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55FL再戦

9月頭に「BORG55FL+レデューサー7880セット」を初めて使いましたが、わずかながらピントの甘さが残っていました。

その後、必要なピント精度を求め、バーティノフマスクを用意して再戦の機会を待っていたのですが、ようやく昨夜、待ちに待った秋晴れの日がやってきました。


そこで、月の沈む夜半頃を狙っていつもの近所の公園へ。夜半から明け方にかけて撮れる、55FL向きの広がりのある天体ということで、今回はぎょしゃ座の散光星雲IC405&IC410を狙ってみることにしました。


IC405はちょうど「コンマ」のような形をした散光星雲で、日本では「勾玉星雲」の愛称で知られています。この星雲を輝かせている「ぎょしゃ座AE」という星は「runaway star」の異名を持ち、オリオン大星雲(M42)で生まれて飛び出してきた星です。現在も高速で宇宙空間を移動中で、その途中でたまたま行きあたったガスが輝いているのがIC405です。将来、「ぎょしゃ座AE」がこのガスから離れてしまえば、輝きを失って暗黒星雲に戻ってしまう運命にあります。

IC410の方は「おたまじゃくし星雲(Tadpoles nebula)」や「どくろ星雲」の愛称で知られる星雲で、Melotte 31という星団を挟んでIC405の反対側にあります。

このほかにも、このあたりは大小の散光星雲、散開星団が入り混じっていて、大変賑やかな領域です。これらを収めた構図は、ある意味定番ともいえるもので、55FLの被写体としてはうってつけでしょう。




というわけで、月が沈んで少し経った1時ごろから撮影を始めたのですが……撮れたコマを見ると、予想以上に何も写っていません。都心とはいえ、有名な天体であればたいていは散光星雲の最も濃い部分くらいは見えるものですが、文字通り、影も形も見えません。先日の「ハート星雲&胎児星雲」ですらもう少しマシでした。ここまで何も見えないのは初めてかも……orz

果たして処理しきれるものかどうか、かなり不安になりますが、今さらやめるという選択肢はありません。何とかなると信じて撮影を続行します。明るい筒なので、1コマあたり10分ほどで済むのは助かるところです(というか、昨夜の空のコンディションでこれ以上延ばすと飽和する)。


天文薄明開始の20〜30分前くらいから薄雲が空を覆い始めたので、ここで撤収。帰宅して睡眠後、ゴリゴリ処理して出てきた結果がこちら。



2017年10月1日 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出600秒×16コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

……どうにか見られる程度にはなったでしょうか。

「ハート星雲&胎児星雲」の時に引き続き、なかなか無茶な画像処理を強いられましたが、それでも破綻しきらないあたりは、この光学系の素性の良さゆえでしょうか。なお、今回は星の周りに目障りなハロが出ることもなく、ピント合わせの重要性を再認識させられました。

このあたりにはごく淡いガスが全面に蜘蛛の巣のように広がっているのですが、さすがにそこまでは出し切れませんでした。それでもIC405, 410周辺に広がる淡いガスは存在が分かります。東京都心でここまで撮れればまずは御の字でしょうか。