PHD2の日本語マニュアルを公開しています。こちらからどうぞ。

個人サイト「Starry Urban Sky」もよろしく。

東京都心で分子雲 ふたたび!

先々週の週末、3年前に撮ったオリオン大星雲を超えるべく撮影に臨みましたが、ぶっといUSB3.0ケーブルが原因と思われるガイドエラーにより、肝心の長時間露出のコマのうち半分をロストするという、まさかの事態に。
hpn.hatenablog.com


f:id:hp2:20201124190047j:plain
そこで、毎週の出撃になりますが、21日土曜の夜にオリオン大星雲を撮り足してきました。


この日の月齢は6で、月は23時前には沈むので、撮影はその後ということになります。前回、30分露出のコマは4コマ確保しているので、せめてもう4コマは欲しいところ。天文薄明開始は翌日の4時55分で、撮影時間としては5~6時間ほど確保できるので、さらに露出を伸ばすことも頭をよぎったのですが……まずは前回の撮影分を完成させることが先と考え、自重しました。


今回は、前回の反省を生かしてケーブルを細いものに交換。
www.elecom.co.jp


長さが2mとやや短いので取り回しに気を使いますが、今回は目標が1つだけで大きな望遠鏡の動きはないですし、最初さえ届かなかったり引っかかったりしなければ、まぁ大丈夫でしょう。


f:id:hp2:20201124190223j:plain
撮っている間は例によって暇なので、この日も赤道儀化AZ-GTiとHαナローバンドフィルターを使って星野写真遊び。レンズを最も広角側の18mmにセットして冬の大三角を狙います。


一般に、ナローバンドフィルターに代表される干渉フィルターは、斜めから入ってくる光に対して透過波長が短波長側にシフトすることが知られています。これが、ナローバンド撮影において広角レンズがあまり使われない理由ですが、今回使用しているフィルターはマウント内に設置するタイプのもの。この場合、光学系の設計にもよりますが、画角による制限はかなり軽減されます。とはいえ、実際にどの程度の影響が出るのか、実際に見てみないと何とも言えません。


f:id:hp2:20201124190301j:plain
ISO800、10分露出の撮って出しを見る限り、ばら星雲やバーナードループだけでなく、もう少し外側にあるエンジェルフィッシュ星雲もうっすら確認できるので、それほど大きな悪影響はなさそうです*1。まぁ、冬の大三角の場合、Hα領域が三角内に比較的集中しているというのもありますが。


f:id:hp2:20201124190350j:plain
撮影は順調に進んでいたのですが、3時ごろになって北の空から雲が次々と流れ込んでくるようになりました。上空の風が強いのか、雲の動きは非常に速いのですが、雲が取れたと思ったらまたすぐ曇る、の繰り返し。このパターンは、長時間露出とは非常に相性が悪いです。30~40分ほど粘ってみましたが、一向に雲が取れる気配がないので、天文薄明開始を待たずに撤収となりました。


ちなみに、機材を完全に片づけ終わったころにきれいに晴れたのはお約束orz




帰宅後、仮眠をとってから処理に取り掛かります。まずは例によって処理が楽そうなHα画像から。


f:id:hp2:20201124190444j:plain
f:id:hp2:20201124190456j:plain
2020年11月22日 SIGMA 18-50mm F3.5-5.6 DC(f18mm, F3.5) AZ-GTiマウント
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO800, 露出600秒×8コマ, OPTOLONG H-Alpha(7nm)使用
ノーブランドCCTVレンズ(f25mm, F1.4)+ASI120MC+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理


さすがはナローバンド、以前苦労したクリスマス星団周辺のHα領域もあっさり見えています。
hpn.hatenablog.com


その他にも小さなHα領域が点在していて、カラー化したらかなり見栄えがしそうです。しかしこうして見ると、馬頭星雲やばら星雲、かもめ星雲がいかに明るいか、よく分かります。


例によって像の荒れはそれなりに酷い一方、ISO800だとこれ以上の露光は難しそうな感じもあり、もう少し感度を下げて露出時間を伸ばしてやった方がいいのかもしれません。



さて、次は本命のオリオン大星雲です。今回はガイドもバッチリ決まって、星はきれいな点像なっています。これを14~15日に撮影した分と合わせて……こうじゃ!


f:id:hp2:20201124190656j:plain:w600
2020年11月15日, 22日 ミニボーグ60ED+マルチフラットナー 1.08×DG(D60mm, f378mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -20℃, Gain=0, 露出5秒×8コマ+30秒×8コマ+180秒×8コマ+1800秒×8コマ, IDAS LPS-D1使用
ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理


ようやく、周辺のガスもかなりハッキリと浮き出てくれました。3年前にも思いましたが、東京都心でここまで撮った人って、あまりいないのじゃないかと思います。


今回は、ある程度仕上げたのちに3色分解して、Silver Efex Pro 2の「フルコントラストストラクチャ」でR, G, Bの各プレーンを処理したのち、再合成するという手順を踏んでいます。3年前にこの手順をやった時には、周囲のモクモクこそ見やすくなったものの、色合いがガタガタに崩れて作品としては難があったのですが、今回は極端な崩れもなく、割と自然な感じで仕上がりました。やっぱり、元画像の質は大事です。

*1:とはいえ、前回35mmでオリオン座を捉えた時と比べると写りが悪いので、影響が皆無というわけでもなさそうです。