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見つめるキャッツアイ

この夏の東京はとにかく天候不順で、むしろ梅雨明け以降は雨か曇りばかり。たまに晴れ間が出ても、夜になると決まってベタ曇り or 雷雨のパターンです。オホーツク海高気圧が優勢で、天候不順の原因になる北東の湿った風が関東地方に吹き込んでくるトレンドは、しばらく解消する気配がありません。

振り返ってみると、まともに撮影をしたのは7月頭の土星や太陽面が最後。星雲・星団となると6月頭までさかのぼらないとなりません。

こうまで撮影できないと、さすがに「星欲」が溜まりまくってムラムラしていたのですが、昨夜は珍しく日が暮れるに従って晴れてきました。ただ、この日は天文薄明終了が20時9分、月の出が21時19分ということで、暗夜の時間があまりありません。また、いつ曇ってくるか分からないこともあり、いつもの公園にわざわざ出撃するのもためらわれました。

そこで、この夜は自宅前に機材を展開することに。撮影対象ですが、周囲の建物や電線で子午線付近のごく狭い範囲に視界が限られる、近くを走る電車からの振動で長時間露出が難しい、といった条件を勘案した結果、20時15分ごろに南中するりゅう座の惑星状星雲、「キャッツアイ星雲」ことNGC6543を狙うことにしました。


キャッツアイ星雲の見かけの大きさはおよそ数十秒程度*1で、木星より少し小さいくらいの大きさ。かなり小さい天体です。しかし、惑星状星雲は一般に単位面積当たりの明るさが大きいので、都心でも比較的簡単に観望、撮影できる対象です。このキャッツアイ星雲も例外ではなく、数字上の明るさは9等前後しかないのですが、ちょっと露出を長めにとるとあっという間に白飛びしてしまいます。そこで、感度をISO800*2、露出時間を10秒として多数枚を撮影する方針にしました。

露出時間を短くしたのは、上で書いたように近くを通る電車の振動を避けるという意味もあります。ダイヤを調べてみると、20時台に走る電車は上下合わせて34本。1〜2分に1本は走る計算で、そのたびに星がしっかり踊りますorz 長時間露出しなくてよかった……。


そんなこんなで振動による没コマを量産しながらも、百数十コマをどうにか確保しました。
その後、星雲が写っている中央付近のみをトリミングし、Autostakkert!2でスタッキング。Registax6でウェーブレット処理をかけたのち、ステライメージで色調を整えて最終的に出てきた結果がこちら。



2017年8月12日 EdgeHD800(D203mm, f2032mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO800, 露出10秒×120コマ, OPTOLONG CLS-CCD for EOS APS-C使用
セレストロン オフアキシスガイダー+Lodestar+PHD2によるオートガイド

楕円が組み合わさったような、複雑なガスの微細構造が予想以上によく出てくれました。以下に示す、ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された写真と見比べると、その特徴がしっかり出ているのが分かります。


(画像元:http://hubblesite.org/image/254/news/56-hubble-telescope

おまけ

最初、普通の星雲写真などと同様、ステライメージを使ってコンポジットしようと思ったのですが、自動位置合わせを行ってみると……

相変わらずこいつは……(T^T)q: どこをどうするとこんなトンチンカンな結果になるんだか。馬鹿なの?死ぬの?

処理し直し

なんとなく先の画像が気に入らなかったので、処理をやり直し。

ステライメージで気合でコンポジットして、レベル調整→デジタル現像。マトリックス色彩調整で色純度を上げたのち、Registax6でウェーブレット処理した結果……



外周のより淡い部分や、両極にある「突起」まで表現できて、よりそれっぽい姿に。画像復元をかければシャープさはさらに増すのですが、ギトギトして下品な感じになってしまうので、とりあえずはこのへんで満足すべきでしょうかね。

*1:ステラナビゲータのデータでは視直径5.8分となっていますが、これはおそらく周辺部のハロも含めた大きさ。このハロは最近の研究でようやく発見されたくらいのもので、アマチュアが地上から可視光で捉えるのはほぼ不可能ではないかと思います。

*2:EOS KissX5では、ISO800のときにシステムゲインが1e-/ADU前後となり、電荷の利用効率が最も高くなります。https://www.cloudynights.com/topic/526808-canon-600d-testing-results/ 今回は露出時間が短く、光害の影響を気にしなくていいので、変換効率を優先させています。