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EdgeHD 800セカンドライト


金曜の夜、久しぶりに晴れたのでEdgeHD 800を持ち出してみました*1先日の強化以来、初の実戦投入になります。強化部分を中心に、感想をつらつらと書いてみたいと思います。

CoolEdge

副鏡を含め、鏡筒全体をすばやく温度順応をさせることができるという、StarizonaのCoolEdge。使い方は簡単で、しかも筒内気流がほとんど感じられなかったところを見ると、効果は確かにあるようです。

ただし、難点は騒音の大きさ。使われているファンはSUNONのPMD1204PBB1-A(2).GNというDC12V対応の4cm角ファンなのですが、これが回転数14500rpm、ノイズレベル55dBという爆音ファン。しかも鏡筒で音が反響するのでかなりの騒音です。周囲に他の観測者がいたり、深夜の住宅街などではちょっと使うのがためらわれるレベルです。必要な風量と静圧を確保するには仕方ないのだろうと思いますが…。

まぁ、使う時間はせいぜい観測前の十数分なので、勘弁してもらうとしましょう。

TEMPest

EdgeHDのチューブベント部分に取り付ける小型ファン。観測・撮影中を含め、終始動作させっぱなしにしていましたが、振動などは全く感じられず、音も比較的静かで快適でした。ファンの大きさが極小なので、空気の流量は微々たるものですが、それでも流れていないよりははるかにまし*2。実際、気温が刻々と下がっていく中、像が安定していたので、これも効果は確かにあるようです。

ちなみに、前回ピギーバックを利用してマウントしていたバッテリーは、アリガタレールにあったカメラネジ穴にエツミの「止ネジ(オス・オス)」および「スマートフォンアダプター」を取り付け、固定する形に変更しました*3。これで、重心が鏡筒後方に偏るのを緩和することができます。

Bob's Knobs

光軸調整用の手回しネジ。工具なしで光軸調整ができるというのは、やはり便利です。接眼部を覗きながら手探りでネジを回すことができるので、光軸調整の難易度が大幅に下がります。これがデフォルトのネジだとプラスドライバーが必要になるので、鏡筒の前と後を行ったり来たりしながら、調整と確認を繰り返すはめになります。

Feather Touch Micro Focuser

ピント微動装置ですが、これが実に快適。特に微動ノブは回転が滑らかで、指先で軽く回ります。余分な力がかからないので、ピントを合わせる際に鏡筒に振動が伝わらず、微妙なピント合わせが非常にやりやすいです。送料等別で$239とやや値は張りますが、高倍率での惑星観測や写真撮影をやるなら、ほぼ必須の装備といっていいかと思います。

システム全体について

部分的な強化については以上の通りですが、出来上がったシステム全体についての感想を。

まず、鏡筒についてですが、TEMPest駆動用のバッテリーとFether Touch Micro Focuserのために重量が増しています。きちんと重量を測ったわけではないですが、おそらく500g程度は増えているのではないかと思います。これに自作フードとカメラ、マルチプレート、ガイド鏡(φ60mm, f540mm)を同架した状態で、3.7kgウェイト+1.9kgウェイトでバランスが取れました。

鏡筒側の重量はおそらくトータルで10kg前後で、公称16kgという搭載可能重量からすればまだ余裕がありますが、重量の大きさに加えて、鏡筒の体積が大きいので風や振動の影響を受けやすく、ED103Sを用いた場合と比較してガイドは暴れがちです。焦点距離もED103Sの2.5倍あってガイドエラーの影響が大きいので、写真撮影の場合は気象条件を含め、慎重な運用が必要です。

コマ収差等は目立たず、視野の隅までフラットな像です。ただ、焦点距離が長くてシンチレーションの影響を受けやすいこと、副鏡による遮蔽の影響などもあってか、ピントの山はややつかみにくい印象。バーティノフマスクがあった方がピント合わせにはよさそうです。

*1:ファーストライトからはや1か月。週末の天気悪すぎです

*2:ちなみに、TEMPestに使われているSUNONのGM0517PDV3-8は回転数11000rpm、風量0.5CFM、騒音レベル15dBAというのがカタログ値です。

*3:上の写真で緑色に光っているのがバッテリーのパイロットランプ