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4年越しのリベンジ

年明け以降、晴れの週末が多くてうれしい限り。天候不順だった昨年の鬱憤を晴らす勢いで出撃を重ねています。このあたり、「遠征」できないしないスタイルだと財布に優しくて助かります(^^;

というわけで月没後の金曜深夜、いつもの公園へ。これで今年4回目の出撃です。

GPVの予報では、この夜は朝まで雲の心配はなさそう。一方、地上の風がそこそこあって長焦点鏡では厳しそうだったので、この日は、以前からやってみたかった別の組み合わせを試してみました。


こちらの記事の末尾に書きましたが、ビクセン屈折望遠鏡の接眼部にある「SX60→50.8アダプター」を外すと、ここを介してボーグの各種パーツを接続していくことができます。そこで今回は、【7601】M57/60延長筒SSを逆向きにねじ込み、【7459】M57→M57ADIIIで向きを逆転。その後ろに【7352】M57回転装置DXと【7108】マルチフラットナー1.08×DGを取り付けました。

これにより、焦点距離は795mm→859mmに伸び、F値も7.7→8.3に暗くなりますが、そのかわり周辺部の像が大幅に改善されるはずです。また、これだけの焦点距離があれば、比較的大型の系外銀河ならそれなりの迫力で写りますし、一方でガイドの難易度は比較的低いはず。Fが暗いといってもF10が標準のシュミカセ系に比べたら明るいですし、光軸調整の必要もないので、取り回しは案外いいのではないかと思います。


これで狙うは、まずは「しし座のトリオ」ことM65、M66、NGC3628の3つの系外銀河。しし座の後ろ足の付け根付近にある、地球から約3500万光年離れた小さな銀河群です。

ここは4年ほど前に一度撮ったことがあるのですが、当時は露出の加減が分からなかったこともあり、明らかに露出不足でした。特にNGC3628は他の2つに比べて暗く、幽霊のような写り方。そこで今回も低感度&長時間露出を試みます。


そうやって出てきた結果がこちら。



2017年2月4日 ED103S+マルチフラットナー1.08×DG(D103mm, f859mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用, ISO100, 露出900秒×8コマ
ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

右下の整った形の銀河がM65、左下のやや崩れた形のがM66、真横を向いたやや暗めの銀河がNGC3628です。それぞれの銀河の表情がお互い全く違っていて、撮って楽しい領域です。

欲を言えば、M66のHα領域の色が出てくれればなぁ、とかNGC3628のディテールがもっと欲しいとかありますが、あまり欲を言ってもバチが当たるでしょう。



「しし座のトリオ」撮影後は、4年前のもう1つの「無念」を晴らすべく次の標的へ旋回。おおぐま座にある「回転花火銀河」ことM101です。

これも4年前に撮っているのですが、事前に淡いとは聞いていたものの想像をはるかに超えた淡さで、当時は単なる証拠写真以上にはなりませんでした。今回は、なんとか愛称通りの立派な渦巻を捉えたいところです。


ところが、調子に乗っていたのが災いしたか、子午線超えを見越してTelescope Eastの姿勢でM101を導入しようとしたところ、カメラが架台のピラーに衝突!あわてて赤道儀を止めましたが……ギアなどに損傷がないことを祈るのみです。


「子午線超え」前後の動作に関係する架台の設定を変更して再導入後、撮影を再開しますが、このトラブルで天文薄明開始までの時間がカツカツに。それでも、なんとか天文薄明開始4分後までに全撮影を終了しました。空の暗いところだと薄明にかかるかどうかは死活問題なのでしょうけど、都心の場合、元々の空が明るすぎるので、ちょっとオーバーするくらいでは影響はほとんどなかったようです*1

写り具合はちょうどM33と同じような感じで、中心部はかろうじて見えるものの、腕の部分は撮って出しでは全く分かりません。それでも、中心部すらまともに見えなかった4年前に比べると雲泥の差です。



2017年2月4日 ED103S+マルチフラットナー1.08×DG(D103mm, f859mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用, ISO100, 露出900秒×8コマ
ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

処理の結果、ようやく名前通りの立派な姿を現してくれました。撮影地点の北には渋谷・新宿が控えているため、北天の天体は光害にまみれて撮影&処理が至難なのですが、どうにかなったようです。

*1:逆に言えば、常に薄暮の中で撮っているようなものですが……orz