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限界クリスマス

22日はちょうど金曜日ということもあって、職場で忘年会。ですが、きれいに晴れた空も気になるっ……!翌日以降の気圧配置を考えると、土曜の夜は快晴になるかどうか微妙だし……ということで、一次会で失礼して、夜半頃を狙っていつもの公園へ。

公園への移動は徒歩+手押し台車なので、多少アルコールが残っていても「酔っ払い運転」にならないのが助かります(笑)


この夜狙うは、季節ものということでいっかくじゅう座の「クリスマスツリー星団」ことNGC2264の周辺。ハッブル宇宙望遠鏡の写真ですっかり有名になった「コーン星雲」*1もここにあります。

この辺は「ばら星雲」の北側にあたり、色とりどりのガスが広がって本来大変賑やかな領域ですが……このあたりをとらえた写真を見てみると「ばら星雲」とはまるで比べ物にならないほど淡く、撮れるかどうかギリギリの印象でした。

それでも、やってみないことには分かりません。「なるべくあきらめない」「なせばたいていなんとかなる」なのです*2


予定枚数を取り終えた後、天文薄明開始までまだ1時間半ほどあったので、万が一「クリスマスツリー星団」が残念な結果に終わった場合の保険として、鏡筒をED103Sに載せ替えて春の天体を狙います。

まずはりょうけん座の球状星団M3。これを撮ろうとすると、なぜか毎度トラブルに見舞われたり雲の襲来を受けたりで、まともに撮れたためしがない因縁の相手です。今回は特にトラブルもなく、スムーズに撮影が進みました。


そしてさらに、薄明開始までの20分ほどの間にかに座の散開星団M67を。これは以前撮ったことのある対象ですが、写りに不満があったのでこの際撮り直しです。前にも書きましたが、散開星団は短時間で撮影できるので、こういう隙間時間を活用するのにぴったりです。

開けてビックリ

帰宅後、撮影画像を確認してみると……M3とM67については目論見通りきれいに撮れていたのですが、問題はクリスマスツリー星団の方。



……???
コンポジットすれば見えるかな……?




こ れ は ひ ど い orz


以前撮った「ハート星雲&胎児星雲」や「勾玉星雲」も大概ひどかったですが、今回のは輪をかけてひどいです。淡いのは分かっていましたが、1枚撮りどころかコンポジット後でも星雲の存在が全く分かりません。

階調を極端に切り詰めるとようやく存在が分かるようになりましたが、今度は背景のカブリやミラーボックスによるケラレが無視できないレベルに。RGB分割フラット補正である程度は押さえ込めましたが、四隅はどうにもならないのでバッサリとトリミングしました。ほどほどのところで諦めも肝心です。

リザルト

というわけで、出てきた結果がこちら。



2017年12月23日 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出900秒×12コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

とりあえず、赤く輝く水素ガスでできた「クリスマスツリー」の形が分かる程度にはなりました。無茶な処理で色が濁ってますし、ディテールも荒れまくってて「証拠写真+α」程度のものでしかありませんが、形が分かるだけでも御の字かもしれません。ちなみに「クリスマスツリー」のてっぺんにある円錐状の暗黒星雲が「コーン星雲」です。

周辺にはさらに淡いガスが広がっているのも分かりますが、これらをきれいに浮き立たせようと思えば、Hαでのナローバンド画像をブレンドするなどの工夫が必要になってきそうです。*3




2017年12月23日 ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO200, 露出270秒×8コマ+90秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

次に、因縁の相手、りょうけん座のM3。実は大昔に一度撮ってはいるのですが、ガイドなしで撮ったので微妙に流れている上にピントが甘く、不満な写りでした。今回、ようやくモノにできた気がします。

多段階露出を行って中心部が飛ぶのを抑えた上で、最大エントロピー法による画像復元により星々の粒状感をアップ。さらに、デジタル現像時に「色彩強調マスク」を適用することで星の色を残すように処理してみました。それなりに雰囲気ある仕上がりになったと思います。




2017年12月23日 ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出180秒×4コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

最後はかに座のM67。こちらも処理自体はM3とほぼ同様です。有名なプレセペ星団(M44)の陰に隠れて地味な印象ですが、みっちりと星が密集していて案外見ごたえがある対象。

こちらも以前撮影したことがあるのですが、当時の撮影や処理の仕方がまずかったのか、おそろしく地味な仕上がりになってしまっていました。今回は多少星の色も残って、ようやく散開星団らしく見えるようになりました。

*1:Corn(トウモロコシ)ではなくConeなのに注意

*2:http://d.hatena.ne.jp/hp2/20171225/1514204342

*3:もっとも、ナローバンドだと反射星雲の類はあまり写らないので、この領域の美しさを再現するにはそれだけでは足りなそうな気はします。