……というわけで、「BORG55FL+レデューサー7880セット」のレビューというか、実際に使ってみての感想などを簡単に。
良い点
なんといっても、やはりF3.6という明るさは魅力です。イプシロン光学系などの反射系と違って光軸の心配をしなくていいのもうれしいところ(ただしスケアリングの狂いには敏感です)。明るい屈折系としてはFSQやVSDがありますが価格差が大きいですし、カメラレンズと比較すると特性が素直です。直接の競合はないのではないかと思います。
200mmという焦点距離もありがたいところで、特に広い範囲を移すのが苦手なAPS-Cにとっては唯一無二の存在です。
星像はシャープで、隅までほぼ点像を保ちます。左右で星像の形が異なりますが、それこそスケアリングの狂いでしょう*1。
周辺減光は、鏡筒が明るいだけにそれなりの大きさですが、光量の分布は非常に素直で、補正はやりやすいだろうと思います。カメラ側のミラーボックスによるケラレがほとんど見られないのも見事で、きれいに光が回っています。
悪い点
悪い……というか、この製品に限らない話だったり、慣れの問題が大半なのですが。
一つ目は、上の記事でも書いた鏡筒の短さに起因する問題。とにかく、文字通り「つかみどころ」がなく、鏡筒の固定方法には頭を使います。もしこれから買う/使うという方は、カメラやヘリコイド等の固定ネジと干渉しないような固定の仕方を、様々なケースを想定して現物合わせしながらよく検討するべきでしょう*2。
二つ目は、製品の特性と裏表の関係にあるのですが、ピント合わせが非常にシビアなこと。
明るい鏡筒なので「ジャスピン」の範囲が非常に狭く、しかもここにわずかとはいえ色収差の要因が加わってくるので、目障りなハロが生じないようなピント位置を探るのは困難を極めます。
私は普段、BackyardEOSを用い、数値で表された星像の大きさを元にピント合わせを行っているのですが、これだけでは追い込みが不十分な印象です。試し撮りしながら追い込んでいくしかないのかも……。
三つ目は、なまじ星像がシャープで小さい分、ライブビューで星が確認しづらいこと。赤道儀のアライメントのとき、ターゲットの恒星が視野内に入っているのかどうかが判断できず、試し撮りをしながら確認する羽目になりました。一度、星の位置が分かってしまえば問題ないのですが、ちょっと面倒なのが正直なところです。
そして最後に、どこを撮っているのか分からなくなりがちなこと。「撮って出し」では星雲がほとんど見えない都会ならではかもしれませんが、写野が広めな分、写る星の数も多くて、今回のように特徴的な星の配列に乏しい領域だと「迷子」になりがち。AstroTortillaやAll Sky Plate SolverなどのPlate solverを使えば少しはマシになるでしょうか……?