最後にM53。こちらは密集度の高い球状星団なので、1分露出×8と4分露出×8のそれぞれを加算平均コンポジットしたのち、互いを加算コンポジットして中心部が飽和しないように気を付けて処理しました。


春の夜空の球状星団というと、りょうけん座のM3が有名ですが、このM53もなかなか立派な姿です。とはいえ、決して大きくはないので、できればやはり2000mmくらいの焦点距離は欲しくなるところです。