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撮影に持参する機材とパッキング

先のエントリでちょっと重めの話をしたので、気分を変えて現時点での手持ち機材の紹介を改めてしておこうと思います。今回はとりあえず、普段近所の公園に出撃する際に持ち出している機材や道具の話。天体撮影をある程度本格的にやろうとしたとき、どのくらいの荷物になるかの一つの目安としてご覧ください。

荷物全景

これが、普段私が撮影に持っていく荷物の全景です(撮影用鏡筒がビクセン ED103Sの場合)。持っていく鏡筒の種類によって多少の増減はありますが、おおよそはこんなもの。(7)のパソコンや(15)の双眼鏡の大きさから大体の量が推定できると思いますが、かなりの大荷物なのが分かると思います。総重量をきっちり測ったことはありませんが、おそらく70kg前後はあるのではないでしょうか。これを毎回、後述のように「人力」で運搬しているわけです(^^;

これでも街なか撮影の分、アウトドア用品がほとんどなしで済んでいるので、郊外に遠征に行く人に比べたら少ない方のはずです。

荷造りにおいて心がけているのは、軽量化ももちろんですがそれ以上に「関連する物品はまとめる」、「忘れ物の可能性を減らす」という点です。現地についてから設営に手間取って貴重な時間を浪費する、忘れ物をして撮影自体ができなくなる、というのが最悪ですから、こうなることを極力避けるようなパッキングにしています。

(1) 撮影鏡筒本体

ED103Sの場合、鏡筒はエツミの「ハードスタンドケース100」(販売終了品)に収納して運んでいます。本来はスタジオ撮影用の照明スタンドなどを入れて運ぶためのケースですが、サイズがちょうどいいため流用しています。

撮影鏡筒としてミニボーグ60EDなどを使用する場合は、ケンコー・トキナー「aosta テレレンズケース330」に収納。一方、EdgeHD800を使用する場合ですが、これを何らかのケースに収納するとなるとあまりに大きくなりすぎるので、やむをえずむき出しで運搬しています。

なお、運搬の際には、その夜の撮影計画に応じて鏡筒にレデューサーやフラットナーなどの補正レンズ、回転装置、Tリングを事前に取り付けておくと、現地での手間が省けるうえに、忘れ物の危険性も減るのでお勧めです。

(2) 三脚

ケースの目的外使用第二弾。赤道儀用のSXG-HAL130三脚の収納には、リーベックの「RC-30」という三脚ケースを使用しています。同社のRT30Bというビデオカメラ用三脚のケースなのですが、これが内寸180mm×160mm×850mmと、SXG-HAL130三脚のサイズ(直径150mm 長さ840mm)にピッタリ。作りはしっかりしていますし、価格もビクセンの純正品に比べると安いのでお勧めです。

(3) 赤道儀、ハーフピラー、バランスウェイトなど

ケースの目的外使用第三弾。赤道儀関連の収納には、スタジオ撮影用ストロボシステムなどを扱っているコメットの「布ケース CB用」を使用しています。元々が業務用ストロボ電源のような精密機器&重量物のためのバッグなので、頑丈さやクッション性は折り紙つきです。


中にはSXP赤道儀本体のほか、コントローラであるSTAR BOOK TENと接続ケーブル、電源ケーブル、バランスウェイト、ハーフピラー、鏡筒を取り付けるためのアリミゾ各種、アリミゾ固定用のキャップボルトと六角レンチなど、赤道儀周りの部品一式をまとめて収納しています。

かなりの重さになりますが、持ち上げるのは台車への上げ下ろしの際だけですし、その不便さよりも関連するものが一か所に集まっていることの利便性の方が勝ります。忘れ物を防止したり、設営をスムーズに行ったりするためにも、関連したものをまとめておくことは重要です。

(4) 電源類

大きい方が大自工業のSG-3500LED、小さい方が同じく大自工業のSG-1000です。

SG-3500LEDは12V, 20Ahの鉛蓄電池で、赤道儀の駆動用。使っている人も多いと思います。安価で手頃ですが、8.3kgという重量が最大の欠点です。最近では比較的軽量なリチウム系のバッテリーが出てきていますが、これはこれでかなり割高の上、長持ちさせるための充電状態のマネジメントが結構面倒なので、一長一短といった感じです。

一方のSG-1000の方は、降圧型DC-DCコンバータを噛ませた上で、カメラ用の電源として使っています。このようにすることで、バッテリー切れの心配をすることなく、たっぷり撮影を行うことができます。

(5) 現地で使う小物類


プラスチック製収納ボックスの中には、ヘッドライトやUSBケーブル、LANケーブル、水準器、DC-DCコンバータ、ブロワー、PoleMaster、各種工具(六角レンチ、ドライバーセット)など、現地で使う可能性のある小物類が、100均で買った小物入れやポーチに整理されて収められています。ヘッドライトやファインダー用の予備の電池もこちら。ガイド鏡としてペンシルボーグを使う場合は、これもプチプチに包んでこの中に放り込んでいます。

なお、パッキングとは関係ありませんが、USBケーブルやLANケーブルは、暗いところでの視認性を考えて白い色のものを使っています。以前、黒いケーブルを使っていたところ、足を引っ掛けそうになったことからの教訓です。


工具については、現地でどんなトラブルが起こるか分からないので、主要なものを一通り。特に六角レンチについては、EdgeHD800関連でのトラブルも想定してインチ系列のものも揃えてあります。

(6) アイピースケース

ED103Sを買った時についてきたパーツケースを流用したものです。


中にはスポンジを敷き、アイピースや天頂プリズム、ムーングラスなどを納めています。今回の機材の中には含めていませんが、撮影とは別に観望用の望遠鏡を持っていく場合の必需品です。

(7) パソコン

赤道儀およびカメラ制御用のパソコンです。現在はLet'snote NX2(CF-NX2LEABR)を使っています。CPUはCore i5-3320M。メモリは8GBに増量し、ストレージは640GB HDDからPlextorSSD、M5 Pro(256GB)に換装してあります。OSはWindows10にアップグレード済み。

元々が省電力の上にバッテリーも大容量のものが用意されているので、一晩中撮影を行っていても電力の不安はありません。PCの電源については、赤道儀駆動用のバッテリーと兼用する場合も多いようですが、自前のバッテリーで賄えた方がシステムに無駄がなくトラブルの可能性も減ると思います。その意味でモバイルPCはお勧めだったりします。

(8) 金物類

アルミケースには、各種延長リングやアリガタ、ガイド鏡固定用の器具などが収められています。オフアキシスガイダーを用いる場合は、ガイド鏡関連のパーツを出して代わりに収めます。ただ、運搬する際に中身の入れ替えを行うと忘れ物の可能性が激増するので、前記のオフアキを使う場合以外は、その日のセッティングに明らかに不要なものがあったとしても、なるべく中身の入れ替えはしないように心掛けています。

(9) カメラバッグ

文字通り、撮影用カメラや予備バッテリー、ガイドカメラが収められています。撮影用カメラの電源は上記のようにSG-1000を用いて外部電源化しているのですが、トラブルが起こる可能性も否定できないので、予備の純正バッテリーは必ず用意しています。

(10) 椅子

数時間にも及ぶ撮影中、まさかずっと立っているわけにもいかないので、椅子は必須の装備です。とはいえ、大きくて重いのも、小さすぎて座りにくいのも嫌……ということで、現在使っているのが、軽さ・コンパクトさと座り心地を両立させたことで一躍名を馳せた「Helinoxチェア」です。私が使っているのは「Helinoxチェア エリート」(販売終了品)というモデル*1

上の写真は収納状態ですが、これで幅35cm、太さ10cmほど。重量も900g台です。


収納袋の中にはポールと座面シートが入っています。ポールはちょうどテントのポールと同じような感じで、中にゴムひもが通してあります。


これをカチャカチャと組み立てて……


座面シートを張ると立派な大きさの椅子になります。公式スペックとしては幅52cm×奥行き50cm×高さ66cm、座面高34cm、耐荷重145kgということで、成人男性が座っても窮屈さを感じるようなことは全くありません。

1万円越えと、椅子としては高価ですが、それだけの魅力は持っていると思います。


なお、座面にメッシュ地が使われていることもあり、冬場は寒さを感じることがありますが、ダウン中綿入りのシートカバーも売られているので、こうしたものを併用してもいいかもしれません*2

(11) テーブル

こちらはロゴスの格安折り畳みテーブル。実質、PCを置くだけなので、この程度で十分です。

(12) 鏡筒フード

自作のED103S用フードです。遮光効果は高いのですが、風を受けやすくなってしまうので微風の日専用です。EdgeHD800を撮影鏡筒として使う場合は、米Astrozap社のアルミニウム製専用フードを持っていきます。

(13) アクセサリートレイ

SXG-HAL130三脚に取り付けるトレイです。単純に物置として便利であるのみならず、三脚の脚がしっかり固定されるので、ねじれなどに強くなります。直焦点撮影をするならぜひ使っておきたいパーツです。

ビクセンのオンラインショップで取り扱いがあります

(14) 遮光布と雑巾

街なかで望遠鏡を使って星を見ようとした場合、周囲が明るいために見づらいことがあります。目が暗闇になれるのが妨げられるのも困りもの。


そこで活躍するのが、光を遮る遮光布です。これを頭からすっぽりかぶってしまえば周囲からの光はほぼシャットアウトされるので、非常に見やすくなります。私が使っているのは暗幕用の素材などとして販売されている「ハイミロン」という起毛生地です。1mあたり千数百円で買えるので、コストパフォーマンスも抜群です。


一方、雑巾は夜露が下りたときにこれをふき取るためのもの。都心でも、周囲の環境によっては軽く夜露が下りることがあるので、用意しておいて損はありません。

(15) 双眼鏡

撮影の間、夜空を眺めるのに使う双眼鏡です。

撮影中は基本的にヒマなので、双眼鏡や観望用の望遠鏡を別途用意しておくとなかなか楽しめます。三脚取付用のアダプターがあるとなお良です*3

ちなみに現在使っているのは、ニコンの10x42 HG L DCF。10年前にかなり奮発して買ったのですが、そのあと、次々といい双眼鏡がより低価格で出てきているのでちょっと微妙な気分になってたりします(^^;

(16) 観望機材用三脚

上記の双眼鏡や、観望用の望遠鏡を載せるための三脚。マンフロットの「190プロアルミニウム三脚 3段」(MT190XPRO3)に、ミザールテックのK型経緯台を載せて使っています。

(17) コンパクトデジカメ

撮影の様子を記録したりするのに使うためのカメラ。持っているとなにかと便利です。現在使っているのはキヤノンPowerShot S120。



と、おおよそこんなところでしょうか。このほか「公園にいる子供に見せる用」&「職務質問避け(笑)」に、過去に撮影した天体写真を収めた8型のアンドロイドタブレットASUS MeMO Pad 8(ME581C))も持参していることが多いです。

そしてこれらを、ウツヰの集配ボックスを取り付けた、ゲル注入タイヤ仕様の手押し台車(CSPLA300DX-HP-AFG)に積み込んで、公園までの1.5kmほどの道のりを運搬しています。台車などの自重*4を含め総重量は100kg近いと思いますが、台車自体のモノがいいからか、非力な自分でも運搬はまったく苦になりません。

案ずるより産むがやすし。やってみれば結構なんとかなるものですヾ(@゚▽゚@)ノ

*1:現行製品のチェアワンとほぼ同じで、違いは座面のメッシュの位置だけです。

*2:この記事を書いていて、販売されているのに気がつきました。今シーズンはこれを買おう……。

*3:(5)の収納ボックスに入れてあります。

*4:台車が21kg、集配ボックスが7kg