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昼間の金星ふたたび

2月17日の最大光度を過ぎ、見かけ上ますます太陽に近づきつつある金星。日没時の高度も20度あまりとなってだいぶ見づらくなってきましたが、昼間なら全く問題なし。というわけで、最大光度のときに引き続き、白昼の撮影を行ってみました。

昼間の撮影だと極軸を正確に合わせることができませんので、架台をおおよそ北に向けて設置したのち、Astro Solar Safty Filmをかぶせた望遠鏡を太陽へ。そして太陽でアライメントを行った後、金星を導入すると難なく視野に捉えることができます。

とはいえ、なにしろ太陽に至近の位置。安全には十二分に注意してください。自動導入でいきなり金星を狙おうとすると、一発で視野内に金星が入ればいいですが、入らなかった場合に金星を求めて望遠鏡を振り、太陽を視野内に入れてしまう危険性があります。上記のような手順を踏んだ方が安全です。
また、ファインダーは外すなり、キャップをかぶせておくなりしておきましょう。外したアイピースなども、日向に変な向きで置くと収斂火災の原因にならないとも限りません。日中に望遠鏡を使う場合は、ひとつひとつの動作をしっかり確実に行い、過剰なくらいに安全に気を配ってください。



望遠鏡の視野内には、鋭く輝く三日月状の金星が。もう少し見づらいかとも思いましたが、案外あっさりと視認できました。考えてみれば、日を受けて輝いている部分の「形」が細くなるだけで「明るさ」自体はあまり変わらないので、当たり前と言えば当たり前なんですよね。



2017年3月11日13時25分2秒(日本時間)
ビクセン ED103S+NLV10mm(D103mm, f3180mm) SXP赤道儀
ZWO ASI120MC, 10ms, 900フレームをスタック

日中の日向だけにシーイングは相変わらずひどいですが、先月撮影した時より明らかに細く、またぐっと大きくなっているのが分かります。



分かりやすいように同スケールで大きさを比較したのがこちら。左端が東方最大離角直後、中央が最大光度のとき、そして右端が今日のものです。内合に向かうときというのは、内側の軌道を回る金星が地球を追い抜こうとするときですから、内合が近づくにつれて地球との距離はどんどん詰まってくる……つまり、より大きく見えるわけです。地球との距離は、左からそれぞれ約8976万km、約6197万km、約4488万kmといったところ。今日は東方最大離角のときより倍近づいているというわけです。

なお、今日の時点ですでに、火星が地球に最接近した場合の距離(約5600万km)を下回っています。案外知られていませんが、地球にもっとも接近する惑星は、実は金星なのです*1

*1:だからこそ、その昔は金星の太陽面通過を利用して三角測量の要領で距離を測ろうとしたのです。距離が近ければ、視差が大きくなって誤差が小さくなることが期待されるので。