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都心でHαで無双だった件

先週末は東京も初雪が舞ったようですが、13日の夜はその名残もなくきれいな快晴。月も夜半前には沈みますので、夕食後、いつもの公園に出撃してきました。


今回の狙いは、前回撮影した「かもめ星雲」および「M81 & M82」について、Hα画像を撮り足すことです。「かもめ星雲」は典型的なHα線で輝く散光星雲ですし、M81にはHα領域が存在、M82も中心部からHα線で輝くジェットぐ噴き出していることが知られていますし、被写体としてはうってつけです。


撮影にはOPTOLONG H-Alpha(7nm)フィルター*1を用います。

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このフィルター、見た目はほぼ完全に鏡です。640nm周辺の光しか通さないのですから当然といえば当然なのですが、これで星の光なんかが写るのかどうか不安になります。


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ともあれ、これをカメラに取り付け、まずは「かもめ星雲」を狙います。露出の見当がつかないので、コマ当たりの露出時間は前回撮影時と同じ15分とし、感度はISO200*2に設定して撮ってみたのですが……


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撮影画像を現場で見てビックリ。軽くレベル調整をしただけで星雲の形がハッキリ浮かび上がってきています。分かってはいましたが、さすがはなろうバンド*3ナローバンドの威力。これなら後処理も楽そうです。


雲の襲来を避けながら8コマ確保したところで選手交代。


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今度はED103Sに乗せ換えてM81 & M82を狙います。


ところが、ここにたどり着くまでがひと苦労。赤道儀起動後、自動導入のために1等星などを導入してアライメントを行うのですが、焦点距離が800mmほどもあって視野が狭いため、目的の星が視野内に入ってこないのです。ファインダーの調整が割といい加減だったのも災いしました。

しかも、フィルターのせいでライブビューで確認しづらいほど星像が暗いため、星が視野内に入ってもそれが目的の1等星なのかどうか確信が持てません。最終的には、ちょこちょこ撮影しながら1等星近くの特徴的な星の配列を見出し、それを元に1等星を導入、アライメントを行いました。これだけで30分ほどは浪費したでしょうか。


しかも、撮影途中で何度も雲に妨害され、天文薄明開始までに4コマを確保するのがやっとでした。こればかりは仕方ありません。



帰宅後は、せっせと画像処理……といっても、実質R画像だけの処理なので簡単です。

RAWファイルを現像後に三色分解し、R画像以外を廃棄。コンポジット後にレベル調整と背景のカブリを除去して軽くシャープネス処理などをかけたのち、先日仕上げた画像のR画像とブレンドします。ブレンドはバランスを考えて1:1で*4。最初はR画像をHα画像と丸ごと入れ替えるのも考えたのですが、それなりに不自然になりそうだったので止めました。


ブレンド後は、先日の画像のG画像、B画像と再び合成して……出てきた結果がこちら。


かもめ星雲(わし星雲) IC2177
2019年1月4日(RGB)&1月13日(Hα) ミニボーグ60ED+レデューサー0.85×DG(D60mm, f298mm) SXP赤道儀
RGB画像:Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出900秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
Hα画像:Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO200, 露出900秒×8コマ, OPTOLONG H-Alpha(7nm) for EOS APS-C使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

まずは先日無理やり炙り出していた「かもめ星雲」ですが、星雲の出方が段違いです。過去の画像にあった、いかにも「無理をしました」という感じの不自然さが減っています。都心でこれだけ写ってくれると楽しくなりますね。


M81 & M82
2019年1月4日(RGB)&1月14日(Hα) ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
RGB画像:Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出1200秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
Hα画像:Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO800, 露出900秒×4コマ, OPTOLONG H-Alpha(7nm) for EOS APS-C使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

そしてこちらはM81 & M82。M81の腕にあるHα領域と、M82中心部から噴き出すジェットがより明瞭になっています*5。特に、銀河の腕にあるHα領域は、通常のデジカメでの撮影では赤く表現することが難しいもので、Hα画像をブレンドしたからこその結果といえるでしょう。



……というわけで、RGB+Hαの威力の一端を実感できたわけですが、実際に撮影してみて要注意事項も見えてきました。


最大の問題はやはり光量の少なさで、ピント合わせや構図の確認が通常撮影より格段に面倒になってきます。最低でもファインダーはちゃんと調整しておくべきで、ピント合わせにはバーティノフマスクが欲しいところです*6


しかし一方で、背景レベルが上がりづらいことから、やろうと思えばかなりの長時間露出が可能になりそう。普段の撮影の調子で、背景レベルがかなり上がってくるところまで露出を続けたら果たしてどこまで写るのか、興味のあるところです。

*1:ところでこのフィルター、いつ買ったのか、まったく記憶にありません。ブログやTwitterのログを掘り返しても判然としませんし……生えてきたんでしょうかね?(ぉぃ

*2:EOS KissX5の場合、ISO100だと若干イレギュラーな処理が入っているようなので、露出時間に制限されない条件下であればISO800までは上げて大丈夫なようです。

*3:タイトル含めこれが言いたかっただけなんてことは……げふんげふん。

*4:位置合わせの簡便さを考えて、背景濃度を合わせたのちにステライメージで自動位置合わせ→加算平均を行っています。フォトショップ等でブレンドした方が自由度ははるかに高いですが、位置合わせが面倒で……。

*5:Hα領域の方は、縮小したこの画像では確認しづらいですが。

*6:今回は、ライブビュー上で複数フレームをスタックするBackyardEOSの機能に救われました。