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光の国

21日の土曜は天気が下り坂だったものの、GPVの予想では22時ごろまでは天気が持ちそうな感じ。この時間帯なら月も昇っていませんので、好機とばかりに望遠鏡を引っ張り出しました。

何を狙おうか少し迷ったのですが、そろそろ冬の天体もシーズン終盤に差し掛かること、この日は強風で長焦点での撮影が難しそうなことなども考え、今まで撮ったことのないM78を狙ってみることにしました。ちなみにM78というとウルトラマンの故郷としておなじみですが、企画段階ではM87(おとめ座にある楕円銀河)だったところ、脚本印刷時のミスでM78になってしまったというのは有名な話です。

M78自体は星間ガスが星の光に照らされて輝いている「反射星雲」で、その周辺には同様の反射星雲や暗黒星雲が入り乱れています。このタイプの天体は特徴的な色彩に乏しいため、光害の激しい街なかからでは難易度の高い対象です。そうしたこともあって今まで撮影を避けてきたのですが、撮ってみないことには難しさの程度も分かりません。



21〜22時ごろには雲が増えてくる予報だったので、少し早めに19時ごろから撮影を始めたのですが、時間帯が早いこともあって光害が顕著。まぁ、「撮って出し」で被写体がほとんど見えないのはいつものことではあるのですが……( ̄w ̄;ゞ


雲は予報より早く20時半過ぎには広がってきたので、ここで撮影を切り上げ。それでもどうにか最低限の予定枚数は確保しました。で、これをこねくりまわして最終的に出てきたのがこちら。



2017年1月21日 ED103S+レデューサーED(D103mm, f533mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用, ISO100, 露出600秒×8コマ
ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理、中心部をトリミング

いやはや、案の定難しい!

もう少し暗黒星雲の濃淡などを出せるかと思ったのですが、光害の酷い早い時間帯ではこれ以上露出時間を稼ぐこともできず。ちゃんと撮るなら、夜半過ぎに南中するような季節に狙う必要がありそうです。


また、光学系の素性の悪さも問題。レデューサーをかませた場合……特にこのED103S+レデューサーEDの組み合わせで顕著ですが、フラットが合ったためしがありません。おそらく元々の周辺減光の大きさに加え、光害カットフィルターへの光束入射角の大きさに伴う分光特性の変化*1なども影響しているのではないかと思われますが、結果的に画像周辺部は全く使い物になりませんでした。


なお、写真左上がわずかに赤みがかっていますが、これは背景の補正ムラではなく、オリオン座全体を覆う超新星残骸「バーナードループ」の一部が見えているもの。このあたりも含めてきっちり表現できれば、本来かなりカラフルな領域なのですが……やはり宵のうちの撮影では限界があるようです。

*1:LPS-P2-FFの製造元であるIDASの情報によれば、レンズ後方にフィルターをセットした場合、F値2以上のレンズであれば平均最大入射角は約17゜以内に収まり、ほとんど影響は出ないとのことですが、入射角の違いによって分光特性に差が生じるのは間違いなく、強い画像処理によってこれが顕著に現れるのではないかと。