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上げたのは5日後

今週頭の日曜日、移動性高気圧に覆われて気流が比較的安定してそうだったこと、そして大赤斑がちょうど正面を向くタイミングだったことから、惑星撮影システムを引っ張り出して木星を狙ってみました。衝はとっくに過ぎたとはいえ、宵の空での高度はまだまだ高く、気流の条件を考えたら今ぐらいの時期の方がかえって撮影にはちょうどいいかもしれません。


高度があるので、今回はあえてウェッジプリズムは使用しない方向で。実のところ、可変ウェッジプリズムの使い方にほとほと悩んでいるのが実情です。これを正しく使うには、水平線を基準として対称にプリズムを動かさなければならないのですが、手動なだけに対称に操作しているつもりでも角度がずれて、かえって変な方向に色分散が発生したりしがちです。おまけに赤道儀なので、基準となる水平線は視野に対して時間とともに回転していくわけで……。

さらに、プリズムが入るせいで非点収差が発生するらしく、焦点内外像がきれいな同心円にならないために光軸調整すら困難な状況に。みなさん、どうしてるんでしょう?意地でも使いこなしたいところですが、想像以上に難易度が高いです。プリズムをもう少しカメラ側に近づけた方が調整しやすいのかも……。


ともあれ、そんな状況なので、とりあえずは素直な光学系でどこまで行けるか再確認の意味で撮影に臨みます。



2016年5月22日20時18分2秒(日本時間)
セレストロンEdgeHD800+Meade 3x TeleXtender(D203mm, f6096mm) SXP赤道儀
ZWO ASI120MC, 30ms, 2000フレームをスタック

というわけで、出てきたのがこれ。本当はいつもと同じくモノクロカメラでL画像を撮影し、LRGB合成するつもりだったのですが、モノクロ画像の方がスタッキング→ウェーブレット処理の段階で継ぎ目破綻してしまい、どうにも回避できなかったのでカラーカメラの映像のみを処理しました。

正直、解像度やノイズ面でどうかと思っていたのですが、相手が明るい木星だけに、アラもそれほど目立たず、何とかなった感じです。ASI120MCでこれだけ写るのですから、最近のASI224MCとかASI290MCなら、もはやLRGB撮影などしなくても結構それなりのものが撮れそうな気がします(^^;


大赤斑も狙い通りいい位置にいてくれて、これまでの自分の撮影の中では、構図を含めてベストショットの類ではないかと思います。大赤斑の芯も見えますし、大赤斑後方の南赤道縞の擾乱や、北熱帯の白斑も目につくところ。南南温帯の小さな白斑もなんとか存在が分かります。ほぼ同じ時間に撮られた「月惑星研究会」への報告写真と見比べるとなかなか面白いです。


ちなみに今回は、Registax6でのウェーブレット処理時に「Use Linked Wavelet」にチェックを入れて使ってみました。レイヤの割り当て方や処理方法が通常と若干異なるようで、本家サイトを見る限り、ハマればかなりの威力を発揮しそうなセッティングではありました。ただ、効果がかなり強く出るので、これまでは敬遠していたのです。

しかし、効果が強く出ることを意識してスライダーを操作し、「Denoise」もより積極的に使うようにすればいい結果になるようです。少なくとも今回の場合、通常の処理よりは模様のディテールが無理なく出てくれました。