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年末の後始末

みなさま、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。


さて、昨日のエントリで12月30日にも出撃したことに触れましたが、大晦日から元旦にかけて、その時に撮影したものの画像処理をやっていました。

30日は、28日とほぼ同時刻に公園に機材を展開し、19時ごろから撮影開始。ターゲットはさんかく座の渦巻星雲M33です。これも以前撮ったことのある対象ですが、カタログの数値(5.5等)の割に淡く「証拠写真」以上のものにはなりませんでした。これを、もう少し見栄えがするよう撮り直そうと思ったのです。

しかし、この日は28日に比べて空の透明度が悪く、そのせいで光害の影響も顕著。しかも年末とはいえ早い時間帯なので、元々光害は激しくなりがちです。果たしてこの状態で淡いM33がまともに写るかどうか……。とはいえ、いまさら機材を組み替えてターゲットを変更するわけにもいかないので、なんとかなると信じて強行します。



えぇと……スゴクウツリワルクネ?


その場の「撮って出し」では中心部がごくうっすらと確認できるだけ。覚悟していたこととはいえ、なかなか厳しいことになりそうです。


22時前からはもう1つのターゲット、オリオン座の馬頭星雲を狙います。こちらも2013年の年末以来。当時は写ったこと自体で喜んでいた記憶がありますが、それから3年。さすがにもう少しきれいに撮りたいものです。



こちらはさすがに「撮って出し」の状態でも対象が確認できます。これだけ見えていれば、あとはどうにでもなるでしょう*1


今回は先のものも含め、ISO100、15分の設定で撮影していますが、深夜に近づくに従って光害の程度は軽くなって、バックグラウンドは明らかに暗くなっていきました。もし深夜から撮り始めたなら、20分まで露出時間を延ばしても行けそうでしたが……この日も28日同様、日付が変わるころから雲が湧き出して空を覆い始めましたので、結果的には欲張らずに正解でした。

長時間露出を行うやり方は、こういう突発的な天気の変化などに弱いので、このあたりはバランスですね。


そして、撮ってきたデータを大晦日から元旦にかけて処理。まずは組しやすいと思われた馬頭星雲から。



2016年12月30日 ミニボーグ60ED+マルチフラットナー 1.08×DG(D60mm, f378mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出900秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

3年前とは比べ物になりません。馬のシルエットの背景となっている散光星雲IC434の周辺に広がる淡いガスも見えますし、暗黒星雲の濃淡もある程度わかります。最微等級3等前後の東京都心からの撮影でこれなら、自分で言うのもなんですが上出来ではないでしょうか。

一見、背景が色ムラっぽく見えますが、この領域は星間ガスが大量にあって散光星雲、反射星雲、暗黒星雲が入り乱れているので、本当にこういうもののようです。一部、フラットが合ってない可能性もありますが、全体にわたってカラフルすぎて、正直判断がつきません。その意味で、空の暗いところで分子雲とか狙っている人たちは本当にすごいと思います。




2016年12月30日 ミニボーグ60ED+マルチフラットナー 1.08×DG(D60mm, f378mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出900秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

お次はM33。こちらは案の定、光害カブリがひどいうえ、散光星雲と違って「色を手掛かりに星雲を抽出、強調する」といったことができないので、処理には非常に苦労させられました。それでも、ひとまず腕がしっかり見える程度にはなったので、とりあえず満足すべきなのでしょう。2015年当時のものよりは確実によくなっています。なお、今回は、清涼感を出すために腕の部分がやや青っぽくなるよう調整をしてみました。よく見かける処理ですが、多少は雰囲気が出たでしょうか?

しかしそれでも、そもそもが淡くてメリハリに乏しい星雲なので、絵としてはインパクトに欠ける印象です。あとはナローバンド撮影などを併用して、腕の中のHα領域を目立たせることができれば、また印象は違ってくるのだろうとは思います。

*1:この時点で、すでに判断基準が普通の人から乖離しているような気はしますが、気にしたら負け。