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本年初撮り

この連休は新月期の上に、冬型の気圧配置で絶好の撮影日和。というわけで、土曜の夜にいつもの公園に出撃しました。


冬型なら透明度もよかろうと踏んで、大型の散光星雲を狙ってミニボーグ60ED+レデューサー0.85×DGを用意したのですが……日が沈んでも空は何となく薄明るく、条件は意外とよくない感じ。冬型の割に風が穏やかだったこと、最近雨が降っていないことなどから、大気中のチリが案外多くて光害の影響がキツめに出たんじゃないかと思います。

実際、F5, ISO800で2分も露出すると青チャンネルが飽和してしまう状態。最微等級も3.0等を切っているのじゃないかと思われるほどで、先日M42を撮影した時と比べてもかなりの悪条件です。こういう時は欲張らず、1つの被写体を短めの露出時間で多数枚撮影し、画像処理で何とかするしかありません。


そこで、狙いを「カリフォルニア星雲」ことNGC1499に絞ることにしました。

この星雲はペルセウス座の足元に位置する散光星雲で、近くにある4等星、ペルセウス座ξ星の放射により星間の水素ガスが励起され輝いているものです。このペルセウス座ξ星というのが実はものすごい星で、質量は太陽の30倍、表面温度は太陽の6倍にあたる35000度、明るさは可視光の範囲で太陽の12700倍、紫外線まで含めると太陽の263000倍……という青色巨星です。しかも、生まれた散開星団からはじき出されて現在も高速で宇宙空間を移動中とのことなので、いずれはこの星雲も見えなくなってしまうものと思われます。


淡く広がっているので、この条件下では易しい対象ではないですが、昔から撮ってみたかった対象でもあり、チャレンジあるのみです。




とはいえ、案の定、撮影は困難を極めました。上は撮影した1コマをキヤノンの純正ソフトで現像したものですが、以前、はくちょう座の網状星雲を撮影した時と同様、対象が全く見えないので構図を決めるのが大変なのです*1。ステラナビゲータに表示される画角と星の配置、星雲の外形を頼りにおおよその方向を決め、あとは写っていることを信じて撮り続けるしかありません。



2016年1月10日 ミニボーグ60ED+レデューサー0.85×DG(D60mm, f298mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用, ISO800, 露出90秒×64コマ
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1dで画像処理

というわけで、できたのがこれ。最低限、見られる程度にはなったでしょうか。

大変だったのは背景のカブリ処理で、光害がひどいのと、かなりの強調処理を行ったために「ELフラット」だけでは補正しきれず、ステライメージで三色分解を行った上で、各プレーンに対してあれこれ細かい処理を行っています。それなりに色々と無理をしているので、できれば深夜に高度が上がる秋〜初冬に再チャレンジしたいところです。




ところでこの星雲、形がアメリカ・カリフォルニア州に似ているために「カリフォルニア星雲」の愛称がついているのですが、形になじみがないこともあってか、日本人的にはどうにも「島根県」に見えて仕方ないんですが私だけでしょうか?(^^;

*1:それでも、近くのペルセウス座ξ星がある程度目印になるので、網状星雲よりはまだマシかもしれません。