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金星とプレアデス星団の接近


おうし座の散開星団プレアデス星団(M45, すばる)は黄道に近い位置にあるため、しばしば惑星と大きく接近します。そして4月3日は、まさにプレアデス星団と金星とが大接近する日でした。


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プレアデス星団と金星の接近はおおよそ8年おきに発生しますが、比較的珍しい現象には違いないので、日没くらいに機材を自宅前に展開し、「記念写真」を狙いました。


プレアデス星団の明るさは、構成する星の中で最も明るいアルキオーネが2.85等。一方、現在の金星は東方最大離角を過ぎて最大光輝に向かっているところで、明るさは-4.4等。実に767倍もの差があります*1。これほど差があっては、プレアデス星団の微細な表現など金星の光に邪魔されてとても無理ですし、そもそも金星をある程度点状に写すためには露出をかなり控えなければなりません。


だとすれば、赤道儀はごく簡素なものでいいはずで、赤道儀化AZ-GTiや年初に譲ってもらったスカイパトロール(旧型)で十分間に合うはずなのですが、いずれも試運転程度の運転しかしておらず、いきなり実戦投入は怖い……というわけで、SXPを引っ張り出してきました。


撮影を始めてみると、金星の明るさが想像以上に凄まじすぎて、プレアデス星団の星が本当に写っているのかどうかの確認さえ困難です。おまけに、薄雲が頻繁に横切ります。


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ISO100, 60秒露出の撮って出しはこんな感じ。金星の光が圧倒的すぎて、プレアデス星団がまるで目立ちません。


ここでちょっと面白いのは、金星のハロが左上~右下方向を長軸とする楕円形に見えている点です。初めは、金星が半月型に欠けているせいかと思ったのですが、欠け際の方向はむしろ短軸方向に近く、つじつまが合いません。


この写真は赤道座標に沿って撮影しています*2が、地上座標に戻すと長軸はまさに垂直方向に相当します。つまり、地上から見た場合、縦長のハロというわけです。


これはもしかすると「楕円ハロ」と呼ばれる光学現象に近いものかもしれません。薄雲の中の氷晶がいたずらをしたとすれば、一応の説明はつきますね。
rainbowmustache.jimdofree.com
www.atoptics.co.uk
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ともあれ、60秒露出のコマだけでなく、気休めですが30秒露出のコマも確保して撮影終了です。


撮影したコマは露出秒数ごとに加算平均でコンポジットしたのち、それぞれを加算コンポジットして、HDR的な処理を目指します*3。そして出てきた結果がこちら。


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2020年4月3日 ミニボーグ60ED+マルチフラットナー1.08×DG(D60mm, f378mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出60秒×16コマ+30秒×16コマ
ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

とりあえず、プレアデス星団の存在は分かるので良しとしましょう。記念写真としては十分でしょう。



ちなみにですが、上で書いたようにプレアデス星団と金星の接近はおよそ8年ごとに起こります。この先の接近を確認してみると、2060年4月4日の夕方がなかなかすごいです。


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なんと、直径7度の視野内にプレアデス星団と月齢3.3の月、金星、木星土星がすべて入ってしまうのです。双眼鏡で観望するのにちょうどいい集まり具合で、かなりゴージャスな眺めになりそうです。40年後か……ギリギリ生きてるかな?

*1:2.5^(2.85+4.4)

*2:上が天の北極

*3:本来なら2倍どころではなく4倍くらいの露出の差をつけた方が効果的なのでしょうが、そこはまぁ、あまり本気じゃなかったということで。