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中古家具利用のすゝめ

突然ですが、上の写真は現在の自室のPC作業環境です。デスクはイタリア ファントーニ社のfantoni GF。これに一般的なPC用チェアを組み合わせています。

この椅子、買ったのはずいぶん昔*1のことで、もはやメーカー名すら忘れてしまいましたが、大した価格ではなかったと記憶しています*2。これまで特に不自由なく使ってきていたのですが、さすがにあちこちガタが出てきました。先日、高さを変更しようとした時など、とうとう主脚の部分から謎の部品が外れてくる始末。そもそも高さの変更が、手動&ノブ付きネジで側面から主脚の心棒を押さえつけるという、ガス圧による調整が主流となった今となってはあまりに古く、利便性に欠ける方式という時点で、そろそろお役御免にしてもよさそうな感じです。


というわけで、8月に入ってから新しい椅子の選定に入りました。家ではPCの前に座っている時間が長いので、せっかく買い替えるのなら、身体を守るためにもここはある程度奮発したいところですが……アーロンチェアとまでは言わずとも、名の知れたメーカーの製品でそこそこマトモそうなのを選ぶと、あっという間に5万、10万を突破してしまう雰囲気です。価格に見合う性能を備えているのだろうとは思いますが、ちょっと二の足を踏んでしまいます*3


そこで目を付けたのが中古オフィス家具です。試しに中古オフィス家具を扱っている店のサイトを覗いてみると、高級チェアがかなりの安値で売られています。椅子など、使っているうちにどうせ使用感は出てくるのですし、よほどボロボロでない限り、中古でも大きな問題は出ないでしょう。

今回は、全国に実店舗を展開している「オフィスバスターズ」を利用することにしました。実店舗があれば、現物の状態や座り心地などを実際に確認できるので安心です。

椅子の選定

さて、新しい椅子の条件ですが、まず価格は「2〜3万円程度が理想で、上限は5万円程度」としました。中古でこの価格帯だと、新品で十数万円相当の椅子まで視野に入ってきます。アーロンチェアなど人気のある商品はさすがに無理ですが、それでもワークチェアとしては「中の上」〜「上の下」に相当するランクです。

次に「肘掛けがないこと」*4。一般に、PC作業だと肘掛けがあった方が良いといわれます。しかし現在、こちらではマウス操作などでよく使う右腕をエアリアのCA-600という可動式のアームスタンドで支えています。これがなかなか優れもので、腕を大きく振ってもアームレストがしっかり追従してくるので、下手な肘掛けよりよほど役に立ちます。そもそも、肘掛けがあると立ったり座ったりするときに邪魔だったり、席を空けるときに椅子を机に収められなかったり、胡坐をかけなかったり(ぉぃ、なにかと不便です。

また、椅子を机に収めるという意味で「椅子が机の内寸(幅730mm)に無理なく収まること」も条件になります。幅680mm前後なら、余裕もあってさらに理想的でしょうか。欧米メーカの大きめの椅子など、脚が大きく広がっていて意外と幅を取るものもあるので、個人的には要注意です。

そして、これは完全に個人の好みの問題ですが、「背もたれはハイバックで、できればメッシュ素材であること」も条件としました。今の椅子はローバックで、背もたれに寄りかかっても楽ではないので、できれば肩まで支えてくれる椅子が欲しかったのです。一方で、背もたれが肩のあたりまであるとそれなりに蒸れそうなので、メッシュ素材のものが良さそうです。


こうした条件を基に、その時点で都心近くの店にある在庫を探してみると、条件を満たすものとして、岡村製作所Baron(バロン)Visconte(ヴィスコンテ)Fluent(フルーエント)(←これのみ新品)、内田洋行REGIA(レジア)コクヨAIRFORT(エアフォート)などが引っかかってきました。


このうち、コクヨのAIRFORTは特徴である「エアランバーサポート」*5の耐久性がちょっと心配ですし、金属地むき出しの脚が屋内で使うにはちょっと寒そうということで脱落。

Baronは国産高級ワークチェアというと真っ先に名前が挙がる椅子の1つですが、中古のものは、きしみが目立つ個体もあるとの噂。なので、まずは店頭で実物を確認してから……と思っていたら、残念ながら在庫を調べていたその夜のうちに売れてしまいました。まぁ、縁がなかったということで、これは仕方ないでしょう。

Fluentは候補の中で唯一の新品。中古に比べて割高なのは間違いないですから、いいものがどうしても見つからなかった場合の保険ということで、これは当面保留です。


ということで、実質、岡村製作所のVisconteと内田洋行のREGIAの比較になりました。

現物の確認

翌8月10日の木曜日。職場が休みに入った一方で、店の方はちょうどお盆休み前最後の営業日でしたので、それぞれの在庫がある店舗(日本橋店と品川・三田店)を回って実物を確認してみました。


Visconteの方は脚周りの直径がキャスター抜きで700mmもあり、やはりちょっと大きすぎる印象。椅子全体のサイズとしてはREGIAと大差なく、座り心地も悪くなかったのですが、逆に言えば脚周りのサイズ差を覆すだけの決め手に欠けます。


一方のREGIAの方ですが、脚周りの直径はキャスター抜きで680mmとやや小型。その一方で座面幅は510mmと広め*6でゆとりがあり、座り心地もくせのないものです。無駄に座面がふかふかだったり、リクライニングと連動して座面がやたら後傾したり*7ということもありません。

調整可能箇所は座面の上下、リクライニングの強弱、リクライニング角度の固定くらいで、このクラスの椅子としては控えめな部類ですが、普段使いには全く問題なし。腰を支えるランバーサポートもついていて、機能的には必要十分です。

飛び道具的なキャッチ―な機能こそないですが、めったに使わないような調整機能をやたらと備えているよりは、むしろこのくらいの方が好ましく思います*8


商品の状態としては、背もたれに若干のスレと脚に小傷が複数あるものの「中古品なりの使用感」といえる程度の軽微なもので、さして目立つものではありません。

店が平日のみの営業ということで、この日を逃すと実物をチェックする機会もありませんから、上記のようにREGIAに大きな問題がないことが確認できた時点で購入決定です。


ちなみにこのREGIA、新品だと定価で104600円〜という結構なお値段の椅子なのですが、今回買った中古品は、なんと18000円という激安価格。消費税、送料含めてもわずか21060円で済みました。


なお、オフィスバスターズは顧客が法人メインということもあり、ネット経由で買う場合は、個人であっても「問い合わせ→見積書発行→発注書送付→指定口座への入金」といった手順を踏む必要があります。しかし店頭で買う場合は特別な手続きは必要なく、普通に現金で購入できます。配送依頼も同様です。

店頭に客はあまりいないし、店構えも割とそっけないので敷居が高い感じがしますが、個人でも邪険に扱われたりするようなことはありませんので、勇気をもって実店舗を利用してみましょう。

まぁ、天文クラスタの人なら、客がいなくて店構えがそっけなくて入りづらい店なんて、望遠鏡販売店で散々経験済みで鍛えられてるでしょうから、大した問題ではないですよね、きっとヾ(@°▽°@)ノ

現物到着

そして本日、お盆休みを挟んだために時間がかかりましたが、ようやく購入した椅子が届きました。

部屋の中に置いてみるとそれなりの存在感ですが、大きさ的には十分許容範囲。レビューは……やろうかと思いましたが機能面はウェブサイトを見れば足りますし、座り心地等については個人の好みの占める割合が大きいので、やめておきます。

ただ、本当に個人的な感想としては、軽やかな座り心地、包み込むような背もたれの安定感とランバーサポートによる腰の支え、柔らかすぎない座面など、かなり好みで満足です。

まとめ

というわけで今回、中古家具というのを初めて利用してみたわけですが……これだけ新品と中古で価格差があると、新品で揃えるのがバカバカしくなってきます。特にオフィス家具の場合、中古品といっても、たいていは会社で使われていたものですので、極端にひどい状態のものはない感じ。同じ金額を出すのなら、新品を買うよりは中古品を買った方が満足度は遥かに高いように思います。

ただし、特に椅子の場合は実際に座ってみることを絶対にお勧めします。個々の製品状態のこともありますし、人によっても座り心地の感じ方や好みは違いますので、ネットの情報だけだとちょっとした賭けになります。高価で高機能だからと言って、その人にとって「いい椅子」かどうかは別問題ですし。

中古オフィス家具を扱っている店は、一般に法人向けの需要が大半のため、その多くが平日にしか営業していないのが難点ですが、椅子の座り心地だけならメーカーのショールームや大きい家具屋で確かめられる場合もあるので、そうしたところを探してみるのもいいかもしれません*9

*1:20年近く使っているような気も……。

*2:それでも1万5000〜2万円前後していたような覚えはあります。

*3:同じ金額を出すのでも、望遠鏡関連だとまだ抵抗が少ないあたり、順調に毒されてるなぁと思います(^^;

*4:肘掛けのない椅子は人気が低めの上、元々パーツ数が少ないので安めなのもうれしいところです。

*5:内蔵されたエアポンプを操作することで、エアバッグがふくらみ、どんな背骨の形状にもフィットするというもの

*6:座面幅505mmのVisconteと比べるとほとんど差がありませんが、Baron(495mm)やFluent(480mm)とはそれなりに差があります。

*7:こういう椅子をしばしば見かけますが、作業用の椅子として考えると、不安定であまり好きにはなれません。

*8:ずっと同じ姿勢で何時間も座っているわけではないですし、なまじ細かいカスタマイズが可能で、特定の姿勢に極端に最適化されてしまうような調整機能はかえって邪魔なような気がします。

*9:もっとも、この手の家具が充実していた秋葉原ヤマギワ リビナ館はなくなってしまいましたし、各社のショールームショールームで事前予約や受付が必要だったり、立地がやたらと立派だったりで、むしろこちらの方がハードルが高かったりするのですが( ̄w ̄;ゞ