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ステラナビゲータ12 簡易レビュー

2019年に「ステラナビゲータ11」(以後SN11)が出て以来、4年ぶりのメジャーバージョンアップとなった「ステラナビゲータ12」(以後SN12)。アップグレード版を早速購入したので、ごく簡単に、かつごく限られた範囲ですがレビューしてみたいと思います。


なお、発売当日の3月15日に12.0aアップデートが早速リリースされています。かなり大きなバグが残っていたようなので、忘れずにアップデートしておきましょう。以下のレビューでは12.0aを使っています。





上:SN12 下:SN11(以下同様)

画面の構成はSN11、SN12ともにほぼ同様。星図モードではウィンドウ上部と左側にリボンが並び、中央に星図、右側に情報パネルが並びます。ただ、上部リボンについては「彗星・小惑星」タブが増えるなど、細かいところで構成に違いが見られます。全体的にはリボンでできることが増えた形で、使いやすくなったように思います。


一方、天文現象を紹介するステラパネルモードには特に変更はなさそうです。








空の表現については、色使いがより現実に近くなったかなとは思えるものの、個人の好みの範疇という気もします。SN12はちょっと彩度高すぎかな……?





しかし、明らかに違うのは天の川の表現。色合いもさることながら、その違いは拡大してみるとハッキリします。





解像度の違いが一目瞭然です。M8左下の球状星団NGC 6544の光芒も明確ですし、見ていて違和感を感じません。実用上の機能とは直接関係ありませんが、気持ちよく使う上で歓迎すべきところです。





今回のバージョンアップの目玉の1つが、天体カタログの大幅拡充です。従来はメシエ、NGC、ICといったメジャーどころがメインで、カルドウェル天体やメロッテカタログ(Mel)、シャープレスカタログ(Sh2)、エイベル銀河団カタログ(ACO)などの天体をオプションとして表示できるだけでした。


しかしSN12ではこれが大幅に拡充され、かなりマイナーなものを除き、比較的よく目にするカタログについてはほぼ網羅されました。以前、天体カタログについてのエントリーを書きましたが、ここに挙げたものは散開星団のマイナーなカタログなどを除き、ほぼカバーされています。
hpn.hatenablog.com


ただ、惜しいのは「等級限定」との連動です。等級データがない天体については、「等級限定」をかけると暗黒星雲を除き一律で表示されないようになっているようです。しかしその結果、ヒアデス星団(Mel 25)や、かみのけ座本体を構成するMel 111のマークが、「等級限定」をかけた途端に表示されなくなるという妙なことになっています。贅沢な望みですが、せめて肉眼でも明らかに眼視できるものについては、等級データに仮のデータを入れるなどして回避できるといいのですが……。





星図上の星雲・星団の表示ですが、SN11より明らかに視認性が良くなっています。星座線などもしっかり描画されていて、かなり見やすいです。ディスプレイの高解像度化も進んでいますし、そのあたりを汲んでの変更でしょうか?





通称の付いた天体も大きく増えました。通称での検索もできますし、天体を探すのが大幅に楽になりそうです。なお、上のスクリーンショットNGC 2392の通称「エスキモー星雲」の名前が消えてますが、これは以下のNASAの発表などが影響しているのでしょう。色々と議論のあるところですが、対応としては理解できます。
www.nasa.gov


星雲の表示といえば、以前から気になっていたのは「輪郭」の表示。主な星雲についてその輪郭を大まかに表示するというものですが、実状とかけ離れすぎているものがいくつかありました。そこで、特にかけ離れていたIC405 勾玉星雲周辺について確認してみたところ……




はい、今回もダメですね。というか、SN11から全く変わっていません。いずれにしても構図確認などには全く使えませんし、実際の写真データを貼り込む「DSS画像取得」や「画像マッピング」が使える以上、もはや「死に機能」と言って差支えないかと思います。インターネットが一般的ではなかった時代の遺物ですよね……。





その意味では「写真星図」もビミョー。解像度が低い上、Aladin Sky Atlasと違ってレベル調整で淡い星雲を浮き立たせるといったこともできないので、これも使いどころがありません。まぁ、使わないからいいんですけど(^^;




使い勝手に関するところでは、ダイアログで設定した内容が即時に反映されるようになったのが大きなところ。いちいちOKボタンを押さなくても変更結果がリアルタイムで確認できるので、ストレスが大幅に減ります。アピールポイントとしては地味ですが、設定項目が多くなった分、こうしたところが使用時の快適さにじわじわと効いてきます。良い変更点だと思います。




また、さらに地味なところでは、星図のサイズをピクセル単位で設定できるようになりました。これまでは星図の画像を利用する際、サイズをきちっと合わせようとするとドラッグでの微妙な調整が必要だったのですが、そうした苦労が一切不要になりました。ブログやTwitter星図をしばしば利用する自分としては、非常にありがたい変更点です。


その他の変更点については、アストロアーツのサイトをご覧いただいた方が速いかと思います。きちんと確認はしていませんが、望遠鏡の制御については変更なさそうです。新機能もいくつかあるようですが、歴史が長いソフトだけにユーザーの使い方も固定されがちで、響かない人にはまったく響かなそうな気もしますが……(^^;
www.astroarts.co.jp






ところで、星雲の表示をいじっていて気が付いたのですが、SN12ではM16, M17, M20が散開星団として分類されてしまっています(SN11では、M16は「星雲+星団」、M17, M20は「散光星雲」)。これはさすがに実態や一般的な認識とかけ離れすぎているので、情報登録のミスかと思いますが、今回は追加天体も多く、似たようなミスが他にもあるかもしれません。


一応、何らかのポリシーのもとにこれらを「散開星団」とした可能性もなくはないですが、オリジナルのメシエカタログでの記述*1を見ると、M16が"a cluster of small stars, mixed with a faint light"、M17が"a very faint light, not containing any star"、M20が"these clusters are (中略) environed with nebulosities"と表現されているので、当時の機材かつ眼視であっても星雲が認識されていることが分かります。「散開星団」とするのはさすがに無理があるでしょう。修正……されるよな……?