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木星(実質)初撮り

現在しし座にいる木星ですが、3月9日に衝を控え、ようやく夜半頃に南中するようになってきました。ここまでは晴れても冬型の気圧配置で、肉眼で空を見上げただけでも星が激しく瞬き、お世辞にも惑星観察・撮影に向いた気候ではありませんでした。

実際、先月に1度、撮影に臨んだことがあったのですが、光軸合わせしようにもジフラクションリングすら不鮮明だわ、ピントを合わせようにも木星の模様が終止揺れ動いて合焦位置が判断できないわで、とてもここに出せるような写真に仕上がりませんでした。

しかし昨夜は、移動性高気圧がやってくる予想。月が大きくてどうせ他のものは撮れませんし、久しぶりに惑星撮影システムを引っ張り出しました。

この拡大撮影システムですが、昨年夏に拡大系の構成を少し変更しています。具体的には、これまで接眼部にバローレンズを装着したのち、その後ろに延長筒やフリップミラーを取り付けていたところ、延長筒やフリップミラーはボーグのパーツを使って全てねじ込み式で固定し、バローレンズには力がかからないようにしています。こうすることで、時間経過や姿勢変化に伴ってバローレンズの接続部分から光軸がずれるのを防ぐことができます。


慎重に光軸合わせをしたのち、鏡筒を木星に向けてみると、思いのほか像が安定しています。冬場は大体、木星の円板像自体が伸び縮みするように震えているのが常ですが、昨夜はそこまでひどくありません。木星の模様でピントの山もちゃんとつかめます。

自宅は電車の線路から数十メートルの位置にあり、しかも都心の悲しさ、午前1時近くまで上り下りの電車がひっきりなしに通って望遠鏡を激しく揺らしていくのですが、その合間を縫って何セットが動画を撮影します。


こうして撮影した動画をAutostakkert2!でスタッキングしたのち、Registax6でウェーブレット処理、モノクロ画像の方はさらにステライメージ7で最大エントロピー法による画像復元を行い、カラー画像とLRGB合成を行ったのが下の写真です。



2016年2月27日0時14分3秒(日本時間)
セレストロンEdgeHD800+Meade 3x TeleXtender(D203mm, f6096mm) SXP赤道儀
L画像:ZWO ASI120MM, 25ms, 1200フレームをスタック
RGB画像:ZWO ASI120MC, 25ms, 2400フレームをスタック

今回は、L画像は16bitで撮影しています。fpsは落ちるし、ファイルサイズも大きくなりますが*1、この方がウェーブレット処理の際にトーンジャンプが起こりにくく、画質面で圧倒的に有利です。

で、この写真ですが、過去に撮った木星の写真と比べても、もっともよく写った方ではないかと思います。やはり光軸調整と、そしてなによりシーイングが大事と痛感させられます。そして、なぜか自分が撮るときに限って、大赤班がこちらを向いていることがほとんどないということも(^^;

しかし解像度がこれだけ上がってくると、やはり大気差の影響が気になってきます。近々、現在注文中の可変式ウェッジプリズムが届くはずなので、これが使いこなせればもう少し質を上げられるのではないでしょうか。

*1:カラーの分と合わせて、一晩で117GB(!)もディスクスペースを消費してしまいました。