前エントリでも触れましたが、先の金曜日、月没を待っていつもの公園に出撃してきました。
本来なら「春の銀河祭り」後半ということで、おとめ座~かみのけ座方面の系外銀河などを長焦点鏡で狙うところですが、今回はおおぐま座の「回転花火銀河」ことM101を狙うことにしました。
というのも、この銀河は過去2回トライしたことがあるのですが……
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1回目はデジカメの特性をまだ理解していない頃で、短時間露出を積み重ねたもののボロボロの結果に。
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2回目は低感度設定・長時間露出によって銀河の姿をそれらしく捉えることはできたものの、処理にかなり無理があって不自然さが拭えませんし、腕の中のHα領域も白く飛んでしまっています。
デジカメの場合、RAWで撮ったとしても画像処理エンジンでの各種処理(ノイズリダクション処理、レベル調整、トーンカーブ調整など)を受けてしまうため、暗く淡い対象を撮ると、特に高感度ではシグナルが除去されてしまいがち(1回目)。これを避けるために低感度設定・長時間露出を使う*1わけですが、今度は輝度の高い部分が飽和しやすくなり、Hα領域が白飛びしてしまう……ということになるわけです。
そこで天体用冷却CMOSです。画像処理エンジンがないので、淡い光もデータとして余さず捉えられますし、高感度・短時間&多数枚露出でも画質がほとんど落ちないのは過去に検証済み。露出時間を短めにすれば飽和することもないでしょうし、これならある程度満足のいく写りになるのではないでしょうか……?
当初の計画では、月没までの時間を使ってHα画像を撮り、月没後は通常のカラー画像を……と思っていたのですが、位置確認のためにHαの試し撮りをしたところ……
……M101どこよ?
うんと強調すると、なんとなく中心付近に銀河があるようにも見えますが、どうにもハッキリしません*2。ナローバンドだとプレートソルビングもいまいちうまく働かないのが厄介です。
そうこうやっているうちに月が沈んでしまったので、自信のないHαは諦め、通常の撮影に移ります。Gainは200と少し高めにし、露出は5分。この場所だとこれでほぼ適正露出です。
撮って出しだとこんな感じ。M101はカタログ上の数字だけなら7.9等と、有名な「子持ち銀河」ことM51(8.4等)より明るいくらいなのですが、大きく広がっているために非常に淡く、銀河の存在はほとんど分かりません。よーく見ると、核が見えてはいるのですけど……。
しかし、強調してみると銀河の姿がしっかりと。これならなんとかなりそうです。
こうして24コマ、計2時間分を確保したところで天文薄明開始が近づき、撤収となりました。
その後、自宅に戻ってからダークやフラットを撮影。その後、色ごとに丁寧にフラット補正を行ったり、ノイズ除去処理を挟んだりして……こう!
2022年4月9日 ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -10℃
Gain=200, 300秒×24, IDAS LPS-D1フィルター使用
ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.9.0eほかで画像処理
新宿・渋谷から10km圏内の東京都心からということを考えれば、思った以上によく写ってくれました。核の部分と腕の部分との色の違いも出ていますし、Hα領域も鮮やかです。Hαナローバンドの画像を確保できなかったのが心残りだったのですが、ここまで表現できていれば、無理して追加しなくてもいいかなという気がします。
写っている天体の番号を記入したのがこちら。おとめ座方面ほどではないにせよ、おおぐま座方面も系外銀河の多い領域で、多数の細かい銀河が背景に写りこんでいます。
また、M101の内部・周辺にNGC天体が多数ありますが、これは銀河の濃い部分やHα領域が独立した天体として記録されたもの。「さんかく座銀河」M33周辺の天体などもそうですが、当時は眼視観測ですから、銀河がこれほどの面積に広がっているとは思われなかったのかもしれません。