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太陽活動領域2673

9月6日、太陽面で11年ぶりの規模の巨大フレアが発生しました。8日には、それに伴う磁気嵐によって様々な障害が起こるのではないかということで、散々ニュースになっていたので、普段太陽に興味のない人たちも気にしていたのではないかと思います。

太陽フレアの発生には局所的で強力な太陽磁場が関係していることが知られていて、こうした磁場によってフレアなどを発生させうるような領域を太陽活動領域(AR)といいます。活動領域はアメリカ海洋大気庁 (National Oceanic and Atmospheric Administration, NOAA)によって番号が付けられていて、今回の巨大フレアを引き起こした領域には2673(または12673)という番号が振られています。

活動領域には磁場が関係しているため、同じく磁場と関係の深い黒点を伴うことがしばしばです(「黒点上空には太陽活動領域が存在するが、太陽活動領域の下層に必ず黒点が存在するわけではない」点に注意)。活動領域2673も、複雑な構造を持った巨大黒点を伴っています。

太陽は27日で自転するため、6日にフレアを起こした活動領域もずいぶん移動してしまっているはずですが、まだなんとか観測できそうだったので、9日の日中、望遠鏡を引っ張り出してみました。



2017年9月9日 ビクセン ED103S(D103mm, f795mm) SXP赤道儀
Baader AstroSolar Safety Film(眼視用)使用
Canon EOS Kiss X5, ISO100, 露出1/500秒×8
Autostakkert!2でスタッキング後、Registax6でウェーブレット処理

まずは太陽の全景から。活動領域2673は右端に見えています。その上方にある大きな黒点のあたりが2674、その左が2679です。中央付近に小さな黒点が2つ見えていますが、このあたりが2678です。



2017年9月9日 ビクセン ED103S+Meade 3x TeleXtender(D103mm, f2385mm) SXP赤道儀
Baader AstroSolar Safety Film(眼視用)使用
ZWO ASI120MM, 15ms, 約3000フレームをスタック
AviStack2でスタッキング後、Registax6でウェーブレット処理

こちらが活動領域2673の黒点群。非常に複雑で発達した形状を持っている上、黒点周辺が明るくなっています。これは白斑といって、周囲より温度の高い領域です。同じく磁場に関連しているといわれており、このことからもこの領域に非常に強い局所的磁場が発生していることがうかがえます。



なお、ちょうど一週間前の9月2日にも太陽面を撮影していたのですが、このときは2673は小さな黒点を伴っているだけで、むしろ2674の方がはるかに立派な姿を見せていました(写真左)。それがこんなに一気に成長してしまうのですから分からないものです。